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二人の中の三すくみ

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「実は、殺された松下さんと、三枝、白石の3人は、それぞれに弱みと強みをたすきに欠けたような感じで、そうですね、三すくみの関係にあるというのか、それぞれが抑止されていて、力の均衡を保っていたことで、何とかなっていたような関係だったんです。だから、逆にその一角が崩れれば、何かことが起こるというのは、分かっていたことだったんですよ」
 と、なるみは続けた。
「なるほど、でも、三すくみということに関しては、僕も最近、その三すくみというのを、よく考えるようになったんだけど、ただの偶然だったんだろうか?」
 と、不知火がいうと、
「いいえ、そんなことはないわ。私もなるべくあなたが三すくみを意識するような話し方をしてきたつもりだし、ひょっとすると、白石さんからも、そういう話をされていたかも知れない。私もあなたが、三すくみに関して、もっと自分が意識する意味を分かっていると思っていたんだけど、そこまで、漠然とした感覚だったということにはビックリしているのよね」
 となるみは言った。
「じゃあ、なるみは、今回の事件をどのように考えているんだい?」
 と不知火が聞くと、
「今回の事件は、どちらが主犯だったのかは分からないけど、白石さんか、三枝さんの共犯ではないかと思っています。松下さんは、白石さんの借金を肩代わりしていたんだkど、白石さんは、その返済に困っていた。そしてそれよりも、借金のことがあることで、白石さんは、松下さんに頭が上がらなくなっていた。お金は時間があれば、そのうちに返せるんだけど、次第に白石さんはお金を返せたとしても、自分が自由になれるかどうか、確証がなくなっていったのかも知れない。そして、今度は三枝さんなんですが、三枝さんも、松下さんに弱みを握られていた。それは、以前三枝さんが、営業であなたの会社の近くにあるところに出かけた時、会社の近くにある魔の交差点と呼ばれるところで、大きな事故があったんだけど、その時に、ちょうど居合わせたらしいの。歩いていて、急に道に飛び出したことで、大きな事故が発生した。加害者はその時、三枝さんのいたことに気づいていなかったんだけど、ちょうど、車で後ろから通りかかったのが、松下さんらしくて、事故の聴取を受けた時、三枝さんのことが話題に上がっていなかったのでおかしいと思って、三枝さんに近づくと、彼がまっすぐな性格だということを知って、脅迫しだしたそうなんですよね。その脅迫の片棒を、お金を貸しているということで、白石さんにも担がせようとしたんだけど、さすがに白石さんも良心の呵責と、さらに、松下さんへの不信感から、三枝さんの肩を持つようになった。そこで、きっと、共謀して、松下さんを殺す計画を練ったんじゃないかと思うの」
 と、なるみは言った。
「なるほど、だから、他で殺しておいて、あの納屋に運んだということか。なるべく、事故が起こったあの場所の近くに死体を放置することにしたのは、殺したことへの供養なのか、どうなのかということなのかな?」
 と不知火がいうと、
「そのあたりの心境は二人でないとわからないと思うわ」
 と、なるみが言った。
「じゃあ、三枝という男が行方不明になっているというのは、殺人を犯したことで、雲隠れしているということなのかな? でも、今の時点で、彼はこの事件の表に出てきているわけではないので、別にまだ隠れなければいけないとは思えないんだけど、それは、彼の、曲がったことが嫌いな性格ゆえなんだろうか?」
 と聞くと、
「それもあるかも知れないけど、三枝さんがまだ生きているかどうかということの方が、私には心配な気がするんですよ」
 と、なるみは言った。
 なるみは、どうもいろいろなことを分かっているようではあるのだが、その言葉は、どちらとも取れるような言い方になっている。これは、なるみが、どうもわざとそのような表現をしているように思えてきた。
 なるみには、
「ある程度までのヒントを与えることはできるが、自分からは決定的なことを言ってはいけない」
 ということを考えているように思えてならないのだった。
 ただ、なるみがどうして、三枝が、
「魔の交差点」
 と呼ばれる場所で起こった交通事故にかかわりがあったということを、どこで誰から知らされたのかということが気になってしまったのだ。
 この三人が、三すくみの関係にあるということは、最初からなるみは隠そうとはしなかった。
 つまりは、なるみとしても、このことは、
「知られてもかまわない」
 ということなのか、それとも、
「最初からいうことで、必要以上なインパクトを与えたいと思ったのか」
 ということであるが、両極端な考えは、今のなるみの言い方にも共通した考えにも見えて、あながち間違っていないように思えてくるのだった。
 だが、なるみがここまで知っているのだとすると、この事件になるみも、何らかの関係にあるのではないかと思えた。
 自分から協力をしたのか、それとも、知らず知らずのうちに、計画に参加させられたのか、それとも脅迫によるものなのか?
 なるみのように、両極端な考え方をすり込もうとしているのを聞いていると、なるみの中で、
「自分の考えが錯綜しているのではないか?」
 とも思えてきた。
 だが、なるみから、まだ序盤の話を聞いただけなのに、まるで、事件の全貌がほとんど見えているかのように思えるのは錯覚であろうが、それこそ、なるみの話術なのかも知れない。
 なるみに対しては、以前から気になっている点があった。
 これは、なるみに限ったことではないのだろうが、
「時々ウソをつく」
 ということが分かることであった。
 他の人からウソをつかれても、なかなか気づけない不知火だったのだが、なるみの場合はウソをついた時、
「あっ、これってウソなんだ」
 と感じることがあった。
 それは、言葉の端々に、ウソをつく時の特徴があるのか、それとも、挙動の中の特徴なのか?
 それをいつも考えていたが、やっとわかったような気がする。
 それは、なるみがウソをつく時、
「花を触る」
 という特徴があるからだ。
 これは、心理学や精神医学などでも言われていることのようで、
「ピノキオ効果」
 と言われているらしい。
 要するに、鼻を触る時、ウソをついている時が多いという、人間の習性のようなものだということなのか、ウソをついた時、鼻の温度が上がると言われていることから、鼻を触ると言われているようだ。(ただ、温度に関しては逆の説もあるようだが)
 これは無意識なのか、ウソをつく時、それを他人事だと思いたいということで、鼻を触ったとしても、それは意識のうちではない。だからこそ、余計に、
「ピノキオ効果というものは、信憑性が高い」
 ともいえるのではないかと思う。
 特に、無意識の時に限って、いつも余計なことを考えている不知火にとって、ピノキオ効果という現象は、意識の中で考えられることのように思われるからだった。
「俺の考え方と、なるみの生理的な感覚は似ているということなのか?」
 と思ったが、
「自分が考え事をするために、逆に無意識になることが多くなる」
 と感じたことで、
「自分が、洗脳されやすい」
作品名:二人の中の三すくみ 作家名:森本晃次