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後味の悪い事件

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 として、諸外国から入ってこないようにすることなのに、なんと、
「パンデミック発症の国」
 というのが分かっていたその国の国家元首が、来日するということになっているからと言って、その国の外人どもを受け入れるようなことをしてしまったことで、流行に拍車をかけた。
 普通であれば、自殺行為である。
 そこから先は、結局誰も使わないマスクを配布したり、動画を作成し、コラボということであったが、コラボされたミュージシャンは、
「聞いてない」
 ということで、世間からは大バッシングを受ける。
 その映像が、犬を抱いて、微笑んでいるという、映像で、この間にもどんどん人が死んでいたというのに、実に不謹慎極まりない状態だった。
 そして、この男は、歴代通算首相在任期間が一位になったとたん、その三日後に、なんと、またしても、
「病気」
 と称して、病院に逃げ込んで、政権を投げ出したのだ。
 一国の、しかも先進国の首相が二度も同じ下種な方法で、逃げ出すというのは、前代未聞である。
 なんと言っても、有事に落ち言えれば、そんなにクソ政権であっても、支持率は普通なら上がるものである。アメリカや欧州各国でも、首脳は、支持率を上げていた。それなのに、このクソ首相は、支持率を下げたのだった。
 そして、この男に輪をかけたのが次のソーリだった。
 官房長官からの横滑りのような形で、ソーリに推されたが、最初は、元の首相が最低なことをしたので、その後継ということで、期待値を込めて、就任時はかなりの高支持率だったのだが、伝染病政策で、何ら実績がなく、いたずらに感染が広がっていくばかりになった。
 支持率は急降下。
 そしてなんといっても、一番の問題は、当時、オリンピックを自国開催するのだが、国民の大多数が、
「開催反対」
 と言っているのに、それに対して、強行突破で開催に踏み切った。
 そのせいで、国民からの信用は地に落ちてしまったのだが、そんな時に勢力を盛り返すはずの野党もひどいもので、こんな政府を批判だけして、何ら代替え策を出してくることはなかった。
 それが世間で批判を浴び、政治不信に拍車をかけたのだ。
「今の政府も嫌だが、野党に政権交代などすれば、その瞬間に、国が亡んでしまう」
 とまで言われた。
 それでも、衆議院の解散時期が近づいてくると、責任政党内で、現首相を推す人はなく、重鎮からは、
「支持しない」
 と言われ、泣く泣く、党首選への立候補を辞退したのだ。
 そもそも、この首相は、
「衆議院選までのただの繋ぎ」
 と言われていたはずなのに、何もできないくせに、首相になったとたん、自分は偉くなったというとんでもない勘違いをしたことが、間違いの元だった。
 重鎮からすれば、
「操りやすい首相」
 だったはずだが、思ったよりも、独裁の意思が強かったようだ。
 そのせいもあって、今度は、今までと一味違った首相になり、国民も一縷の望みを託しているようだが、果たしてどうなのか?
 国民の人気は今までに比べてあるが、果たして力はあるのかどうか、それが問題なのであろう。
 まだ、完全に伝染病が終息できているわけではない。これからの政治によって、国の荒廃がハッキリしてくる。正直、今の政権では、今までに比べるとマシなのだろうが、乗り切ることができるか、まるで薄氷を踏むようなものだった。
 そんな中であるが、目立たないまま、坂巻財閥をバックに、政治参加している政治家は、政治に対して積極的ではない。
 ただ、影響力はかなりあり、昔でいえば、元老のような地位と言ってもいいだろう。
「首相の影の相談役」
 という噂もあるが、正直、目立つことは決してしない。
 本当は、そんな人物こそ、首相にふさわしいのかも知れない。
 しかし、派閥の属しているわけではないので、派閥中心の政党なので、力が正直あるとは思えない。
 そんな目立たない中で、力は相変わらずで、
「陰で国を動かしているフィクサーではないか」
 とウワサがささやかれているが、真意のほどは、誰にも分からない。
 ただ、影響力が十分にあるのは間違いないことで、派閥に所属しているわけではないのに、国会議員のほとんどが、坂巻議員に相談していたりした。
 温厚で目立たないタイプであるが、さすが坂巻家の血を引いているだけあって、先見の明に関しては、先祖に負けないくらいのものがあった。
「こんな人が首相にどうしてなれないんだ?」
 という素朴な疑問を抱く政治家も少なくない。
 やはり、今の重鎮とすれば、坂巻は、
「出る杭」
 ということになるのだろう。
 そんな時代を今までしたたかに生きてきた重鎮たちと、坂巻議員。それぞれに力を持ちながら、けん制し合っている。それが実は坂巻議員の目論見であり、
「国家の存亡の危機に、重鎮が目立って、先頭を切るというのは、いかがなものなのだろうか?」
 と思っていたので、けん制役を担っていたのだった。
 それが功を奏してか、首相も、重鎮の顔色を伺うことなく、ある意味延び延びを政治をしている。
 これがどのような結果をもたらすかは分からないが、
「これこそ、新しい政治の仕組みではないか?」
 という専門家もいる。
 坂巻議員の役割は、見る人が見れば、実に大切なところであった。特に野党が、まったくあてにならないこの時代、本当に救世主と言えるだろう。
 ただ、そのせいで、与党の力が強大になっていくのは、大きな問題だった。それでも今は有事であるがゆえに、今までの政権のような、
「自分さえよければ」
 という政府にウンザリしている国民の信頼を取り戻す気概がほしいものであった。
 そんな時代であったが、この街のプロジェクトは、すでに、パンデミック前から始まっていた。途中で中止するわけにもいかず、少し先が読めないという不安もあったが、継続することにした。
 それでも、大型商業施設では、完全対策にも大いにお金をかけて、安心を市民に与えることを最優先としたことが最大の魅力であった。
 そのおかげで、他の地区で買い物をしていた人も、こちらが安全ということで、最初にこっちに来るようになると、少し感染ピークが収まっても、今後のことを考えると、前のところに戻ろうとする客はあまりいなかった。
 そういう意味での、
「先見の明」
 は確かなものがあり、上層部の皆が、同じ考えの元、ブレずに進んできたことが正解だったといえるだろう。
 街の整備も進んでいく。
 何しろ、政界に顔が利くグループの会社なので、自治体も協力を惜しまない。交番や郵便局、公民館や公立の学校などの整備は着々と進んでいった。
 住宅の売れ行きと、インフラや公共施設の整備は、しっかりできてきて、商業施設は少し遅れる形にはなったが、それも、想定の範囲内であった。
 計画が遅延することなく、街が出来上がってくると、そんなに整備等も変わっているわけではないが、何か、近未来の街のように住民が感じるのは、最後まで開発されずにいた土地をずっと見てきたからであろうか。
「やっとこのあたりが日の目を見るようになったか」
 と、以前から住んでいて、過疎地のようになりかかっていたのを心配していた人たちである。
作品名:後味の悪い事件 作家名:森本晃次