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後味の悪い事件

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 本当はあまり賑やかになるのは困ったものだと思っていたが、それでも、少々であれば、仕方がないと思っていたものが、ここまで近未来のような土地になってしまったことで、却って、自分たちが最先端の街にいるという自覚で、ある意味新鮮な気がした。このあたりの心理をうまく揺さぶることのできる人が、坂巻グループには、結構いたのだった。
 そんな振興住宅街に、支店を作る会社も結構あった。
 営業所や、事務所を設けて、ここを拠点に営業戦略をする会社が多いのは、それだけ、坂巻グループのやることに、間違いはないということが、業界で定着した考えになっていたからであろう。
 坂巻グループにおいて、この街の住宅事情を一手に引き受ける会社があって、その会社がグループ化しているのだが、その中にゼネコンであったり、不動産であったり、水道、ガス、電気などのライフラインの代理店のようなところが傘下としてあった。
 坂巻グループは財閥のような大きなグループをまとめる経営戦略のトップがあり、そこから、それぞれの事業を取り仕切るグループ会社トップがあり、その傘下に、それぞれの業界としての企業が存在する。ピラミッド型の財閥と言っていいだろう。
 住宅事情関係の不動産で、マンションが乱室している地域を収めている会社があったのだが、このあたりは、どうしても、山の麓に建物を作る関係で、法地のマンションが多かったりする。
 なるべく、住みにくくないようにしていたのだが、ここ一年くらいの間にできたマンションの中で、すでに部屋数の8割がたが埋まっているところがあった。
 他の地域ではこうはいかない。駅の近くに高層マンションを作ったとしても、半分でも埋まればいい方だった。
 理由としては、
「駅に近いのはいいのだが、その分、家賃も高い。これが分譲マンションともなると、普通のサラリーマンでは手が届かない」
 というのが、理由だった。
 特に分譲ともなると、条件としては、
「転勤のない人」
 であり、転勤があったとしても、県内というような、公務員であったり、地元地場産業の会社に勤めている社員くらいであろうか。
 そんな人たちにとって、駅前のマンションは、かなり厳しいだろう。特に経済の回復の見込みが、他の先進国に比べて見えてこず、目に見えて分かる給料のベースアップが、ほぼないに等しいとなると、計画を立てることなどできるはずもないというものだ。
 そんな状態であるのに、この街での入居が結構あるというのは、価格的に、計画の範囲内で、十分賄えるだけのものであると、購入者が納得したからだろう。
 もちろん、不動産会社の、営業トークがうまいともいえるのだろうが、それを差し引いても、安心安全が担保されているほど保証も充実しているのが、購入意欲の背中を押したに違いない。
 そんなマンションの一つに、プラザコートというマンションがあった。そのマンションで起こった事件がこのお話になるのが、いよいよ次章から、詳しく語っていくことになるのであった。

                 クーパーの配達員

 ここ最近では、例の伝染病の流行りから、世の中は自粛ムードになり、感染者が増えると、政府も自治体も、
「緊急事態宣言」
 であったり、そのひとつ前の段階での、
「蔓延防止特別法」
 なるものを発令することで、人流を抑え、さらに、、飲食店を中心に、時短営業や、休業要請を行ってきた。
 それによって派生してきたのが、
「宅配による食料や日用品などの、生活必需品の提供サービス」
 であった。
 特に、食材や、出来上がった食品などを自転車などで配達するという、
「クーパーイーツ」
 なるサービスが流行っていた。
 元々、ピザの配達や、食材の配達などの業者は昔からあったが、ファーストフードやファミレスなどの料理をそのまま配達するというやり方は、この時代にあった、画期的なものだったのだ。
 まず、クーパーイーツの会社が、ファーストフードや、ほか弁屋、ファミレスなどのメニューの入ったカタログを一般家庭にポスティングして、会員を募るのだ。
 そして会員になった人は、カタログを見て、注文をする。電話注文であったり、WEBからの注文などで行い、今度は、それをファーストフードなどに、注文を入れる。
 もちろん、最初から宅配会社とそれぞれのファストフードの店とは契約済みだ。
 なんといっても、ファストフードは、自分で配達しなくても、配達業者に頼むことで、配達してくれるのだから、これほど楽なことはない。少々の配達料を取られたとしても、それは、売りえ峩々上がることで、しっかり元が取れるというものだ。
 クーパーイーツ側は、配送員のアルバイトに指示を出す仕事になる。後は配達員が動いて、宅配してもらえるというものだ。クーパーイーツ側は、配達料を、会員からと、店からもらうことで利益を得るという仕組みだ。
 今実際に行われている他の食料宅配などの仕掛けと同じかどうか分からないが、少なくとも、かなり早い段階で坂巻グループは手掛けていたので、オリジナルのやり方であった。
 ただ、いろいろな諸問題がないわけではない。その一つが、アルバイトのマナーであった。
 確かにアルバイトを雇って、配達させるというのは、画期的なことだが、半分は歩合制のため、急いで数をこなすというのが、問題になる。そうなると、自転車の運転が荒くなってしまい、歩行者や車との接触やトラブルがどうしても付きまとってくる。
 中には、同じような会社の中には、トラブルが絶えないことで、結局信用問題となってしまったことで、事業から撤退しなければならなくなったところも少なくないと聞く。
 全国展開をしているような大企業ではそんなこともないかも知れないが、それでも、トラブルは絶えないなど、テレビのワイドショーで社会問題だということによるニュースが毎日のように叫ばれていた。
 しかし、今のような自粛による、いわゆる、
「おうち時間」
 というものが習慣になってくると、このような形態の商売は、どうしても必要になってくるので、絶えることのない事業だと言ってもいいだろう。
 そんなクーパーイーツのおかげで、ファーストフードや、ほか弁屋などは、十分に潤っている。テレビでも宣伝をしていて、全国展開の店も、いくつかあるようだ。
 この坂巻グループの街では、さすがに他の会社が入り込む余地はなく。宅配は、一手に引き受けられていた。
 その分、会社も県全体を網羅していたが、坂巻グループの街の売り上げは、全体の三分の一を占めるに至っていた。
 配達員もかなりいて、ランチタイム前など、同じマンションに数人の配達員が重なることも珍しくなく、皆軽く挨拶をして、配達に勤しんでいるのだった。
 プラザコートにも利用客は結構いて、玄関で配達員同士鉢合わせなど、何度もあったことだった。
 このマンションは、比較的最初の頃にできたマンションだった。
 というのも、坂巻グループが進出してくる前から、ここに建っていた、数少ない既存マンションの一つで、そのせいか、オートロック形式のマンションではなかったのだ。
 新興住宅として後から坂巻住宅が建設したマンションは、オートロック完備になっていた。
作品名:後味の悪い事件 作家名:森本晃次