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ずさんで曖昧な事件

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 なんと言っても、主婦のウワサ話というのは、かなりの影響力があり、ウソであっても、多数の人が、あたかも本当のことのように、あちこちで触れ回ってしまえば、それを否定することはほぼ不可能。先手必勝で、負けが確定してしまうことだろう。
 これが、男女の関係の問題ともなると、
「マンションを出ていく」
 というだけでは済まなくなる。
 デマであれば、マンションを出ていけばまだいいが、それが事実で、他人に迷惑をかけてしまっていると、逃げ出すことすらできなくなってしまう。そうなると、誰からも相手にされなくなり、孤立してしまうことになる。孤立した後で、出ていったとすれば、完全に逃げ出したということになるのだ。
 プライドも何もあったものではない。元々自分が悪いのかも知れないが、
「まさかこんなことになるなんて」
 と言っても、取り返しがつかないのである。
 特に不倫ともなると、たぶん、最後は逃げるようにして、マンションを出ていくことになるのが関の山だろう。ただ、その間に、慰謝料だったり、離婚だったりと、流さなければいけない血は、果てしないのかも知れない。
 身体中の血液がすべて出切ったとしても、それでもまだ済まないというほどの代償を払わなければいけなくなるだろう。
 そうなってしまうと、
「人生終わりである」
 ということになるだろう。
 これは冗談ではなく、ドラマで起こることは、実際に起こっていることだと言ってもいいだろう。ドラマだからこそ、まだ、刺激が少ないように作られているが、リアルな不倫問題の結末は、
「血で血を洗うような結末」
 になりかねないに違いない。
 マンション問題で、人生を棒に振りたくはないものだ。
 まあ、そんなことは、稀のまた稀なことであろうが、決してありえないことではないということだ。
 ひとつの光明は、
「そんな嫌な住民は、短い時期で引っ越していく」
 ということが二回も続いたことだった。
 それが、仕事による引っ越しなのか、それとも、何か他のトラブルでいられなくなったのか。もし、そうだとすれば、自分の知らないところでのトラブルであり、それだけのトラブルメーカーだったということで、自分の思いが正しかったということであり、
「天罰が下った」
 という意味で、せいせいすることになるのだが、それなら、その理由を知ることができればどんなにいいかと思うのであった。
 とにかく、いつもそんなに長く滞在することもなく引っ越してくれるのはありがたいことだったのだ。
 ただ、空室ができると、また、誰かが入ってくるというのは、自然なことで、またしても、1年ほどしてから、別の住人が入ってきた。その人は、引っ越してきてから、初めて、引っ越してきたということで挨拶に来た。
 今の時代、隣に引っ越してきたからと言って、挨拶に来ることをいちいち気にしてはいけないのだろうが、挨拶されることがなかっただけに、実際にどんな挨拶なのかというのもよく分からなかった。
 昼間、引っ越し業者が荷物を入れ、夜近くまでかかったようだ。
 白河が仕事から帰ってくる時間まで、業者はまだいたのだ。
 帰宅する時間は、午後7時くらいだったので、すっかり、荷が入るまでには、すっかり日が暮れていたのだった。
 白河は、自炊を今はほとんどしなくなっていた。弁当を買って帰ることもあれば、食べてくることもある。自炊をする時というのは、
「外食に飽きた」
 という時だったのだ。
 正直、ここ1年くらいは、食事に飽きることが多くなってきた。
 学生時代までは、好きなものがあれば、それをずっと続けても、ほとんど飽きることはなかった。半年、毎日好きなものであれば、食べても飽きることなどなかったのだ。
 どちらかというと、肉類が好きだった。まだ、30代前半の白河なので、差かな料理はどちらかというと苦手だと言ってもいい。
「魚のあの青臭さが嫌いなんだ」
 という理由から、野菜も種類によっては嫌いなものがあった。
 そのくせ、ピーマンやニンジンと言った、普通の人が嫌いな料理を嫌いなわけではない。青物と言っていいのか、玉ねぎ以外のネギ系統は嫌いだったのだ。
 特にニラや漬物は嫌いで、高菜やキムチなどの辛いものも苦手だった。
「ラーメンや、チャーハンに高菜を入れる人がいるが、何がうまいんだ」
 と思っていた。
 紅ショウガも嫌いなので、そうやって考えれば、チャーハンや九州ラーメンなどのトッピングで、ただだからと言って、いっぱい盛っている人を見ると、ついつい、顔をしかめてしまう自分を感じてしまうのだった。
 さらに、料理に野菜を混ぜるのも嫌いだった。
「せっかくの肉の味が野菜で消されてしまう」
 というものだ。
「野菜も食べないといけないじゃないか」
 という人がいるが、逆に白河は、
「それだったら、最初から、野菜を別に食べればいいじゃないか」
 という。
 しかし、それを聞いた人は、
「何言ってるんだ。料理に混ぜた方が食べやすいじゃないか?」
 というのを、聞いて、開いた口がふさがらないくらいになってしまった。
 その理由は、
「そんな発想は思いつかなかった」
 というものだ。
 言われてみれば、
「なるほど」
 と感じるが、明らかに。白河の発想から逸脱したものであり、最初から出発点が違っているのだった。
 他の人は、まず、
「自分は野菜が嫌いだ」
 というところから出発し。
「だから、料理に混ぜると食べることだってできる」
 ということになるのだろう。
 しかし、白河は違う。
「俺は別に野菜が嫌いというわけではない。確かに嫌いな野菜もあるが、それ以外は。普通に生野菜としても、野菜サラダとしても食べることができる。ただ、好きな料理に混ぜてしまうと、せっかく、100のおいしさが、野菜を入れることで、50いや、30くらいになってしまうことが許せない」
 と考えるのだ。
 そもそも。他の連中が、料理に野菜が混じっていることを容認しているのは、子供時代に、好き嫌いがあり。それを親が、
「どうすればいいか?」
 ということを考え、ニンジンなどは、小さく刻んで、チャーハンや、中華料理に入れたりして、食べさせ、そのうちに他の料理に入れても食べられるようにしようという思いから来ているのだろうと思うようになった。
 まあ、料理屋においての料理は理屈が違うのだろうが、白河の場合は徹底していた。
 店に食べに行った時も、味が混ざって嫌な料理は、最初から、
「〇〇抜きで」
 と言って注文する。
 それを、
「それはできません」
 と言われれば、他のものを注文する気にもならず、即行で店を出ることにしている。
 そして、その店には二度といくことはない。もし、妥協して他のメニューを頼んだとしても、自分が望むような料理が出てくるとは思えないからだ。
 わがままだと言われればそれまでなのだが、それくらい徹底していた。
 そして、もし、注文したものに、自分の気に食わないものが入っていれば、取り皿を貰い、それを全部避けてから、食べるようにしている。これも当然のことだが、もう二度とその店にもいかない。
 たぶん、そんな食べ方をしていれば、まわりからは白い目で見られることだろう。
作品名:ずさんで曖昧な事件 作家名:森本晃次