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後味の悪い事件

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 今でこそ、同族会社になってしまったが、戦後の混乱から、カリスマ的な一族が出現し、何とか、会社を存続させることで、そのまま、高度経済成長に乗っかったのだ。
 一族の長に、そんな時代で自分たちが一番としての能力を発揮し、一気に、大企業へと上り詰めた。
 その時に、たくさんの財産を留保することで、いずれやってくる、不況や、バブルの崩壊を乗り切ってこられたのだ。
 彼らの才能は、
「お金は使う時は使い、貯蓄する時は貯蓄する」
 という当たり前であるが、それが一番難しいということに関しての才能が、天才的だった一族なのだ。
 お金の貯えもそうだが、惜しみなく住民のためにお金を使うという、太っ腹なやり方は、地元の人気を十分に博し、その影響で、政治の世界にも乗り出していった。
 家族の中の誰かは、いつも必ず政治家で、さらには、財界にも人員を送り出していることで、政財界に顔が利くという意味で、
「財閥級だ」
 と言ってもいいだろう。
 そんなグループが、今までかたくなに売ろうとしなかった土地を売ったのには、何かの思惑があるのではないかと言われていたが、住民が反対するわけもない。
「きっと何かの考えがおありなんだ」
 と、住民も今までは、近くに大型商業施設や、新興住宅がなかったことで、田舎街扱いを受けてきたが、それはそれでいいと思っていた。
 それが急に180度変わった政策に出た会社が気にはなったが、誰も心配をしている人はいなかったのだ。
 街が出来上がるまで、それほど時間が掛からなかった、何しろ、開発関係は、元々の同族会社ですべてを賄われたので、難しい商談など存在しなかった。そのおかげで、結構急ピッチに進み、インフラの整備も同時に行われたことで、街は、
「理想のモデル」
 と言われるほどになっていた。
 この同族というのは、祖を坂巻弥之助という人物で、明治の元勲だった人だが、戦前までは、さほど表に出てくるわけではなかった。
 他の財閥のように表に出ると、どうしても、政府というよりも軍に操られることになる、坂巻弥太郎という人物は軍による国の支配は、そうは長く続かないと思っていたようだ。
 だから、地道に目立たずに商売を行い、資金を貯めることに終始した。そんな彼が坂巻家を大正時代なって息子の弥太郎に譲ると、昭和の混乱期に、大恐慌が巻き起こり、さらに、戦争の足音が響いてくると、彼は、現金だけではダメなことを感じ、物資も掻き集めるようになった。
 そのおかげで、戦後の新円の切り替えなどの経済混乱を何とか乗り切り、会社を設立することによって、ゆっくりではあるが、大企業にのし上がっていった。
 そして、次代の息子に会社を託すと、三代目の弥一郎が、解体したが、いまだに強大な勢力のあった財閥をに匹敵するだけの力を持った。
 彼は、ゼネコンと、金融、つまり銀行を開くことで、財界と政界とのパイプを強固にし、特に、オリンピック景気や高度成長時代において、勢力を伸ばし、そのゆるぎない力を昭和で確固たるものにしたのだ。
 しかも、弥一郎は、バブル経済に早々と見切りをつけ、他の企業のように、教務拡大には慎重で、そのおかげで、バブルにおいて、それほど大きな被害はなかった。
 バブル崩壊においては、
「銀行は絶対に潰れない」
 という銀行神話があったが、それも、すでにバブル期から疑問視していた。
 だから、彼は過剰融資などは絶対にせず、バブルになって、不良債権を抑えることができた。
 だから、逆に危ない銀行を吸収合併して、どんどん会社を大きくしていったのだ、
 バブル期において、さすがに会社を大きくすることはなかなか難しかったが、その分、体力のある会社として一躍有名となり、元々大企業であったが、さらに強さまで兼ね備える会社になったのだ。
 これを機に政界にも立候補する人も出てきて、政財界とのパイプはさらに大きくなり、地元をはじめとして、大いなる信頼を勝ち取り、今に至っているわけである。
 だが、さすがに今回の、
「世界的パンデミック」
 を予想することは、預言者でもなければできることではなく、会社も設立以来の危機に直面はしていたが、バブル期の教訓と、その時に強くなった強靭な体力により、何とか乗り越えているのであった。
 今回の、この街の巨大なプロジェクトもその一環で、土地を売りはしたが、その売った会社も、財閥の息のかかった会社ということで、結局は、国家の資金も投入されるということで、街の信頼性も、
「国家お墨付き」
 となったわけだ。
 だが、実際には、国家お墨付きと言っても、その言葉に説得力は皆無であった。
 それはある意味当然のことで、今の政府の人気、さらには、支持率は最低を維持したままであった。
 元々、パンデミックに陥った時の、政権のトップである、首相には、三つも四つも、疑惑があり、それに対しての説明がまったくなされないまま、首相を続けていた。
「他に誰もなり手がいない」
 というただそれだけで、政権のトップにいるだけの男だったといってもいいだろう。
 しいていえば、世襲によって、代々続く政治家家系に生まれたために、地元で人気があることで政治家になれただけの男が、
「何を勘違いしているんだ」
 と言ってもいいくらいの、力だけは持っていた。
 それは、今の責任政党が、派閥政治であり。
「数に物を言わせる」
 とでもいうのか、そこに財界も乗っかろうとすることで、こんなろくでもない男が首相を続けるという時代だった。
 この男は、今回2度目の政権で、第二次内閣と言ってもよかった。
 だが、1回目というのは、今から10年以上前の政権であり、その時は、
「病気」
 と称して、病院に逃げ込んだのだ。
 都合が悪くなると、病院に逃げ込み、病気と称して、責任を果たさずに、
「政権を投げ出した」
 ということは、犯罪に当たらないのだろうか?
 その男のせいで、それから少しして、50年以上続いた、
「一党独裁」
 が崩壊し、政権交代が起こったのだ。
 交代した政権が、さらにクソだったこともあり、5年と持たずに、また、政権が元に戻だった。
 しかも、こともあろうに、その時の当主が、例の、
「政権を投げ出した」
 あの男だったのだ。
 またしても、あの男がソーリとして君臨し。世の中をメチャクチャにすることになった。その奥さんが、この男に輪をかけたクズで、さらに、
「世間知らず」
 であったことが、夫の首を絞めることになるのだが、それをこのバカ夫婦は何とか、説明責任を逃れて、自分がソーリであることに胡坐を掻いて、野党の追及が強くなると、責任を部下に押し付け、結局部下が自殺するという悲劇を生んだのだ。
 それでも、このクソ男は、
「この件については、話がついている」
 とばかりに、煙に巻いてしまった。
 元をただせば、自分が国会で、
「この疑惑が本当であれば、私は首相はおろか、国会議員も辞める」
 などと、無責任な発言をしてしまったことで、最終的に自殺者を出すという、悲劇を生むことになったのだ。
 そんな中で、パンデミックが起こる。
 政府は、無能さを露呈させ、政策は後手後手に回る。
 伝染病の最初に政策の鉄則は、
「水際政策」
作品名:後味の悪い事件 作家名:森本晃次