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謎は永遠に謎のまま

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 と言われるが、まさにそういうことなのだろう。
 そういう意味では、ミステリー研究会では、小説だけではなく、マンガのミステリーを読んで、それについて研究している人もいる。ミステリーなど、マンガが小説化してきたというのが顕著に表れているジャンルだといえるのではないだろうか。
 だが、それでも、
「ミステリーというのは、シャーロックホームズに始まる小説の世界でこそ成り立つのではないか?」
 と思っている人も多く、それだけ、二人も小説の世界に造詣が深かった。
 小説にはまんがにはないものがある、それは、
「想像力」
 であり、文字を拾って、頭の中で情景を考える。
 これこそが、小説の醍醐味であり、マンガで表現するには、限界があるというものではないだろうか。
 それは、残酷シーンなどは、カラーで見るよりも白黒映像の方が、ドロドロした感じで、映像作品には、残酷シーンをモノクロで表現する演出もある。
 カラーにすると、あまりにもリアルだから、放送しにくいということもあるのだろうが、逆にリアルさを表しているようで、それを二人はよく考えさせられる。
 そんな小説をイメージしていると、ドラマ化された過去の映像を見たりすると、
「やっぱり、原作の方がいいよな」
 と思う。しかし、それはあくまでも小説の世界のことであって、マンガを映像化しても、そこまでは思わない。映像が色あせないという意味ではいいのかも知れないが、結局。小説が一番だということを証明したに過ぎないような気がしてくるのだった。
 この日は久しぶりに、サークル時代のことを思い出して、バスの中で、ミステリーの話をしようということになった。最初に言い出したのは、飯塚の方で、川北は、それを受けて立つという感じだったのだ。
「トリックっていろいろあるけど、君はどれが好きだい?」
 と、飯塚が切り出した。
「うーん、そうだな。俺は、密室トリックというのが、何か好きだったりするかな?」
「密室トリックというのは、プロのミステリー作家であれば、誰もがやりたいジャンルだよね。でも、実際には密室殺人などというのは、物理的に不可能なことなんじゃないかな? だから、密室を作るのではなく、密室ではなかった時間を探して、その時間に被害者が殺されたということにしないといけないという意味で、アリバイトリックのような、時間的なものを考えるか、それとも、針と糸を使ったりして作る、機械トリックのようなものかのどちらかではないかと思うね」
 と飯塚が言った。
「うんうん、それは僕も賛成だね。それに、密室トリックというと、機械トリックだけでは弱いよね。そこに、何かエッセンスを加えないといけない気がする」
「そうなんだよ。そのエッセンスが、さらに奥を深めて、犯人や他の登場人物の心理状態と結びつくことで、エッセンスが全体を覆う芳香剤になったりするんだ。昔の探偵小説で密室を扱ったトリックがあったんだけど、そこに出てきた、心理の密室という言葉が僕には印象深いんだ」
 と、飯塚が言ったが、二人がミステリー談義をしている間に一つの取り決めがあった。
 話の中で、ある小説を引き合いに出したとして、その話をしている間、それがなんという作家のなんという小説なのかということは、言わないルールになっていた。
 気になったらあとになって聞いてみるというのは許されるが、最初からそれを言ってはいけないことになっている。そういう意味でも、二人はミステリー談義をしている時、必ずメモを持っている。気になったことを書き出すという額面上の使い方だったのだが、そのうちに、このルールのために、生かすメモとして活用するようになって、メモの使い方も少し変わってきたのだ。
 さすがにこれがミステリー研究会らしさということになるのだろうが、部員が多かったのは、こういうちょっとした工夫を皆が言い出すことで、盛り上がっていったサークルだからだろう。
 特に、飯塚と川北の二人は、よくサークルに参加していて、こういう会話を皆とよくしていた。今懐かしいといって始めたのも無理もないことで、本当は昨夜してもよかったのだろうが、これまでの自分たちの事情を話すのが最優先ということで、ミステリー会話は今日になったのだ。
 それを思い出しながら、ミステリー談義は続く。
「心理の密室か、なるほど、あの小説は確かにすごかった。さすが、日本三大名探偵の一人と言われる探偵のデビュー作だといってもいいだろう」
 と、川北は言ったが、この会話だけで、心理の密室という言葉が、どの作家のどの作品かということは、判明したも同然だった。
「俺は、あの小説もそうなんだが、戦前の話として戦後に書かれた密室で、当時、日本家屋で機械的な密室トリックはなかなか難しいと言われていたのを、見事に覆した、あの作品をすごいと思っているんだ」
 と、飯塚がいったが、川北はそれが何か分かったうえで、
「うん、俺もあれはすごいと思う。何がすごいといって、あの作品は、本当は密室になんかしたくなかったんだよな、事情があって、密室にしなければいけなかっただけで、それが却って犯人の命取りになった作品という意味で、俺はすごいと思っているんだ」
 と飯塚は言った。
(実は、この作品の今の部分、これが今回のこの話と酷似するところが出てくるわけだが、ここは一種の伏線ということを申し上げておきたい作者であった。)
「密室もいいが、俺は、トリックというわけではないが、話の内容として、あたかもたくさんの人間が死んでいるかのように見えていて、実はほとんど誰も死んでいないという設定であり、しかも、しかもその中に、表に出てきていない殺人があり、その話が微妙に絡んできていることで、犯人が想定もしていなかったトリックになってしまうというような作品もあったよな。あれが、俺の中では結構すごい作品だと思うんだ」
 と、川北が言ったが、飯塚が少し考えていた。
 きっと、どの作品なのか、考えていたのだろうが、それは無理もない。この作家の作品は、結構似たような作品がある。ただ、これは、トリックをバリエーションだと表現したその人であるだけに、似たシチュエーションは、トリックのためのバリエーションを生かすという意味もあったようだ。
「他にもいろいろなトリックがあるけど、どれがいいかな?」
 と川北が聞くと、
「そうだなぁ、一人二役なんていうのも面白いよね、たぶん、それだけでは難しいから、いかに伏線を敷くかというのが、このトリックの難しさだからね」
 という飯塚に、
「うん、それはきっと、顔のない死体のトリックといわれる、死体損壊トリックに由来するところがあるんだろうね、従来から言われていることを覆すという意味で、センセーショナルだった」
 と川北がいうと、
作品名:謎は永遠に謎のまま 作家名:森本晃次