小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

後味の悪い事件

INDEX|1ページ/26ページ|

次のページ
 
 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和四年二月時点のものです。

               法地マンション

 世間では、河原にある土手や、山間の麓から、斜面になったところに建っているマンションや宅地などを見ることがある。どのような構造になっているのかは、不動産屋や、マンションの管理会社、実際にマンションを作る、土建屋さんなどにしか分からないだろうが、キチンと、法律があり、それにのっとって建設されているのだから、そこは別に問題ないだろう。
 そういう、基本的に宅地として利用できない、盛土や切土のようなところを法地というが、そんな斜面に建てられたマンションも、結構存在したりする。
 前には海があり、後ろにはすぐに山が迫っていて、山にもマンションを作ったり、一級河川の土手になっているところにマンションがあったりする。
 一級河川の土手にマンションが建っている場合は、後から土手を作ったのではないかと思うのだが、そのあたりも、そこまでは分からなかった。
 そういう意味で、法地にマンションが乱立しているようなところは結構あるのではないかと思っていたが、あくまでも、その土地の特性ということなので、他の地域に多いかどうか、疑問であった。
 ただ、傾斜の多いこの土地に、法地のマンションは結構できていて、山のすそ野から、中腹くらいまで、結構たくさんのマンションが立ち並ぶようになったのは、いつ頃からだっただろうか? 近くには、分譲住宅の新しい造営地区があり、高級住宅街として、分譲が開始されて、今は、ほとんどの家が埋まっていた。
 その区域には、学校やショッピングセンター、スポーツクラブなどの、生活やコミュニティー、さらに文化振興のための施設もたくさん作られた。
 警察署の分署や、郵便局も作られ、行政も徐々に活動していく。
 この辺りは、元々、家を作るのは困難な場所で、マンションや、公共施設など、建設が難しいと言われてきたが、建設能力が発展してきて、山間でも、安全な建物が建設できるようになってきた。
 2000年代から、徐々に建物が増えてきて、令和になる頃には、たくさんのマンションもできてきた。
「30年遅れたけど、立派な街が出来上がってくるな」
 と言って、地域振興に、この新興住宅街の発展が大きな期待をかけられるのだった。
 さらにこのあたりには、近くプロ野球球団の寮や、練習施設が、海沿いの方から移転してくることになった。
「土地はいっぱい余っているので、ここにプロ野球の練習施設が誘致できれば、たくさんの人流が増えて、地域振興に一役買うことになる。これは球団にとっても、街にとっても、両方にメリットがある」
 ということだった、
 実際に、この話ができて、それまで、ゆっくりだった国道や、鉄道の駅の検察計画が、一気に加速したのだ。
 球団の練習施設が移転してくる前には、インフラ整備が必須だということで、県や自治体の方でも、その威信にかけて、本格的に乗り出したのだった。
「地元の球団で、非常に人気のある球団なので、練習施設ができると、ファンがどっと押し寄せる」
 ということで、街の方としても、観光キャンペーンの一環として、部署も作られ、プロジェクト化することで、グッズや、街のシンボルのマスコット化なども研究されていった。
 実際には、山岳部分をある程度切り開く形で、建物や施設の造営も行われ、少々費用もかさむが、
「いずれは関わらなければいけない課題でもあったんだ」
 と、市長もそう言って、地域振興に、市と県が連携しての開発に乗り出していたのだった。
 郊外型のショッピングセンター建設も、そこに入るテナントもすぐに集まった。それらは、練習施設の近くに作られることは決まったのだった。
 元々、この辺りは、以前から不動産屋さんあたりから目をつけられてはいたのだが、このあたりの土地を一手に握っているのが、地元の昔でいうところの網本、つまり、領主のようなところであった。
 一族が、昭和からずっとこのあたりの経済を支えていて、住民のほとんどが、何らかの恩恵を受けているという形だった。それこそ、昭和の時代がタイムスリップしてきたようで、古臭いといわれるかも知れないが、いまだにそういうところが残っていたのである。
 だが、時代の流れというものには逆らえないというか、ずっと世襲でくると、息子、孫、曾孫と受け継がれていくうちに、現代的な考え方になっていったり、経済的な問題が、社会問題にまでなると、そうもいっていられなかったりするのだ。
 一番のきっかけは、やはりここ数年においての大問題である、
「世界的な大パンデミック」
 により、いくら巨大な企業であっても、危なくなってきているのだ。
 バブルが弾けた時、リーマンショックの時は、何とか乗り越えられたが、さすがに相手が伝染病では、どうしようもない。
 事業の縮小も致し方なくなっていて、実際にこの土地を持て余していたというところもあったので、今の当主が、売りに走ったのだ。
 その代わり、最大限に口出しをし、スーパーやテナントなどは、同族企業である程度まとめるようにしていた。
 損をしないというのが、一番の目的なので、それも当然のことである。
 企業としても、スーパー業界では、日本一の業績がある。同業他社をどんどん吸収合併し、大きくなっていった。テナントも同時に買収しているので、最近できた郊外型の大型商業施設は、ほぼどこも同じ形で、まるで、テンプレートが数種類あって、必ず、そのうちのどれかに合わせているという形であった。
 土地関係にしても、同族会社の不動産屋、さらには土建屋で固めているので、実質、土地は売っても、財閥並みの大きな会社に、自治体ごときでは、太刀打ちできないというところであろうか。
「転んでもただでは起きない」
 というのが、うちのモットーだ。
 と言わんばかりであった。
 この財閥級のグループ会社は、結構庶民のために、金は使っていた。
 県や、地元の自治体が、伝染病関係のために、人材や施設の建設を急ぐような状態になると、ポンとお金を出して、福祉や医療に貢献していた。
 だから、自治体は、彼らの会社に頭が上がらないわけだ。
 贈収賄くらいは、あるのかも知れない。しかし、それでも、自治体は彼らなくしてはやっていけない状態であった。
 そもそもこの会社は、財閥級とは言いながら、のしがってきたのは、戦後である。財閥が解体され、そのトップの連中が結集して作り上げた会社だった。
作品名:後味の悪い事件 作家名:森本晃次