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後味の悪い事件

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 まあ、もっとも、次代が異常だったから、このような科学者が生まれたのかも知れない。彼らは純朴に、愛国心だけで動いていたのかも知れない。少なくとも、今の日本における、かつての無能で自分のことしか考えていなかったソーリ二人には、この当時の科学者の足元にも及ばないというのは、間違いのないことだろう。
 それを考えれば、
「自分たちが何をしなければいけないのか?」
 ということも、大学の講義では重要なことであるのだった。
 ただ、最近では、大学の講義も大切だが、もっとリアルな問題が起こっていた。パンデミックによって、アルバイトがなかなかできなくなり、金銭的に困窮してしまったことだ。
 田舎から出てきているので、そのための生活費と、学費を少しでも家族に負担を掛けられないに、今のようにバイトがないと困っていたところで、飛びついたのが、配送員の仕事だった。
 この仕事は、いくら配達してなんぼという世界だった。この街には、思ったよりも、需要が多いようだ。実際に、住宅街の割には、ファストフードの店や、弁当のお店とかも結構多い。たぶん新興住宅のため、作業員や、近くの事務所の人に需要があったのだろう。建設が終わったあたりも店を撤退させることなく営業していると、結構客が入っているようだ。
 それは、学校であったり、修行施設などがたくさんあるからで、住宅街そのものよりも、そこに隣接するいろいろな施設などの従業員のためというのが一般的なのだろう。
 おうち時間が増えると、学校も休校になったりする。親は仕事を休むわけにはいかないということで、子供の食事は必然的に、クーパーイーツになるのだ。
 学校が休校なのに、生徒が友達の家に行ったり、表で食事をするというのは本末転倒であり、学校からも厳しく言われていて、下手をすると、警察から職質があって、学校に通報されるということもあるだろう。
 学校もそのことは生徒や父兄に伝えている。当然、プリントにして、
「通知」
 という形で知らせているに違いない。
 そうなると、食事は、クーパーイーツに頼るしかないだろう。
 そんなこんなで、どうしても、需要は増えるのだ。
 ただ、この現象はこの街だけではないだろう。しかし、ここで言いたいのは、ファストフードの店を、開発が済んだ地域でも、閉鎖せずに残しておいたことが、元々どういうつもりだったのか分からないが、功を奏したといえるだろう。
 それを思うと、この街での、クーパーイーツの売り上げ、さらにファストフードの売り上げなどは、かなりあるに違いない。
 しかも、この街では、専門のお店、例えば、和食や中華、フランス料理の店など、品目、数量ともに限定ではあるが、
「宅配用」
 としてメニューを作成し、時短要請に対しての対策を、他の地域に先駆けて行っていたのだ。
 そんな噂を聞きつけて、テレビの取材などがあったことで、この街を、モデルケースにしようという話もあったくらいだ。
 そういう意味でも、今度のパンデミックは、全世界でも、日本中でも、この街でも、大きな痛手であったが、その痛手が一番少なかったのは、この街だったといえるだろう。
 だからこそ、
「やり方によっては、マイナスだってプラスにできる」
 という教訓として、モデルにしようとして、研究にやってきた自治体や、チェーン店の企画部の人などが取材にくることが多かったのだ。
 この街でも、せっかくの取材なので、快く引き受けた。
 今までは新興住宅ということで、ほそぼそとやっていた。しかし、時がくれば、街の宣伝を行っていこうとは思っていたのだ。
 ただ、その時は、そう簡単に訪れることはないだろうということで、余裕を持っていたが、意外な形で早めに訪れたのだ。
「この機を逃すことはない」
 ということで、世間の注目を浴びるためのいい機会ということで、取材にも積極的に受けることにしたのだ。
 もちろん、最初は、
「バックに坂巻グループがついている」
 などということは伏せていた。
 しかし、どうしても取材の中で、それを相手が指摘してくることもあったが、それをあえて否定するようなことはしなかった。むしろ、
「坂巻グループがついていてくれることで、体制が一元管理できるというメリットもあり、各会社間の横のつながりがうまく行き、情報伝達や共有がうまく機能し、今のような、一本筋が通った強い自治体になることができたんです」
 と宣伝した。
 確かに、金の流れなどを気にする人もいるだろうが、今は世界的に非常事態なのだ。そんなことを言っているよりも、成功例などをどんどん示し、パンデミック後の経済復興をいかに成し遂げるかということが大問題なのだ。
 今の政府は、医療にも経済にも中途半端で、
「二兎を追う者は一兎をも得ず」
 のたとえのように、どちらも成果を上げられず、国民の期待を裏切り続け、もう誰も政府など信用していないという状態になった。それこそ、政府の
「自業自得」
 なのである。

                 留守宅

 松岡君は、マンションの到着すると、まずは、正面玄関から中に入って、エレベーターを使って、依頼があった5階へと配達しようと考えた。このマンションは法地にできているマンションなので、少し特殊なつくりになっているところが特徴だったのだ、
 マンションの正面玄関から、自動ドアで中に入ると、正面には、2基のエレベーターがついていた。
 マンションは八階建てになっているが、川の土手が分かる見ると、一見、八階建てには見えない。
「六階建てなんじゃないのか?」
 と思うだろう。
 というのは、土手側は、川の増水を防ぐための防波堤の役目もしているので、少し高い位置に面している。
 そのため、このマンションの入り口をいうのは、実際のマンションの1階部分にあるわけではない。こういうつくりをするのが、法地の特徴でもあった。
 ロビー部分は正面玄関を入ってから、左に管理人室と受付がある。基本は隣に管理人室があるので、管理人が、受付に不在の時。用事がある人などは、受付をのベルを押すと、管理人室に繋がるので、管理人がいる時は出てきてくれる。
 もし、管理人が買い出しや別の事情などで不在の時は、受付の上に、
「只今管理人は不在です」
 と書かれたプレートが架けられていることになっている。
 もし、小包のような郵便物で、部屋の住人が不在の時などは、管理人がいる時は預けておくということもできるのだ。
 ただし、あくまでも管理人がいる時であり、必ずいつもいるとは限らない。
 留守宅の場合は、郵便配達員が、部屋の扉のポストに不在通知を入れておいて、それを見た帰宅後の住人が管理人のところに行き、管理人から荷物を受け取るということもできるようになっている。もちろん、限られた時間ではあるが、これも管理人の重要な仕事になっていた。
 実は、なかなかオートロックにしないのは、こういった細やかなサービスがなくなることを住民が嫌ったというのも、一つの理由であった。
 このマンションは、結構昔からの住民が多く、そのほとんどは、十年以上暮らしている人も多いという。
作品名:後味の悪い事件 作家名:森本晃次