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マイナスの相乗効果

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 考えてみれば、定期的にコンセプトを変えるコンセプトカフェというのをあまり聞いたことがなかった。それを思うと、ある意味画期的ではないだろうか?
 ナースであったり、学園系、さらには、幼稚園設定など、いかにもヲタクが喜びそうな店にするのは、店長としても、発想を考えるだけで楽しかった。
 企画やデザインはすべて店長が行った。後は業者にそれらしい内装にしてもらうだけだった。
 その業者にいろいろ指示を出すのも大和店長の役割で、
「これでこそ、店長として、店長冥利に尽きるというものだ」
 と感じていたのだった。
 今が一番の有頂天の時期、自分を店長にしてくれ、
「やり方は任せる」
 と言われたのも嬉しかった。
 人によっては、全面的に任されると不安しかなく、その期待に押し潰される人も多いのだろうが、大和店長はそんなことはなかった。
「やっぱり、天職なのかな?」
 と感じるようになった大和だった。

                 最初の死体

 大和店長が軌道に乗ってきてからのことだったが、コンセプトカフェのある都会を擁する大都市には、いくつか区があるが、その中でも一番住宅街といえる区が、城西区と呼ばれるところであった。
 そもそも、この都市は昔からの城下町であった。中央区のその都心部には、城跡があった。天守閣も大阪城や、熊本城のような大きなものではなかったが、その作りは専門家に言わせると、
「一見派手ではないが、これほど防備に優れた城は珍しい。籠城しても、数か月は持ちこたえられるのではないかと思えるほど、食料と武器弾薬さえあれば、容易に攻城は難しい」
 と言わしめた城であった。
 天下人が、一番といってもいいくらいに信頼していた大名で、しかも、この土地というのは、天下人にとっての永遠のライバルと言われる大名のお膝元であることから、
「完全に、防波堤の役目をしている」
 と言われるくらいだった。
 この大名も、それくらいのことは分かっていて、そのうえで、
「大名冥利に尽きるというものだ」
 と、自分の役目をしっかりと自覚していた。
 しかも、旧地域名としては、一つの大きなところであり、
「一人の大名で、すべてを賄うのは難しい」
 と言われた場所なので、南北で分割統治が行われていた。
 この大名は、北部の海に近い方の賑やかな部分を収めていて、人口も街並みも、南部のそれと比べて段違いであった。
 南部はというと、山岳部分とその裏の土地であった。
 裏の土地は、内陸になっていることで、他の土地と隔絶されていることから、住民自体が、閉鎖的な性格だったのだ。
 排他性を許すことなく、半分は、自給自足を行っていたことで、村が点在していても、それぞれの村は、謎に包まれていた。
「攻め込まれないように、情報は表に出さない」
 という、
「生きていくための努力の一環」
 だったのだ。
 そんなわけで、山里離れた民家には、自分たちが生き残るための知恵が凝縮されていて、いわゆる、
「忍軍」
 と呼ばれる集団が生きていたのだ。
 その忍軍の中には、まるで、出稼ぎとでもいうように、他の土地の領主に対して、用心棒を申し出たりしていた。
 領主は彼らを保護した。密かに自分を暗殺しようとする、隣国の忍者を、こちらも雇うことで、身を守るのは、当然のことであろう。
 そもそも、暗殺というのは、汚いことのように思えるが、よく考えれば、正々堂々と戦を行っても、そこで発生する死傷者の数は半端ではない。もし勝てたとしても、自分たちの損害も相当なものだろう。いかに静かに行っても、戦は戦だ。勝った方であっても、ただではすむなどということはありえない。
 そういう意味で、特務機関としての特命を帯びた忍者が、領主だけを暗殺してくれれば、国は混乱し、そのどさくさで進軍すれば、それほどたくさんの血を流すことなく、事態を収拾することができるに違いない。
 だから、
「暗殺などというのは、秘境だ」
 と言われたり、夜討ちに対しても同じようなことをいう人がいるかも知れないが、現実的に考えて、いかに被害を少なくするか。そして、それは自分たちだけではなく、相手の被害も減らすことができるかということを考えると、ある意味この方がいいのかも知れない。
 どうせ戦になって、自分たちが勝ってしまうと、相手の大将の首は、風前の灯ではないか。
「生かしておけば、いつ、こちらの不利となって、後悔の念に苛まれないとも限らない」
 ということになりかねないと思うのだ。
 そういう意味での、
「忍軍」
 という存在は、絶対に必要なのだといえるであろう。
 この都市、F市というのだが、F市には、5つの区が存在する。県庁所在地で区のあるところとしては、少し少なめな気がするが、そのそれぞれがまったく違った顔を持っていて、広さというよりも、人口という意味で、分けられていると言った方がいいかも知れない。
 つまり、北部の住宅密集地は、どの区も面積的には非常に狭く、そして南部の面積は以上に広かったりする。
 もっとも、南部は、山岳地帯もあるので、人の住める範囲が少ないということから致し方のないことであるが、この広さの差は、意外と珍しいのかも知れない。F市の中で城西区というところは、全体の市の面積からいけば、10パーセントくらいであろうか。それでも、市の5分の1くらいの人口がいて、ひょっとすると人口密度的にいうと、城西区が一番高いのかも知れない。
 繁華街や歓楽街の多い中央区は、人が住んでいるというよりも、仕事場があったり、買い物や食事に集まってくるということなので、住宅地としては少なかったりする。その点、城西区は、マンションも立ち並んでいて、ほとんどのマンションには結構な人が入っているようだった。
 確かに、F市の近郊にも人口の多い、いわゆる、
「F市のベッドタウン」
 ということで、通勤圏内としての住宅街も充実しているが、やはり、県庁所在地在住ということへの思い入れが多いのか、人は都会に集まってくるようだ。
 最近になって、
「勘違いしていたのかも知れない」
 と感じることがあった。
 というのは、
「都心部のことを、都会と呼んでいて、都会のことが都心部なのだ」
 と思っていたのだが、ひょっとすると違うのかも知れないと考えるようになっていった。
 確かに都会というのは、繁華街であったり、歓楽街のような人が集まる賑やかなところだという意識があるが、都心部というと、版画街などよりも、どちらかというと、オフィスが合いであったり、行政機関や司法関係、さらには、中央病院のような医療機関が集まったところではないかと思うようになった。
 つまり、平日に人口密度が上がるのが都心部であり、週末や休日に人口密度が上がるのが都会ではないかという考え方だ。
 それが、まったく正しいということではないだろうが、別の意味で考えると、もし敵国がミサイル攻撃をしてくるとすれば、最初に狙われるのは都心部であり、行政機関などは狙われるが、人道的に狙ってはいけない、病院やオフィス街、あるいは、都会の繁華街、歓楽街を狙うと、世界から避難されるレベルではないだろうか。
作品名:マイナスの相乗効果 作家名:森本晃次