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二重人格の螺旋連鎖

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 あまりきれいなイメージもなく、昔からの固定ファンがいて、その人たちが支えているというイメージしかないのだが、そのイメージから、ずっと避けてきた。避けてきたというよりも、近寄らないと言った方がいいのかも知れない。
 避けるというと、興味はあるというのが前提であるが、近寄らないというのは、最初から興味もないし、近寄ると、何かされるかも知れないと思うほど、怖がっているという意味では、近づかないという感覚の方が、数倍、気を付けなければいけないことのように思えたのだ。
 それに、避けてきたというと、昔からそばを通っていて、存在を知っていたということであり、近づかないというのは、昔から知っていたのか、最近になって初めて知ったのか、どちらともとれるであろう。
 風俗街というところに足を踏み入れたのは、今回、
「癒しを求める」
 という意味で初めて訪れたことが最初だったのだ。
 風俗街というところは、どこの街も同じなのだろうか? 桜井の住んでいる街の中心部にも、大金風俗街と呼ばれるところがある。
 ここは、歓楽街として有名な場所の南部に位置しているところで、北側に海が面しているので、北側に向かって、川が流れているのだが、その下流が支川のようになっていて、その大きな川に挟まれた部分が、歓楽街になっていた。
 その歓楽街は、JRの玄関駅になっているところと、街の中心の繁華街との間に位置していて、ちょうど、商人の街と、城下町と言われた部分をちょうど分割するあたりに位置しているのだった。
 ここは、大都会には珍しく、空港が、街中にある。そういう意味で、飛行機で来た人たちが街の中心部に出るのに、地下鉄で数駅という実に便利の良さでもあった。
 風俗街として制定されている風営法というのは、基本的には、
「当たり前のことを当たり前に書いている」
 というだけのことであった。
 詳しい法律というのは、本当は、都道府県のような自治体が制定している、
「条例」
 と呼ばれる法律で規定されているのだ。
 つまり、風俗の法律というのは、全国共通のものではなく、その自治体において、バラバラに制定されているといってもいいだろう。
 特に、ソープランドのような店は、作ってはいけないと規定されている場所が確立していて、それに沿って、開業しなければならない。町名から、番地まで細かく決められた地域があるのだった。都道府県の中には、
「一切の土地での開業は許さない」
 と決まっているところもあったりするのだった。
 逆に、全国共通の法律としては、
「新規で、店を開店させてはいけない」
 というものがある。
 改築などや、すでに進出している会社の、新店という形ではOKだということである。
 こちらは、風営法に定められていることなのだ。
 桜井は、アルコールもあまり強くないので、歓楽街にもあまり足を踏み入れることはなかった。
 それこそ、会社の忘年会などで出かけるくらいで、年末に一度来るくらいのものだった。だから、ある意味一番人手の多い時に来るわけなので、
「年から年中賑わっているんだ」
 と、思っていたが、実際にはそうでもないようだった。
 そこは、他の企業と同じで、忙しい時期と、閑散とした時期があるのも当然のことであり、閑散とした時期がどれほど寂しいかということを、知る由もなかった。
 風俗街にも、同じように賑やかな時と、閑散とした時があるだろう。風俗街には、一人で来る客もいるが、昔から、歓楽街から流れてくる客、さらには、出張でやってきた土地で、風俗を楽しむ人も結構いる。風俗街には、いくつかの、
「無料案内所」
 なるものが存在し、客が流れ込むと、そこで客の要望を聞いて、それに似合う店を選んで、店側と交渉してくれるというところがある。
 どういうコンセプトの店がいいのか? たとえば、若い子が多いところがいいのか、熟女系で、ベテランの技を味わいたいのかなどであり、さらに重要なのが、お財布の具合である。
 軍資金がいくらまでなら大丈夫なのか、時間設定は、どれくらいがいいのかなど、個人で選ぼうとすると、初めての土地では迷ってしまうようなことを、交渉までしてくれるのだからありがたい。近くであれば、店からスタッフが迎えに来てくれたりもして、店までの間、他の呼び込み(基本的には禁止なのだろうが)に引っかかることなく、一直線で店まで行けるのはありがたいことである。
 店側もありがたい。呼び込みが禁止されている以上、路上営業もできないことから、お客のニーズを聞いて、客を連れてきてくれるのだから、実にありがたいものだ。
 たぶん、店からの共同出資などで、無料案内所を経営しているのだろうから、コンセプトが違えば、競合することもない。今の風俗は、基本的に、コンセプトと呼ばれるものがある。
 コスプレ専門だったり、マットプレイを売りにしていたり、素人感を前面に出している店などである。
 一つの町内に、ソープランドが、数十軒ひしめいているのである。客が迷ったり、分からなかったりするくらいなので、コンセプトがハッキリしていないと、やっていけないというものであろう。
 女の子も昔の映画などにあったように、
「借金のかたとして」
 というような、やくざ映画に出てくるようなことは少ないのではないかと思える。まったくないわけではないだろうが、正直、女の子も、学生だったり、普通の主婦だったりと、見た目も、
「風俗にいなさそうな子」
 というのが、結構いたりするのだ。
 だから、コンセプトにあった女の子が人気があったりする。今では、ネットも普及しているので、昔のように、店にいかないと、初めての店では、どんな子がいるのか分からないということもあり、無料案内所というのが重宝されたのだろう。
 今から思えば、ネットが普及する前といえば、店に入ってから、受付で、女の子のパネルと呼ばれるカードのようなものを見せられて、
「今なら、この子がいけるよ」
 と言って、選んでいた時代もあった。
 桜井は、そんな古い時代は知らないが、初めて入ったその店の常連のようになっていた。今では、常連というのも珍しくないので、スタッフと仲良くなるというのは、珍しいことなのかも知れないが、よく話すスタッフも結構いたりして、女の子との時間だけではなく、スタッフと軽い会話をするのも、密かな楽しみの一つだった。
 桜井は、最初、無料案内所からの勧めで、今は馴染みになった店に入った。最初はフリーで入ったので、どんな子に当たるかというのは、不安だったが、最初に入った女の子の優しさが、癒しに直結したことで、ソープに嵌ってしまった。
 プレイだけでなく、癒しを求めて行っているので、時間は結構長めだった。90分コースくらいを大体選択する。値段は、3万円くらいというから、こういう業界ではリーズナブルな、
「大衆店」
 と呼ばれるレベルのお店であった。
 店のコンセプトは素人系、当然若い子も多く、ほとんどが、20代。中には現役女子大生もいるということであった。
作品名:二重人格の螺旋連鎖 作家名:森本晃次