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二重人格の螺旋連鎖

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「お金で繋がっている」
 と言った方が関係性としては実に楽であった。
 時間を長めにとれば、お話だってできる。その時に、女の子から、いろいろ褒められたりすると、それこそが癒しになるのだ。
「彼女もできないから、風俗に逃げている」
 というやつもいるが、敢えてそれを否定する気にはならない。
 否定してもいいのだが、たぶん、そんな言い方をする連中には何を言っても、言い訳にしか聞こえないだろう。
 ずっと、平行線を描いていくと、交わることがないことに、いつになったら気づくのだろう。
 まったく意見が合わない二人であっても、その距離が、本当は遠くて、いつかは重なるかも知れないと感じる人と、最初から近いにも関わらず、まったくの平行線であることで、永遠に交わることはないと考えることと、どちらが安易な考えなのだろうか?
 風俗の女の子が、客であるこちらのことをどう考えているのか分からない。しかし、何と言っても、安いものではない。一時間半であったり、二時間などであれば、4万円を軽く超えたりするのだ。
 1か月の給料のうちの、4万円が、2時間くらいで消えてしまうと思うと、普通に考えると、
「もったいない」
 と思うだろう。
 彼女を作ったとしても、デートをしたり、プレゼントなどをしたりすると、一日で、3万円くらい使うことだってあるかも知れない。
 相手にもよるが、男性に出させるような相手であれば、正直、それくらい使ってしまう。デートを毎週していれば、どれだけのお金がかかるというのか。
「若いうちならそれもいいかも知れないが、どこかで奥さんと離婚したりして、男女関係が煩わしいと思うようになると。風俗で、性欲を吐き出すということの方があっさりしていいと思うようになる」
 と言っていた上司がいた。
 その人が、風俗の話をいろいろしてくれて、ソープの遊び方などを教えてくれた。さすがに、
「一緒についていこうか?」
 ということはなかった。
 その人はあくまでも、
「自分だけが楽しめればいい」
 という考えの人なのだ。
 確かに一人でソープに通うようになると、一人がいいと思うようになった。よく無料案内所に、飲み屋の帰りに、数人で出かけてくる人がいるが、ほとんどが、40分などのショートコースである。
 正直、
「これで、何を遊ぶというのだ?」
 と思ってしまうが、一体何が楽しいというのだろうか?
 確かに人それぞれなのだろうが、桜井には分からなかった。何が分からないといって、風俗に来るのを、
「何かのついで」
 にすることだった。
 飲み会の帰りの、2次会、あるいは3次会のつもりでやってくる。女の子は、相手がフリーであっても、たぶん、
「私を選んでくれてありがとう」
 というだろう。
「それは彼女の優しさなのか、それとも……」
 などと考えると、彼女が可哀そうに思えてくる。
「一体何か可哀そうなのか?」
 と聞かれても、
「それは、俺の口からは言えない」
 というに違いない。
 何とも言えない思いがこの関係にはある。決して交わることのない平行線なのか、途中には越えられない結界があるのか、それなにに、彼女の口から、
「私を選んでくれてありがとう」
 というのだ。
 それが本心なのか、どうなのか? 本心であろうとなかろうと、その言葉の持つ意味は、どちらに転んでも、虚しく響くような気がして仕方がないのだった。
 もちろん、自分が風俗通いをするようになってから感じたことだった。最近では、ネットでの風俗の話題も結構ある。
「嬢のことを語り合おう」
 ということで、SNSが設けられたりしているが、次第にそのスレが乱れてきて、下手をすれば誹謗中傷に至ることも少なくはない。
 確かに、匿名での投稿なので、誰が言っているのか分からない。言いたいことを言えるということもあるだろう。サイトの管理人がいるのかも知れないが、あまりにもひどいものであっても、よほどの問題にでもならない限り、管理人に削除はできないようだ。
 管理人にどこまでの権限があるのか分からない。ただ、管理人がヘタレなだけなのか、それとも、勝手に消してはいけないという決まりごとのようなものがあるのか。少なくとも、それを名指しされて、誹謗中傷を受ける女の子がいるのも事実であった。どこまでが許されてどこからがアウトだというのだろう。
 少なくとも、誹謗中傷を書いている連中は、
「自分は悪くない」
 と思っているはずだ。
 ただ、病んでいるだけなのか、それとも、
「お金を払っているのに、自分の要望に相手の女の子が答えてくれなかったと勝手に思い込んだことでの逆恨み」
 というものなのか、たぶん、そのほとんどは後者なのだろう。
 前者であれば、書いた本人も、可哀そうだと、少しは、(本当に少しだけだが)同情の余地もあるかも知れないが、後者であれば、情状酌量の余地のない、執行猶予付きのない実刑判決ものではないだろうか。
 もし、それが原因で、その相手の子が自殺でもして、社会問題にでもなれば、その男は、これからの人生はもう終わりである。警察から開示要求が出て、匿名のはずが晒されて、裁判になって実刑にならなかったとしても、その人の人生は終わったといってもいいだろう。
 その時になって、
「軽い気持ちでやった」
 などと言っても、もう遅いのだ。
 こんな男を擁護するやつは、どこにもいない。せめて、親なら擁護したいと思うかも知れないが、それ以上に、
「こんな情けない子供を生んで、育てたのは自分だ」
 という自責の念に苛まれることになる。
 こういう男は、まわり全体が敵だらけになり、親からも情けないと思われ、世間に顔向けできないということで、確かにこんなモンスターを生んだのは、親の教育、まわりの環境が少なからず影響しているかも知れないが、事件が起こってしまった以上、全責任は本人にあるのだ。
 そんなことも分からないから、こんなやつが増えるのだし、あらたな社会問題がどんどんできてくるのである。

                 明美のこと

 今の世の中、実に、不可思議であった。そもそも、SNSでの匿名投稿は、プライバシーの保護の観点から、匿名にしているのだろうか? しかし、匿名をいいことに、中にはそこで、他人のプライバシーを曝け出すやつもいたりする。
 今ではネットやスマホなどがあるから、いつでもどこでも、簡単にいろいろな情報をすぐに受け取ることができる。今から25年前、いわゆる四半世紀前というと、まだ、携帯電話すら、普及していない時代だったのだ。
 今でこそ、誰かとどこかで待ち合わせをする時、遅れそうな場合や、急遽いけなくなったりした場合は、メールやLINEですぐに知らせることができる。電話したっていいわけだ。
 しかし、携帯電話のない時代には、待ち合わせをしていけなくなった場合など、どうしようもない。ハッキリと分かったのが早ければ、相手の会社だったり、家だったりに電話を入れれば分かることではあるが、急遽の場合は、そうもいかないだろう。
作品名:二重人格の螺旋連鎖 作家名:森本晃次