探偵小説のような事件
そして、9時以降となると、今度は主婦の時間だった。食事の後片付け、入浴を終えて、いよいよサスペンス劇場や、連続ドラマの時間だった。連続ドラマと言えば、出てくる人気男優を見るのが主婦の目的で、サスペンス劇場といういわゆる、2時間ドラマと呼ばれるのは、正直、トリックやストーリーは、それほど変わり映えはしないが、その分安心して見ることができるという安定感と、さらには、年配が見る番組としての時代劇のような、
「勧善懲悪」
が、親しまれていたのだった。
ただ、その当時はやっと一般家庭にビデオというものが普及し始めてきたが、まだまだ贅沢品として、持っている人が少なかった時代。録画もできず。しかも、野球で時間が30分繰り下げになるなど、日常茶飯事だった時代は、なかなか、最後まで見るのは主婦としても辛かったことだろう。
主婦の朝は早く、5時起きなどという人も多かっただろうから、12時近くまで起きているのは正直辛いことだっただろう。その頃から比べて、平成になってからは若干変わってきた。
夕方のアニメはやっているチャンネルが限られてきて、ゴールデンの野球は、相変わらずだが、連続ドラマもトレンディドラマというものに変わり、これは、家族で見れるくらいのものとなっていた。何よりも、主婦が昼間パートに出るということが多くなり、子供が学校から帰ってきても、誰もいないという家庭が増えてきたのだ。子供はゲームをするようになり、自分の部屋に引きこもるようになった。時を同じくして、学校では苛め問題が深刻になり、部屋の引きこもりの問題は、ゲームなのか苛めなのか、親も腫れ物に触るようになっていた。
時代はそんな世紀末くらいのことであっただろうか。今は、35歳になった杭瀬は、その頃は、やっと高校生になった頃だった。
当時は、社会問題として、基本的に、男性が女性に付きまとうという、ストーカーという犯罪が増えてきていた。まだ、今のように、警察が介入する、
「ストーカー規制法」
というものが成立する前だったので、ストーキングに対して歯止めがかからず、ストーキングする方は、エスカレートしていき、される方は、誰に相談することもできずに、泣き寝入りという状態であった。
さすがの、
「バカ政府」
も、問題になってから、10年近く経って法律を作った。施行されたのが、2000年というではないか。
ストーカー被害が社会問題になって、テレビドラマなどで、ストーカーの問題を取り上げていたのが、1992年前後ということだから、どれだけ政府が間抜けで、私利私欲にしか走らない人間が多いかということを表している。世の中に蔓延っている、
「人災」
と言われる出来事や問題のどれだけが、政府に関係のあることなのか、誰か暴いて公表してもらいたいものだ。
ここ最近、世界的な問題になっている、伝染病だってそうだ。蔓延に関しての責任は、マスゴミと政府にそのほとんどがあるといってもいい。
「マスゴミは煽るばかりで、政府はやっとその煽りに載せられる形で、後手後手ではあるが、あくまでも、やってますアピールのごとくの政策」
を打ち立てる。
しかも、それが不公平感満載で、ロクでもない法律だから、下手をすれば、やらない方がマシだったりするという体たらくである。
政府のバカさ加減には、どれだけの被害者が今までにあったか。
「阪神大審査」
「東日本震災や、その派生の原発事故」
ちなみに、原発事故は人災だったのだが、
そして、今回の、
「世界的なパンデミック」
そのすべてが人災だ。
天災における人災は、二次災害にある。政府がことを起こせば、まずほとんど二次災害が起こる。何も考えずに対応するからだ。
それは、マスゴミに煽られるから、
「何かしないとだめだ」
という発想の元、頭のいい部分はすべて、保身に向けられるのだから、
「自分たちのことしか考えていない」
と言われても仕方がないだろう。
さらに、平時でも、信じられないようなミスをする。普通の会社だったら、破産していてもおかしくない。何しろ、国民が収めている、
「老後の保障」
である、年金を消した、
「消えた年金問題」
である。
キチンと運営していれば、こんなことにはならないのに、マニュアルに沿った運用をしていないという、初歩的なミス。これは最初からの人災だった。
そのせいで政権交代が起こったが、交代した政府が、これまた輪をかけての無能だったのだから、話にならない。すぐに政権が元に戻ると、今度は首相が、汚職に手を染めていて、自殺者を出したにも関わらず、
「解決済み」
と言って、追及をかわそうとする。
それが、今の政府である。
しかも今の首相が、最初に、
「その政治家の調査を行う」
と所信表明して首相になったくせに、今は、その男の言いなりになっている。
一体政府はどうなっているのだろう?
いや、これが日本の政府の伝統なのだろう。
「政府なんかに期待したら、どうせ裏切られる」
ということである。
そんな時代に、近所で起こったストーカー殺人。皆が、
「いずれ、こんなことが起こるんじゃないかと思っていた」
と口々にそう言っていたが、その通りになってしまった。
殺されたのは、近所の主婦だった。マンション住まいだったが、帰り道のこと、
「最近、ストーカーに狙われている気がするの」
と言われていて、交番に相談すると、
「とりあえず、なるべく、パトロールを強化するようにします」
ということだったので、完全に安心したわけではなかったが、その主婦も一応警察に相談し、警察も、パトロールを強化してくれるということを確約してくれたので、気分的に楽になっていたのは間違いないだろう。
その日は、完全に油断していたようだ。
バスを降りてから、マンションまでの徒歩10分ほどのこと、まわりは、ほとんど歩く人もいない場所に差し掛かるという。それは、距離にして、数十メートルなので、途中までいけば、どうしても油断してしまう。特にストーカー被害に遭っている人は、後ろをつけられることを警戒したとしても、前から出てこられることは、それほど警戒していない。基本的に前を見て歩いているからだ。
だが、その男は後ろを気にして歩いているその主婦の目の前に、まるで出会い頭でもいうように飛び出してきたのだ。驚きと恐怖で、そのまま腰を抜かしてしまったとしても、無理もないことだ。
男は手にナイフを持っていた。男は男なりに、その主婦へのストーキングに苦しんでいたようだが、その結果出した答えが、最悪の結果を招くことになった。
不幸中の幸いか、即死だったという。ナイフを突き立てられたまま、血も噴き出すこともなく、その場に倒れこんだ。目撃者もいなかったが、犯人はすぐに特定された。男は、ナイフを素手で握ったまま、ナイフを突き立てたのだ。犯行の偽装工作をしようなどと思っていたわけではないが、差したあと、その場を逃げ去った。
死体が発見されて、鑑識の捜査で、すぐに犯人が特定された。そして、犯人が捕まり、警察で事情を聴かれることになったが、犯人は、素直に応じたという。
作品名:探偵小説のような事件 作家名:森本晃次