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謎は永遠に謎のまま

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 を表現していたといってもいいだろう。
 ただ、田舎者というと、川北のように、都会の重圧に圧し潰される人と、田舎者根性というべき、芯の強さを持った人間が、田舎者として、力を発揮し、苛めようとしていた都会の人間のひ弱さを曝け出させるようにして、自分が生き残るという、雑草のような逞しさを持っている場合がある。
「飯塚って、どっちなんだろう?」
 と思ってたが、女性を相手にするだけで、ここまで純粋にしか思えないのであれば、きっと、東京で行く抜くことは、まず難しいだろう。それは、川北のレベルよりもさらにきついものではないだろうか。
 そんなことを思っていると、飯塚のあまりにもわざとらしさに、却って恥ずかしい思いがする川北なので、実際の相手である早苗は、さぞや困っているだろうと思いきや、そこまでは感じさせるものではなかったのだ。
 そういえば、大学時代の飯塚も、女性に関しては、あまり興味がないようなそぶりをしていた。いわゆる、
「朴念仁」
 と言ってもいいくらいだった。
 だから、田舎者で、さらに朴念仁の彼に、女性が寄ってくるはずなどなく、いくら草食系男子が多いとはいえ、最初から相手にされていないかのようだった。
 だが、そんなことには、ほとんどお構いなしで、彼は2年生くらいまでは、女性に興味を持たなかった。
 しかし、3年生くらいになると、偶然ではあったが、同じ時期に女性を好きになった。それでも、それぞれ違う相手だったこともあって、何とか助かったのだが、飯塚の方がすぐにダメになった。
 相手に告白することもなく、せっかく仲良くなったのに、進展しなかったのだ、
「何を話していいのか分からない」
 ということであったが、やはり、彼は恋愛に向かないのだと感じたのだった。
 ただ、それは、飯塚に限らず、川北にも言えることであった。恥ずかしい話、今まで付き合った女性はおらず、正直にいうと、素人童貞であった。これは、飯塚も大学時代まではそうであり、卒業してからは知らないのだが、今回のベタな状況を見れば、それは変わっていないということを示していた。
「まさかとは思うが、今回のこのベタな状況を演出したのは、飯塚が、自分に助言を求めたいということを、暗に示しているのではないだろうか?」
 と考えられた。
 恋愛下手ではあるが、飯塚という男は、頭がキレる男だった。実直なために、そのキレる頭をなかなか効率的に生かすことはできないでいるが、それも致し方のないところがあった。それでも、飯塚としては、年齢が進むにつれて、まわりが結婚を自分以上に意識していることを察しているのかも知れない。
 つまり、このままでいけば、自分が望む望まないに関係なく、好きでもない人と結婚させられるかも知れないという危惧を感じているのだとすれば、一応男なのだから、好きな人と結婚したいと思うのは無理もないことだ。明らかに飯塚は、早苗さんという女性を好きであることは見ていれば分かった。早苗さんの方も、好まざる相手ではないということも分かった。
 ひょっとすると、お互いに相思相愛なのかも知れないが、お互いに明らかな恋愛下手。人に頼りたいと思う気持ちも分からないではないといっていいかも知れない。
 飯塚は、今回のバスであくまでも偶然を装っているが、どう考えても、計画してのことである。もっとも、それは昨日からずっと一緒にいる川北だから分かることであったが、果たしてそのことを、当の本人である早苗に分かっているのかどうか。疑問であった。
「行橋さんは、いつもこの時間に帰ってるんですか?」
 と飯塚は切り出した。
「ええ、残業がない時は、この時間ですね。今は少し仕事が落ち着いている時期なので、この時間が多いですね」
 と言った。
 それを聞いて、飯塚が何を感じたのか分からなかったが、川北としては、彼女の状況について、
「まず、仕事が終われば、誰かとどこかに出かけるということもなく、まっすぐに帰宅するということ。そして、それは、友達も恋人もいないということを示唆しているのだ」
 ということである。
 さらに考えられることとして、
「飲み会などには参加をしない人であるということ、ただ、これは会社にはそういう賑やかなことをするのが好きではない人が集まっているということを示しているのか、あるいは、この盛岡という土地自体、そんなに会社内での飲み会をしない人たちが多いという民族性の問題なのかは分からない」
 ということだ。
 だが、ものは考えようで、まわりのことも考えておかなければ、その人だけの性格を状況からだけで判断しようとすると見紛ってしまう可能性があるということである。
 だからこそ、本当は飯塚が、川北に対して見極めてほしいと思っているのであれば、それは本末転倒なのではないかと思うのだが、果たして、頭のキレる飯塚に、そんな簡単なことが分からないということなのだろうか。
 ある意味、頭がキレる人間も惑わしてしまうほど、恋愛感情というものは、厄介なものなのではないかと考えると、川北はどうしていいのか分からなくなった。
 そもそも、まだ何も飯塚がアクションを起こしているわけではないので、勝手な思い込みだった。
 ただ、結構、そういう勘が今まで働いてきた川北にとって、今回の勘も悪い勘として当たってしまっているような気がして、気が重いのだった。
「まあ、これもしょうがないのかな?」
 と、他人事として考えるのが一番いいとは思うのだが。変に責任感が強くて、下手をすれば、その責任感に押しつぶされるという、悪い方に進むと、逃れられない性質が自分にあることを思い出していた。
「そういう意味では、飯塚の普段の性格が羨ましい」
 と思い、だからこそ、飯塚を一番の友達として、ずっと付き合ってきたのではなかっただろうか?
 そんなことを考えていると、今日は早苗の方から話題を振ってきた。
「飯塚君は憶えているかな? 高校三年生の時に何をしたのか」
 と言われ、一瞬、飯塚はキョトンとなってしまった。
 たぶん、早苗の方から話しかけられたことに衝撃を受けて、思考が一瞬停止したのではないだろうか。しかし、彼には元から自分の頭がキレているというプライドのようなものがあり、そのせいで、プライドと、衝撃のジレンマに陥ってしまい、思考停止してしまったようだ。
 それを見た時、思わずレトロなマンガを思い出した。マンガよりも小説の方に造詣が深い川北だったが、1970年代の、アニメ創成期の頃の原作マンガには少し興味があった。特にその頃というと、特撮などでは、原作がマンガであっても、映像化される時は実写版というのが結構あった。今のドラマのようではないだろうか。
 その中にロボットマンガがあったのだ。人間型のロボットで、いわゆる、人造人間。アンドロイドの類であった。
 ちなみに、アンドロイドとサイボーグでは、れっきとした違いがある。それは、
「アンドロイドというのは、人間が造り上げたロボットのことで、サイボーグというのは、人間を元にして人間を強化したものである。つまり、アンドロイドは人造人間であり、サイボーグは改造人間ということになる」
 というものである。
作品名:謎は永遠に謎のまま 作家名:森本晃次