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二重人格の螺旋連鎖

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 これは、風営法の中で、店の経営体系ごとに、種類が決まっていて、それぞれに、営業時間の最長が決められていて、あとの細かいところは、都道府県の条例によって定められることになるのだ。
 そういう意味で、デリヘルの場合は、深夜だからということで、営業時間が限られるわけではない。もちろん、女の子の勤務時間となると、今度は労働基準法ということになるのであろう。
 そして、もう一つ、デリヘルと店舗型の違いであるが、それは、
「女の子の危険性」
 というところにある。
 店舗型であれば、店舗の中に部屋があるので、客がもしも、モラルに反する禁止事項をしようとして女の子が危険に陥れば、非常ボタンを押すと、スタッフが飛んできて、客を出禁にしたりの処置ができる。下手をすれば警察に突き出されることになるのだが、デリヘルの場合は、プレイはホテルであったり、相手の家だったりする。女の子が何をされても、店の人には分からないという危険性がある。
 中には強姦され、その動画を取られて、何らかの脅迫を受けるという事件も結構あるのではないだろうか。そういう意味では、デリヘルという商売は、これほど怖いものはないと思うのに、なぜか、デリヘルは、どんどん増えているではないか。
 桜井もそれに関しては不思議に思っていたし、明美もそのことは感じていたりしたのだった。
 今回、殺された男も、一人で入ってきたようだった。一応、タッチパネルのところだけを映すような防犯カメラは設置させていた。フロントでは、
「この客は男性一人の客なので、後で、女の子がやってくるんだろうな?」
 と分かるからだ。
 この客は、部屋を迷うこともなく、まるでめくら印を押すかのように、その部屋を選んだのだ。それこそ、最初からその部屋一択だったかのようにであった。
 さらに男は迷うことなく一直線にエレベータに乗り込み、そこを降りてから部屋までも、案内板を見ることもなく、一気に入っていった。
 各階のエレベータ前だけに防犯カメラがあり、男がエレベータを降りてから、部屋の方向へと曲がるまでをつなぎわせると、まったく迷っていないことが分かり、
「あの部屋の常連さんなのかも知れないな」
 と、警察の方でも、それを見て、疑う余地はなかったのだ。
 男が入っていくところと、受付時間は一致していた。
 もちろん、部屋の中には棒はカメラなどがあるはずもなかった。部屋に入ってから、男の死体が発見されるまで、その部屋で何が起こったのか、分からなかった。ただ、死体の第一発見者は、清掃員であったが、実際に怪しいと思ったのは、受付スタッフだった。
 というのは、その部屋の利用時間の終了が近づくと、フロントから、部屋に電話を入れるようになっている。
「お客様。ご利用、15分前になります」
 などという連絡である。
 基本的にはラブホテルなどでは連絡を入れることになっているのだが、それは法律で決まっているのかどうかということまではさすがに知らない。
 電話を入れた時、すぐに出ないということも珍しくもない。疲れて眠っていたり、風呂に入っている人もいるだろう。
「出物腫れ物所かまわず」
 と、いうことで、トイレの場合もあるだろう。
 だから、何度か連絡を入れる場合もある。
 ただし、最初に決めた時間で必ず出ないといけないわけではない。追加料金さえ払えば、その料金分はいられるからだ。実際にそういう人もいたりする。だから、電話に出ないからと言って、部屋を叩いて確認するなどということは普通はしない。
 それでも、フロントに何の連絡もなく、数時間が経てば、いくらなんでも怪しい。その時に電話を入れて誰も出なければ、さすがに心配になって、オートロックを解除して、部屋に入ることにするだろう。受付から部屋までは遠いので、オートロックを解除するタイミングで、清掃員が中に入る手筈になっていた。
 そして、打ち合わせ通りに中に入ると、ベッドの上にうつ伏せになっている男が発見されたということだ。
 背中からナイフで刺されているようで、ガウンには、血が染まっていた。さすがに、ビックリした清掃員は、すぐにフロントに電話して、事と次第を説明し、受けつけから、110番がなされたのだった。
 少しして、所轄の警察署から刑事がやってきた。
 殺されている男が部屋に入ったのは、午前10時頃、デリヘル利用の客であれば、別におかしな時間ではない。
 しかし、実際にデリヘルを呼んだ形跡はなかった。なぜなら、デリヘル嬢を呼ぶには、デリヘル嬢が受付で、
「〇〇号室の連れです」
 ということを言って、受付から、部屋に、
「お連れ様がお見えです」
 といい、客が了承すれば、初めてそこで、オートロックを解除することになる。
 客はそこで女の子を待つことになるのだが、この部屋からは、最初に入室してから、死体が発見されるまで、一切の連絡はなかったのだ。
「これは密室ということになるのかな?」
 と刑事は事情を聴いた後で、ふとそんなことを言い出した。
「そうですね、すべてがオートロックになっているので、普通は、犯人が抜け出せるはずはないんですけどね」
 ということであった。
「密室殺人か」
 と刑事はそういうと、ふとため息をついた。
「密室殺人なんて、普通ではありえないんだけどな」
 と、いろいろなパターンを考えてみた。
 ただ、密室殺人というのは、探偵小説としては面白いが、実際の犯行ということになると、別に密室殺人だったからと言って、褒められるわけでもないんでもない。犯人にとって、どんなメリットがあるというのか、もっとも、それが解決し合いと、犯人を特定もできないということなのかも知れないが……。
 さて、ホテルにおいて、その男が一体何をしようとしていたのか、ピンと来ない。もし、これがスーツを着て、旅行用のケースでも、持っていれば、
「出張なのではないか?」
 とも思うだろうが、そうでもない。
 出張でラブホを使うというのは、何かおかしいと思うかも知れないが、出張先での作業が夜中の、
「他の社員が皆帰った後でしか作業ができない」
 などという、技術系の仕事であれば、宿泊は、朝から夕方くらいということになる。
 普通の宿泊施設であれば、一般的なチェックインは15時半くらいだろう。早かったとしても、13時くらいだろうか。そうなると、その時間まで、徹夜で作業していたのに、どうすればいいというのか。
 それであれば、ラブホであれば、昼間の時間はサービスタイムである。そんなにお金もかからない。
 ほとんどのラブホでは、領収書だって発行してくれる。会社が領収書をラブホでも通してくれるというのであれば、ラブホが一番いいに違いない。
 後はといえば、サウナのようなカプセルホテルであったり、ネットカフェになるのだろうが、そんなところで、ゆっくりと眠れるわけがない。それを思うと、やはり、ラブホが一番だ。
 何と言っても、風呂もベッドも広い。テレビも大画面で見れるし、暇ならゲームだってできる。
 アダルトビデオも、ビジネスホテルではカードを買って、それで見ることになるが、ラブホでは、いくらでも、見放題だ。(もちろん、映るチャンネルだけだが)
作品名:二重人格の螺旋連鎖 作家名:森本晃次