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マイナスの相乗効果

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 ちょっとたとえが飛躍しすぎているが、そういう意味で、行政機関などの役所関係の近くに、病院やオフィス街があるというのは、少し危険な気がするのは、きっと考えすぎだと言われるだろう。
 平和ボケをしている我々日本人はこういうことに関しては非常に疎い。もっとも、外国の首都などの都市計画がどうなっているのかは、ハッキリと知らないが、もし、攻撃されることを前提に考えているのだとすれば、そのあたりは、最初に考えることだろう。
 ただ、一度開戦してしまうと、無差別攻撃に発展しかねないということを考えると、都市のどこにいても、安全とは言い切れないだろう。とにかくどこかに逃げて、難民となるか、都市にとどまって、殺されるか、占領され、占領下での制限される生活を強いられることになるか、ということは分かっても、それがどういうことを意味するかということが分からない。
 つまり、選択できるかどうかというところがまずは最初に来ることであろう。
 あくまでも、仮想の妄想であり、建前上は、
「有事が存在しない国」
 というのがこの日本ということなのだから、確かに、考えすぎだと言われても、それは当たり前のことなのであろう。
 F市城西区というところは前述のように、海に面していて、海岸沿いには、いろいろな施設がある。高層マンションが乱立していて、図書館や博物館などの施設も結構あり、プロ野球の本拠地である野球場、隣接された高層ホテル、さらには、大学病院や放送局などがたくさんある。
 元々、ここは数十年前に、博覧会が催され、その跡地を今のような形の都市に作り替えた。住宅街や、公共施設に生まれ変わって、数十年。博覧会で開発する前を知っている人は少ないだろうが、
「このあたりは荒れ地だった」
 という話を聞くこともあったのだ。
 そんな城西区には、高層マンションが立ち並んでいた。
 元々、F市というところは、高層ビルを建てることができなかった。その理由としては、
「玄関口となく国際空港が、都心部の近くにあるから」
 ということなのであった。
 つまり、飛行機が着陸してくる時に、高層ビルがあると、邪魔になって着陸できない。もし強引に着陸しようとすると、
「グランドゼロ」
 の再来になりかねないということであった。
 あれは事件であったが、こちらで起こることは事故でしかないのだが、結果としては、ほとんどの人が死に至るということで、起こってしまったことに変わりはないということになるのだ。
 そもそも、問題は、
「着陸」
 の時である。
「離陸」
 の時には問題にならないのはなぜであろうか?
 これは、飛行機が、宙に浮くということと、その力学に関係しているのである。
 読者諸君は、飛行機が離陸する時、どの方向に離陸するのかということを考えたことがあるであろうか? 理由がなければ、
「昨日は北方向に離陸したから、今日は南方向でいいか」
 という程度になるのだろうが、実はここに大きな理由がある。だからこそ、その日どちらから離陸することになるかを決めるのは、天気予報に大きく関係してくるのである。
 というのは、まず、紙飛行機を作って遊んだ時という記憶が、子供時代にあったのではないだろうか?
 その時に、皆はどう考えたであろうか? その時の記憶がある人は、ピンとくるかも知れない。
 そう、問題は風なのである。
 こちらに風が吹いてくるという、いわゆる、
「アゲンスト」
 の状態と、逆の、後ろから風が吹いてくるという
「フォロー」
 の状態、これが大きく影響してくるのだ。
 というのも、何も航空機だけではなく、野球をやっている人で、投手とする人はピンと来るかも知れない。
「今日は、アゲンストだから、変化球がよくキレる」
 という発想があるというのを聞いたことがあるだろうか?
 つまり、風の抵抗があればあるほど、まっすぐに進むのが困難なのである。
 ということは、飛行機のように、滑走路を助走して、その勢いで上空に飛び出していこうとするのだから、当然、アゲンストの方がいいわけである。しかも、一気に上昇気流に乗るようにしないといけないので、滑走路を離れてから短い距離で、高度がかなり上がることになるだろう。
 では着陸の時はそうであろうか?
 着陸する時というのは、車輪が、滑走路に当たった時、なるべく衝撃を少なくする必要がある。上昇角度と同じ角度で降りてくると、間違いなく。先端が間違いなく車輪より策に滑走路に当たり、大事故になるだろう。そういう意味もあり、着陸の際には、できるだけ低空で、滑走路に平行に近い形で降りてくる必要があるのだ。あれだけベテランのパイロットが着陸をした際でも、若干のバウンドがあるのだから、それも当然のことである。
 ということはあ、滑走路まで、低空である距離が長ければ長いほどいい、逆に着陸には、それだけの低空の距離を必要とするということだ。
 着陸の進路の当たる都心部に、高層ビルが立ち並んでいるとどうなるだろう? 飛行機はその方向からは、着陸ができなくなってしまう。それは空港の運営停止につながることで、空港が都心部から離れているというところが多いという理由の一つであろう。
 ただし、空港ができたのが、昔の軍の飛行場の跡地であったり、米軍駐留の際の飛行場の跡地であったりすることから、先に空港ができてしまって、都心がその後発展していったという特殊な例として、F市のようなことが起こりえるのだ。
 そのため、県の条例では、
「〇階建て以上の高層ビルを建設してはいけない」
 というような規定があったりして、確かに、F市はある時期まで、高層ビルがなかった時期があったのだ。
 今では、その条例もかなり緩和されてきていて、しかも、高層ビルも都心部から離れたところに建てられるようになったので、大都市としては、他の大都市とのそん色はない形になってきたのだった。
 そんな城西区にある高層マンションの一つで、一件の殺人事件が起こった。最初に発見したのは、その部屋の隣人の奥さんで、朝になると、早朝の皆が起きてくる前の時間に、マンションの玄関前を掃除するのが、日課になっていたのだ。
 その人はあまり、近所づきあいが得意な人ではなく、ただ玄関先にゴミがあるのを気にする人だったので、だいぶ前から、早朝に自分の家の玄関前を掃除するのが日課になっていたのだった。
 その日も掃除をするのに、玄関を開けて、ほうきとちり取りを用意し、表に出た。その時間というのは、日の出が早い夏至近くであっても、まだ真っ暗な時間である、5時前後くらいの掃除をしていた。
 隣人が何時頃に起きてくるのかまでは知らなかったが、5時前後であれば、起きてくることはないと思っていたので、その時間に清掃するようになった。
 元々、両隣の人たちにはこの奥さんは不信感を持っていた。なぜなら、一時期のことであったが、自分たちが出すわけのないゴミが玄関先に捨てられていたことがあったからだ。
 そのゴミというのが、事もあろうに、タバコの吸い殻だったのだ。
 正直、怒りが一気にこみあげてきた。しかし。だからと言って、直接抗議に行くには証拠があるわけではない。しょうがないので、マンションの管理会社に苦情をいうと、
作品名:マイナスの相乗効果 作家名:森本晃次