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二人の中の三すくみ

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 それは、誰にだってあることで、夢の最後を覚えていないというのは、自分が夢の最後に持っていく場面を、本当は思い出したくないという感覚から持っていくのか、それとも逆に、本当は思い出したいはずのことを思い出すと都合が悪いようなことで覆い隠そうとして、夢を覚えていないという、自分の中に、そんなオブラートを作ってしまうのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「夢というのは、寝ていて見る夢だけではなく、起きていても夢を見ているのかも知れない」
 と思うようになっていたのだ。
 そんないろいろな昔のことを思い出しながら歩いていて、
「こんなところに蔵があったんだ?」
 と思いながら、ふらりと中に入っていった。
「蔵が俺を呼んだ?」
 と言えば恰好がいいが、正直、その場所で怖いという思いもありながら、通り過ぎてしまうのが怖かったという、矛盾した気持ちがあった。
 いや、
「その場所に何かがある」
 と感じたというのは、あまりにも都合がいい解釈であろうか?
 そう思って中に入ってみると、意外にも、奥にある建物の電気はすべて消えていた。
「まさか、空き家なのか?」
 と思ったが、どうも、人がいる気配はない。蔵の近くに犬小屋があるが、犬がいる気配もない。それどころか、近づいて見てみると、その犬小屋は壊れているのだった。
 真っ暗なので、さっきまでは気づかなかったことも、目が慣れてきたのか、見えるようになってくると、蔵の方から、少し白いものが見えていた。その中途半端な光は、明かりがついているわけではなく、白っぽいものがあるのが見えたのだ。
 ゆっくり近づいてみると、蔵の扉が開いていた。その扉に近づいていくと、白いものが大きくなっていく気配がして、その白いものが蔵の中から見えているのが分かった。
 蔵の扉に手を掛けると、そのすぐ横にスイッチがあった。
「暗い蔵の中でスイッチを探すのが大変なので、すぐに手が届くところにスイッチを付けたんだろうな?」
 と思い、スイッチを入れてみると、その中は思ったより荒れ果てていた。
 ただ、その割には、次の瞬間、
「結構キレイなのか?」
 とも思ったのは、ものがそれだけ何もないからだった。
 そう思って見渡してみると、先ほどの白いものが、なにやら、白装束のような布であるのが分かると安心したのだが、その白い布の端に、真っ赤な色のものがついているのを発見し、ドキッとしてしまった。
 そうしているうちに、少し中に入ると、そこに、今度は黒い塊のようなものがあった。
「うぅー」
 と何かが唸っているのが聞こえた。
 明らかに人間が唸っていた。そこに横たわっているのは、確かに人間だった。
「大丈夫ですか?」
 といって近寄ると、うめき声が聞こえたのは、完全な勘違いで、人が死んでいるのだった。
 触ってみると、完全に冷たくなって、死後硬直の感じから、死んでから、かなりの時間が経っているのを感じた。
 そこにいるのは、最初、老人か誰かではないか? と思ったのだが、どうも、もっと若い人らしい。
 断末魔の表情で、生前の顔がどんな人だったのか分からないが、血が至る所に飛び散っているのを見ると、どこかを刺されたようだった。
「ああ、胸を刺されている」
 と思い胸を見ると、鮮血でドロドロになっている。
「いや、死後かなり経っているのだから、鮮血とはいえないか?」
 と感じたが、とにかく、母屋に誰かいないか、蔵を出て見てみるが、明かりは相変わらずついていない。
 しょうがないので、不知火は警察に連絡し、来てもらうことにした。考えてみれば、ここで母屋に誰かがいれば、母屋の人は、犯人を不知火だと思い、警察によからぬ話をするかも知れない。それよりも、第一発見者として話す方がいいのだろうが、
「なぜ、君はここで発見できたんだ?」
 と言われればどうしようか考えた。
 まさか、
「死体が自分を呼んだ」
 などというオカルトまがいなことを言って、信じてもらえるはずもない。
 しいて言えば、
「犯人自ら、警察に通報したりしない」
 というようなことはないというのが、唯一の救いではないかと思えたが、何よりもこの死体はどうしてここにあり、自分が発見することになったのか。
 因縁めいたものがなければいいと思った不知火だった。
 ほどなく警察がやってくると、案の定、死体の検分を、鑑識が行いながら、あたりを物色した跡に、不知火のところにやってきて、どうしてここにいて、死体を発見したのかを問いただした。
 しかし、彼には、言い訳でしかないことではあるが、正直にいうしかなく。話をすると、警察はさすがに怪しいとでもいうような表情をして、それ以上深くは踏み込まなかった。
 いや、踏み込めなかったといってもいい。そもそも、彼がここに何か関係がなかったことはハッキリとしていたのだ。
「何となく、血の臭いを感じた気がしたので、中に入ってみた」
 などというと、余計に怪しまれる。
 なるべく余計なことを言わないようにしないといけない。確かにここに来るときに、血の臭いを感じたような気がしたが、それは、他にも酸っぱい臭いを感じたことも手伝って、昔の記憶がよみがえってきたからだった。ただ、自分でも、その理由まではよく分かっていなかった。
「ところで君は、この家が空き家なのは知っていたのかい?」
 と言われて、
「いいえ、知りません。最初にこの蔵を気にした時、母屋の方で電気がついていないこと、そしてそこの犬小屋が荒れ果てていて、犬もいないことを見た時、この家の家主はいないんじゃないかって思ったのは確かです。でも、まさか、ずっと空き家だったとは思ってもみませんでした」
 というと、
「なるほど、確かにここは、少しメイン道路からも離れているので、この近所の人でなければ分からないだろうね。あなたの会社からは、ここまではそれなりに距離もあるので、分からなかったというのは、無理もないことだね」
 と刑事から言われた。
「私が気になったのは、白い布が真っ暗な中で光ったように見えたからなんですが、まさか人が死んでいるなんて思ってもみませんでした。あの人はこの家に関係のある人だったんでしょうか?」
 と不知火が聞くと、
「そんなことは捜査しないと分からない。ただ、誰かが彼を刺したのは、ここではないのかも知れないな」
 というではないか。
「どうしてですか?」
 と聞くと、
「ここで殺された割には、血の量が少ない気がするし、そこかから引きずられたかのような跡があることから、犯人がここに運び込んだ可能性がある。何しろ、この家は荒れ果てていて、たまに、誰かが見に来るくらいだったからね。そのことは、警察でも把握はしていたんだ」
 という。
「じゃあ、ここで死んでいる人が、いずれは発見されなければいけないが、すぐでは困るというような何かがあったということになるのかな?」
 と不知火がいうと、
「君は、ミステリーファンなのかい? 話を聞いていると、推理が好きなようだけど」
 と言われて、ビックリした不知火は、
作品名:二人の中の三すくみ 作家名:森本晃次