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二人の中の三すくみ

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 というのは、そういう理屈から成り立っているのではないか?
 と考えるのであった。
 なるみのウソについては、ウソというべきか、彼女が何を話してはいけないことだと思っているか、それを、不知火は知っている気がしていた。そのことは以前、白石から聞いたことがあり、それが、松下が主犯となってやった、
「若き日のあやまち」
 という言葉で言っていたことだった。
 話を聞いて、
「何が過ちだ、そんなもの、ただの犯罪じゃないか?」
 と怒りに震えたが、こればかりは、自分が何を言おうとも、罪に問われることはない。
 下手をすると、一人の人間が傷ついて終わりというだけになってしまう。何しろ、親告罪だからだ。
「いや、そうじゃないんだ」
 親告罪というのは、被害者が訴訟を起こさないと成立しない法律のことである。
 松下がやったのは、2年くらい前に、何人かで松下の部屋で呑んだのだが、その時、男性3人、女性1人だったそうだ。松下が酔った勢いでその子のことを犯してしまった。最初こそ、彼女も戯れだと思っていたようで、じゃれ合いのようだった。なぜなら、女の子もまさか、本当に強姦してくるとは思ってもいなかったのだ。
 皆酔っていたし、女の子も、男の力にはかなわない。しかも、他の二人も彼女が最初嫌がっていなかったので、途中から嫌がったあとしても、それは演技だと思っていたのだ。都合よく考えてしまったのだろうが、それを、
「酒の席だから」
 と言って、見逃してしまったのは、ありえないことだったはずだ。
 松下だけは、最初から強姦目的だったが、他の2人は、
「ごっつあん」
 というくらいで、おこぼれくらいに思っていたことだろう。
 彼女とすれば、3人とも、本当に許せなかった。復讐を企んでも無理もないことだ。
 ただ、彼女は知らなかった。
「強姦罪自体は、親告罪であるが、輪姦ということになると、親告罪ではない」
 ということを、少しでも弁護士に相談していれば、簡単に諦めて泣き寝入りしなければいけないということはなかっただろう。
 そこで、彼女は、三枝に近づき、松下の殺害をほのめかす。
「白石さんと一緒にやればいいのよ。そうじゃなかったら、あなたたちを3人纏めて、訴えるわよ」
 と言われたのだ、
 そして、白石に対しては、あの時の強姦に加えて、
「あの時の主犯を、お前だということをなるみに言ってもいいのか?」
 ということを言った。
 さらに、
「なるみは、今、主犯はお前だって思っているようなんだ。俺は何も言えないから、そういうことになってしまってもいいのか?」
 という。
 白石はなんと、自分たちが強姦した相手である、なるみのことを好きになっていた。
 なるみは、あれから、しばらくは3人から距離を取っていたが、また近づいてきた。普通なら、
「おかしい」
 と思うのだろうが、白石はそうは思わず、
「許してくれたんだろうか? それに俺は主犯じゃないし」
 というのが、白石にとっての救いだった。
 しかも、なるみは白石にだけ、いろいろ相談したりしていたのだが、元々、復讐を考えて、再度近づいたのだ。一番精神的に弱い白石をターゲットにすることで、こちらの味方にできると思ったのだ。
 そして、三枝に対しては、自分から近づいたわけではなく、白石を使った。
 例の、
「魔の交差点事件」
 の話を持ち出せば、そのことが足かせになっている三枝だから、自分を縛っている松下を、いずれは、何とかしたいと思っていた。それを自分だけではなく、白石の方から誘いをかけてきたのだから、これは、やらないわけにはいかず、むしろ積極的に話に乗ってきた。
 計画は三枝が立てた。あの場所に遺棄しようと言ったのは、なるみだった。
 さすがに、三枝は躊躇したが、
「脅迫しようとしたやつを、あの場所に持っていくのだから、却って、俺を警察が交通事故をネタに犯人だと考えても、あの場所に放置することはしないだろうということで、捜査線上から消すことができるとも思ったのだった。
 殺意は、元々なるみからで、それぞれに徐々に伝染していった。
 三人が三すくみの関係で、さらに、事件が鉄を熱が伝わるように、伝導していくことで、犯行が厚みを帯び、当初の計画では、なるみが表に出てくることはないと思われた。
 だが、唯一の計画で狂いが生じたのが、
「死体の第一発見者が、不知火だった」
 ということだ。
 これによって、まず、白石が疑念を抱いた。
「不知火が死体を発見するように、君が導いたのか?」
 というのだ。
 それはそうだろう。あの場所に死体を遺棄すると言い出したのは、なるみだったからだ。なるみは確かに、いずれ、自分が隠れ蓑になって、白石と三枝が途中仲間割れを起こして、自分たちから警察に怪しまれるような墓穴を掘ることを期待はしていたが、まさか、こんなに早く、しかも、自分が怪しまれるとは思ってもいなかったので、計画が狂ってしまった。
 そこで、計画を変更し、すべてを不知火に明かしたうえで、いや、本当にすべてを明かすかどうかは、難しいところであるが、少なくとも計画のほとんどを明かすつもりで話をした。そして、同情を誘うことで、計画に引き込み、あとの二人を失脚させる計画を再度考えようと思っていたのだ。
 これが、今までのところの事件のあらましだった。
 そして、話を聞いた不知火は、さすがに事件に加担はできないと言った。それはそうだおう。不知火にとって、この事件に介入するメリットは何もないのだ。せめて、ただの第一発見者で終わるしかなかった。
 だが、そうもいっていられなくなった。なるみが、不知火に近づいたことで、あの二人のターゲットが、不知火になったのだ。
 それをなるみに聞かされて。二人を亡き者にするしかなかった。しかも、二人の死体を今度は、どこかに埋める必要があった。
 元々、行方不明とされていた三枝は、なるみが匿っていた。何しろ、なるみは、いまだこの事件の表には出てきていないことで、一番の隠し場所だったのだ。本当は途中からその隠し場所を不知火のところにするつもりだったが、不知火が事件に不本意だったが、第一発見者ということで首を突っ込んでくることになった。
 そのせいで、計画が狂ったのだ。
 三枝の始末は簡単だった。毒を盛るだけでよかった。それも、誰もが簡単に手に入る毒。それが、スズランの毒だった。
 白石も小名味方法で殺し、二人は、山奥に埋めに行った。
 レンタカーはなるみが借りた。そして二人を埋めた。
 これは完全に計画にはなかったことなので、これほどずさんな計画もないものだ。曲がりにも、なるみの復讐計画は完成した。なるみの中では、
「十字路」
 というものが頭に浮かんでいたのである。
 だが、なるみにとっての問題は、不知火の始末だった。
「このまま生かしておいていいものか?」
 と考えたが、今のところ、どうすることもできず生かすしかなかった。
 不知火はさすがに計画の全貌が分かったので、下手に逆らうと殺されると分かっている。とりあえず、なるみに従うしかなかった。そしてなるみも、不知火をけん制していた。それはまるで三すくみを二人で演じているかのようで奇妙な感じだったのだ。
作品名:二人の中の三すくみ 作家名:森本晃次