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謎は永遠に謎のまま

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「俺の住んでいた田舎では、ほとんど雪が積もることなどないので、ちょっとでも雪が積もると結構大変だよ。いつもだったら、歩いて10くらいのところを、車を使うと2時間もかかったとか言って、皆一度、家に車を置いてから、もう一度出勤してくるんだよ。その方が、そのまま車で来るよりもよほど早かったりする。電車というのは、雨や風ではすぐに止まってしまうけど、雪には結構強かったりする。少々の雪だったら、30分以上遅れるということはない状態で、運行するんだよ。実によくできていると思うんだ。ただ一つビックリしたのは、連結ポイントのところで、線路が凍結しないように、下から火であぶっているんだよね。それを見た時、実に原始的な対策だと思ったけど、これほど有意義な対策はないと思い知らされた気がしたね。これこそ、雪の中でに列車の強みだということをいまさらながらに思い知らされた。インフラがマヒしたりした時など、逆に原始的な方法が効果的だということになるんだろうと思ったんだよ。それは文明の利器の限界なのか、それとも、文明に対しての自然の挑戦なのかって、そんなことを考えされられたきがしたものだよ」
 と、地元の事情を織り交ぜながら、川北は話した。
「なるほど、興味深いね。雪の普段降らないところでたまに降ると、それはそれで大変だということだね?」
 と、飯塚はいうのだった。
 早苗からの申し出のあった翌日、状況は一変したのだが、まさかの展開を、果たして誰が予想などできたであろうか?

                 早苗のこと

 翌日になると、どうやら想定していたよりも気温が上がったのか、それとも、油断があったのか、村の奥で雪崩が発生し、学校に一気に雪崩が流れ込むという事態になった。最近では、さらに過疎化が続き、小学校、中学校が一つの校舎にて学ぶという状況だった。小学生、中学生を合わせても、50人程度と、都会でいえば、一学年の中のさらに一クラス分よりも少し多いというくらいであろうか。
「俺がいた頃はもう少しいたと思うんだけど、やっぱり過疎化の波は想像以上だったんだな」
 と、いまさらのように飯塚は話していた。
 校舎と言っても、昭和の学校そのままで、話を聞くと、建て替えなど、昭和からしていないという。ほとんどが老朽化したところを、その部分だけ手直ししていた程度だといい、村の役場も似たような建て方だというので、本当は呆れかえるのだろうが、それだけ村に金がないということであろう。
 それでも何とかやってこれたのは、自給自足のノウハウを持っていることと、この村でしか取れないという、作物があったからだという。見た目は普通の八百屋などでみられる野菜と変わりはないが、味はまったく違っているということで、この作物を盛岡の会社に持っていくと、通販を通して、全国に出荷できるということだった。
「知る人ぞ知る、岩手の秘境の野菜」
 ということで、主婦層の間で大人気で、全国からの注文がひっきりなしだという。
 その作物はなぜか、村にしか生息せず、他の土地で育てようとすると、見た目も、味も、全国で食べられている、
「どこにでもある野菜」
 としてしかできないのだというのだ。
 この秘蔵ともいえる野菜であるが、ここでしか採取できないからと言って、そんなに高価なわけではない。全国の主婦で有名になったのも、
「お値段がお手頃なところ」
 だったのだという。
 やはり、過疎地で人口が減ったとしても、村として何とか持っているには、それなりに理由があるということであろう。
 今まで何度も、他の街との合併話もあったようだが、断固としてこの村の長が拒否してきた。
 昭和の市町村合併、平成の市町村合併を重ねることで、日本に村がどんどんなくなっていった。そんな中、残った理由に、先ほどの名産や自給自足という理由の他には、この村が盆地になっていて、他の地区とは隔絶させていることだった。
 かなり高い位置からの峠を超えるので、ほぼ山越えに近い形で孤立しているところなので、この村を自治体の一部として扱うことに、難色を示し始めるのである。
 つまり、合併を考えている方が、次第にトーンが下がってきて、最後には断念するという形で、こちらが断固拒否と言っても、そこまで強く拒否をしなくても、最終的に相手が諦めるというのが昔からの流れだった。
 こちらの村としては、それらの合併話の内容は資料として残っているが、断念した方は、断念したことで作成していた資料を破棄しているのだろう。だから、何事もなかったかのように、性懲りもなく、合併話を持ってくるのだ。
 過去の経緯を知っている村人は、
「またか」
 と思うのだが、結局そのバカバカしさと、知れている結果に対して何ら興味も示さない。
「どうせ、合併話なんかすぐに消え去る」
 ということで、意識すらしていないのだった。
 ただ、昭和のある時期、この村の奥にある池を、
「小規模なダムにしよう」
 という計画が持ち上がり、途中まで進められたことがあったが、結局は経ち切れになってしまった。
 理由は、その土建屋が倒産してしまったことにあるのだが、村では、その後、雪崩対策に独自の計画で、ダムとまではいかないまでも、堤防のようなものを作ることで、今のところ、被害は最小限に食い止められているのだった。
 その時だけは、盛岡の企業が参加しての開発だったが、村が本当にgay差的だというわけでないことを証明した一例だったのだ。
 小学校の方の被害は、それほどでもなかったのだが、翌日、学校関係者や村の駐在とで、被害状況の確認を行っているところで、雪が崩れたあたりから、一体の死体が発見されたということで、センセーショナルな話題が巻き起こった。
 遺体は完全に白骨化されており、警察の捜査員や鑑識が入り、さらに少ないとはいえ、マスコミも入ってきた。
 ほとんどマスコミなど来る村ではなかったので、それだけで、村人のウワサは絶えなかったようだが、白骨死体だということで、それほど大きな問題にはならなかった。
 白骨死体の身元を判別するものはほとんどなく、死亡推定時刻など分かるはずはなかったが、腐乱状態から、5年は経過しているのではないかというのが、鑑識の鑑定結果だった。
 村人には該当する人物はおらず、自殺なのか、他殺なのかもわからなかった。そのうちに騒ぎも収まってきたのだが、駐在が付近を捜索していると、一つの手のひらサイズの金属でできた四角い缶が見つかったのだった。
 だいぶ錆びついていたが、テープで厳重い封がされているのを見ると、駐在が不振に思い開けてみると、そこには、ノートや手紙、さらには子供のおもちゃのような、普通の人には、まったく興味もないものが埋まっているというだけのことだったが、一番上にあった手紙に書かれている文句が見えた。そこには、
「10年後の私へ」
 と書かれているのを見ると、どうやら、当時の子供たちが埋めた、タイムカプセルであることが判明した。
 だが、その中をさらに改めてみると、タイムカプセルにはまったくふさわしくないものが入っていたのだ。それはなんとナイフであり、泥で汚くはなっていたが、タオルで拭ってみると、そこまで古いものではないと思われた。
作品名:謎は永遠に謎のまま 作家名:森本晃次