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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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粗末な独房のような部屋に、女が一人で座っている。虚ろな視線が、まっすぐに紫暮を射抜く。
無駄だ。ここしかないのだ、おまえの帰る場所は。紫暮は自分でも驚くほど冷徹な思いで、女を冷ややかに見つめている。

おまえはここから出られない。
どこにも帰れる場所などない。
絶望の中死んでいくがいい。
わずかな希望をもつことも許さない。

そんな思いがふつふつと沸いてくるのを止められない。

女がすうっと立ち上がる。幽鬼がごとくゆらめきながら。
その両手が音もなくこちらに伸ばされる。手をまえに伸ばしたまま。女は一歩前に出る。二歩、三歩。額縁いっぱいに迫る女。その項垂れた女の髪の隙間から覗く、虚無の瞳は紫暮を射る。

額縁に手をかけ、女が身を乗り出す。キャンバスを突き抜けて


絵から女が這い出てくる──










「!!」

静寂を切り裂く悲鳴が轟く。紫暮は覚醒する。心臓がとまるかと思った。自分の悲鳴ではない。隣の部屋からだ。布団を這いで飛び起きる。弟の部屋をノックしてから扉を開けた。

「瑞!」

ベッドに半身を起こした瑞が、暗がりの中で荒い呼吸を繰り返している。紫暮は天井からぶら下がる紐を引っ張って電気をつけた。