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二人の中の三すくみ

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 と考えているのも事実だった。
 確かに、セクハラというのは問題であるし、犯罪においても、女性が迫害されてくるという歴史があったのも事実なのだが、それはあくまでも、それらの犯罪が起きないようにすればいいだけのことであって、過剰に反応しすぎなのだ。
 例えば、会社で、
「彼氏できた?」
 と、今までなら、社交辞令くらいの感覚で話をしていたものが、
「それ、セクハラです」
 と言われるのだ。
 上司が部下に歩み寄った結果が、セクハラなどと言われるのであれば、その部署のコミュニケーションや、調和をどのようにして保てばいいのか、実に困ったものである。
 さらに、犯罪なども、女性が、
「この人、痴漢です」
 などと言った場合には、まわりはすべて、男を白い目で見て、男の言葉を誰も信用しないだろう。
 そのために、冤罪事件もかなり増えてきているであろうし、下手をすると、痴漢被害を装って、金を脅し取ろうとする、
「美人局」
 のような手段に訴えてくる人だっているの違いない。
 そんなことを考えると、男女平等を通り越して、男が迫害されていることになってしまうだろう。
 法律を遵守するというのも、モラルをただすというのも間違ってはいないが、いきなり改革を早めてしまうと、それまでの、モラルや倫理が覆され、今度はターゲットが男に変わるというだけで、世の中が平和になるわけでもなんでもない。
 結果、本末転倒なことになり、
「揺れている振り子は、そのまま永遠に揺れ動き続ける世の中でしかない」
 ということになってしまうだろう。
 ちょうどいいところで手を打とうとすると、行き過ぎてしまうということが、世の中には往々にしてあるというものだ。
 それを考えると、
「何がコンプライアンスなのか、そして、ハラスメントなのか、本当はじっくり考えないといけない時期があったはずなのを、見過ごしてきたのではないか?」
 と感じるのであった。
「これが世の中のパワーバランスだ」
 というのであれば、せめて、ある程度の時期に検証をしてみるくらいのことがなければ、やりっぱなしということになり、本末転倒甚だしい世界になってしまうのではないかと思うのは、無理なことなのだろうか?
「ブラック企業」
 などという言葉も言われるようになり、コンプライアンスが厳しくなり、セクハラ、パワハラを厳しく取り締まるところもあるかと思えば、旧態依然として、セクハラ、パワハラが渦巻いている会社もあるのだ。
 実際に裁判になったりもして、弁護士事務所も、
「コンプライアンス違反に、敢然と立ち向かう」
 という形で、宣伝しているところもある。
 とにかく、時代は両極端であることは間違いない。
 ハラスメントを取り締まり、男女差別をなくすという意味で厳しくしすぎての冤罪や、逆に男性の肩身の狭さであったり、バラック企業と呼ばれるものが、今でも幅を利かせていたりする時代、正直、
「何が間違いで、何が正しいのかということが、分からなくなっているのではないだろうかあ?」
 要するに、
「コンプライアンス違反だ」
 と言って騒ぐ人間は、ウワサや状況だけを見て騒いでいるだけで、どこまで、本人たちのことを分かっているのかということなのだろうか?
 それが、今の時代における、SNSというものによる、
「誹謗中傷」
 であったり、SNSを利用しての、
「フェイクであったり、根拠のないウワサをいかに、もっともらしく言うか?」
 ということが、大きな問題になっているのである。
 不知火の会社は、そこまでひどいことはなかった。
「うちの会社は、小規模な会社だからな」
 という人がいたが、ハラスメントなどは、正直、人数には関係ないのではないか? と思うようになっていた。
 却って、人数が少ない方が、まわりの目が少ないだけに、我慢している方は、味方がいないと思い込み、言いなりになるしかないと思うことだろう。
「ハラスメントをしている方も、上司は自分しかいないわけで、しかも、人数が少ないだけに分かりやすい構図になっているにも関わらず、知らないはずはないのに、それでも何も言わないのだから、もう、まわりはあてにならない」
 としか、言いようがないだろう。
 ただ、不知火の事務所では、そんなセクハラ、パワハラの臭いがしているわけではない。この街の営業所の従業員は、十名たらずであった。
 所長がいて、その下に、営業部、庶務、経理とそれぞれあるが、庶務と経理関係を、3人で回しているのが現状で、それ以外は皆営業社員。営業課長に、5人の営業員がいる。
 営業員5人のうち、2人が女性だということだった。
 彼女たちは、セクハラ、パワハラとはまるで無縁とその態度が言っているかのようで、営業をしているだけに、考え方もしっかりしていて。
「男性社員よりも、男前だ」
 と言われるほどであった。
「竹を割ったような性格だ」
 というのは、彼女たちのことをいうのだろうと、皆思っている方で、特にハラスメントに関しては、かなり神経質いなっているようだ。
 課長が自分たちの仕事より遅かったりすると、
「課長、しっかりしてください」
 と逆に部下がはっぱをかけるくらいだ。
 それだけのことを言えるのは、自分たちがしっかりしていることが大前提である。
「竹を割ったような」
 と言われるのは、まさにそういうことからなのではないだろうか?
 そういう意味では、彼女たちには、
「ハラスメントなどと言う言葉は、私たちには関係ない」
 と言わんばかりに、自分の仕事、あるいは、仕事に対する姿勢に、自信を持っていて、誇りを持っていることだろう。
「自分に、自信も誇りも持てないから、セクハラやパワハラって言われるんだ」
 と上司に言いながら、自分にも言い聞かせているに違いない。
 それこそ、
「自分は自分。他人は他人」
 と思うことが大切であり、
「変に距離を縮めないと仕事ができないなどと勘違いしている上司がいるから、ハラスメントなどという問題が出てくるのだ」
 ということなのだろう。
 コンビニで買いこんでかあら、駅に向かおうと、いつもと違う道を歩いていた。
 こちらの道の方が、実は会社から駅に向かう一本道よりも少し寂しいところを通ることになる。本来であれば、メイン道路の歩道を歩けばいいのだろうが、途中の近道として、完全な田んぼのあぜ道のようなところを歩いた。
 その道は舗装もされていない道で、普通なら、ちょっと怖いと思う道なのだが、その日は、気分転換をと考えて、わざとm寂しい道を通ることにした。
 昼間には、今までに2度くらい通ったことがある。昼と言っても、夕方近くで、調整休のために、3時上がりだったので、まだ、1時間に1本の時間だった。少し時間があったので、コンビニやスーパーに寄って時間を潰し、駅までの道のりを気分転換を兼ねて、ゆっくり歩いたのだ。
 ほとんどが田んぼなのだが、途中に、浄水場のようなところもあり、クリークのようなところと平行で歩いていると、途中にちょっとした民家があるだけで、あとは、何もないといってもいいだろう。
作品名:二人の中の三すくみ 作家名:森本晃次