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探偵小説のような事件

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 ストーカー行為を繰り返していたことも素直に認めたが、殺したことを後悔はしていないという。
 起訴され、裁判となり、懲役10年の実刑判決が下った。
 男は22歳の大学生だったという。
 そんなことよりも、主婦が交番に相談に行き、交番で、
「警備を強化する」
 と言われていたことが、被害者の旦那が、マスゴミからの取材で分かった。
 こういうことにはマスゴミは敏感だ。
 すぐに週刊誌などがネタにし、警察の怠慢と、軽く受け流すかのような、相談者を安心させる言い方がかなり問題になった。
「警備を強化すると言いながら、実際には何もしていなかった警察の怠慢が生んだ、陰惨な事件」
 ということで、マスゴミは騒ぎ立て、社会問題は大きくなった。
 当時他の件でも、ストーカー殺人の問題が大きくなっていて、やっと政府も動き出したというわけだが、そんないくつかのストーカー事件の犠牲の中でやっと、あの間抜けな政府が、重い腰を上げることになった。
 ただ、確かに法律もでき、
「法整備は整った」
 と言ってもいいのだろうが、実際のストーカー問題が解決したわけではない。
 むしろ、事件は減ることはない。ただ、被害者が相談すると、ストーカーに対して、
「接触禁止命令」
 などが出され、それに違反すると、逮捕対象になる。
 それが、ストーカー規制法であるが、あくまでも、禁止命令であり、いきなりの逮捕ということにはならない。
 つまり、抜本的に、
「警察は、事件にならなければ、動かない」
 ということに変わりはないということだ。
 そういう意味では、犯罪がなくなるわけがない。
 そもそも、警察の本来の目的は、
「犯罪を未然に防ぐ」
 ということにあるのではないか。
 それなのに、やれ、検挙率だとか、ノルマだとか、まるで、管轄同士で争うかのようにしなければいけないのか、そもそも、管轄による、
「縄張り意識」
 さらには、公務員ならではの、
「キャリア、ノンキャリア組」
 と言った問題があり、警察内部でも、いろいろなしがらみがあり、市民。被害者などに寄りそうことなどまったくない、まるで政府のような組織として君臨しているのは、それこそ、
「税金泥棒」
 と揶揄されても仕方のないことだろう。
 警察の、民事不介入の原則というのは、分かるのだが、
「事件が起こらないと何も動けない」
 というのは、どういうことだ?
 警察は、
「人が殺されないと、動いてはくれない。人が殺されたことで犯人を捕まえることができ、捕まえることが、検挙率アップにつながる」
 ということなのだろう。
 もし、危険が迫っているからと言って、警察に詰め寄ったりすると、
「我々も忙しい」
 ということで門前払いを食らうのは日常茶飯事。
「一体、何に忙しいというのか? 上司への気遣いに忙しいのか、キャリア組への忖度に忙しいのか、一般市民には分からない闇の部分」
 ということなのだろう。
 ただ、その頃から、このあたりでは、しばらくの間、
「警察なんかあてにならないので、俺たちで警らを強化しよう」
 という市民団体ができあがり、特に被害のあったあたりを中心に見回り等があったので、このあたりの犯罪発生はほとんどなかった。
 だが、ストーカー行為がなくなったわけではない。あくまでも、夜道の付け回しが激減したというだけで、他のストーカー行為はなくなったわけではない。
 夜中の無言電話。部屋の前に、謎のプレゼントが置かれていたり、逆にゴミの山が捨てられていたりという犯行は相変わらずであった。
 警察も、法律の範囲内で手続きを取ったり、動くことはしてくれたようだが、犯人が特定されなかったりすると、それ以上のやりようがなかった。
 これは、別に警察を擁護するわけではないが、犯人たちも賢くなってきたというべきだろうか。
 それとも、警察の国家権力にも限界があるということであろうか。
 しょせん、警察なんてあてにならないということが解消されたわけではないということだ。
 逆に、法律ができたのに、警察は何もできないことに変わりはない。
 ということで、逆に警察に対しての不信感が増すことになった。
 実際に統計を取ってみれば、犯罪は減っているのかも知れないが、そんなものは警察の発行する、
「犯罪白書」
 でも見なければ分かることではない。
 そんなものをいちいち一般市民が見ることもないわけなので、あくまでも、実感していることでの判断になる。
 その判断において、警察がどれだけの無能集団なのかということを証明しているに過ぎないということであろう。
 ただ、これは日本だけに言えることではないだろう。ある意味人類にとっての、
「永遠のテーマだ」
 と言ってもいいかも知れない。
 警察ばかりが悪いわけではない。そもそも、ストーカーというのがどうして起こるのか、それを未然に防ぐ方法はないのか? そんなことを研究しているところがあるのだろうか?
 研究しているかも知れないが、それが実際の警察や法律に行かされているのか。そんなことは一般市民に分かるはずもない。
 そんなことを考えているうちに、杭瀬は、高校生から、大学生になり、今は社会人として、課長代理というところまで行っていた。
 彼の頭の中には、20年前のストーカー殺人のことが鮮明に残っている。もちろん、現場を目撃したわけではないが、その場所が自分の通学路だったということもあって、一致時期、そこを一人で歩くのが怖いこともあったほどだ。
 見回りの民間団体ができたことで、かなり安心できたのだが、彼の中で、なぜかトラウマになってしまったようで、今でもその事件のことをよく思い出したりする。
 それは、年齢的なものにも、影響があったのではないだろうか。
 ちょうど、中学3年生くらいだっただろうか。時期的には思春期の頃であり、異性に興味を持ち始めた頃だったのだ。
 それと比例して、女性に対して、自分の中でも異常な感情が沸いてくることもあった。それこそ、ストーカー行為をしてしまいそうになるのを、理性が抑えていたのだ。
 ストーカー犯罪という言葉が世間で社会問題になっているというのも、影響が強かった。バスや電車での通学の際に、気になる女性がいれば、
「彼女のことをもっと知りたい」
 と思うのは、人情であろう。
 しかも、思春期の一番精神的にデリケートな時期であり、ある意味。熱中すると、まわりが見えなくなる頃だといってもいいだろう。
 そんな時期に起こった、
「ストーカー殺人:
 センセーショナルな印象を受けたのだ。
「もし、自分が、好きになった人を追いかけて、家を知ったりするとどうだろう?」
 あるいは、
「好きになった人にプレゼント送れば喜んでくれるだろうか?」
 などという妄想に駆られたが、普通に考えれば、気持ち悪がられて、警察に通報されるのがオチだ。
 ということになるのだろうが、思春期の一途な時期には、そんな思いは通用しない。
「下手をすれば、相手の女を逆恨みするかも知れない」
 その感情がストーカー犯罪につながるのだ。
 それなのに、ストーカー犯罪が起こったと聞けば、頭はすぐに被害者側に切り替わる。
作品名:探偵小説のような事件 作家名:森本晃次