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起きていて見る夢

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「実はね。いきなりで悪いんだけど、明日、松阪君、何か予定ある?」
 と言われて、
「明日? いや、別にないけど」
 と、心の中では、
「本当にいきなりだな」
 と感じていた。
「じゃあ、申し訳ないんだけど、明日、私の実家のある街まで来てくれるかな?」
 というではないか。
「えっ、それはどういうことだい?」
 まったく話が見えない。
 何を言いたいのかというよりも、普通、
「このようなことをいきなり言い出す女の子だっただろうか?」
 と感じたが、考えてみれば、りほという女の子は、確かに自分から言い出すような女の子であった。
 融通が利かないほど真面目なところがあるかと思うと、急にいきなり、自分だけ素っ頓狂な話を初めて、まわりを引っ掻き回すようなこともあった。
「りほほど、両極端な性格の人もいないよな」
 と思ったほどだ。
 確かに女性というと、男性よりも極端だとは思っていた。
 性格的な面よりも、思春期では肉体的な違いが、致命的なほど男女で違いを感じさせる。
 今の令和の時代のように、男女平等の時代では、少しでも、女性蔑視であったり、劣等生を感じさせるようなことを、したり言ったりすれば、すぐに、
「セクハラだ」
 と言われてしまい、
「これほど実に生きにくい時代もあったものでもない」
 と思わせた。
 ネットの普及によって、ちょっとしたことが、すぐに世間に拡散されてしまう。一歩間違えれば、社会的地位を失いかねないそんな時代とは違い。今では言わなくなった、
「看護婦」
「婦警さん」
「スチュワーデス」
 などという言葉、女性から見ても、憧れの職業だったはずなのに、言ってはいけないというわけではないが、世間の風潮が、
「いってはいけない」
 ということになっているのは、実に寂しいことであった。
 思春期というと、どうしても、時代として男女の差が開いてしまうことではないか。男女雇用機会均等法が悪いわけではないか、言葉を使用不可にするほどのものなのかと、正直感じていた。
 それにしても、いきなりで、今までの彼女を見ていれば、普通ならそんなことを言い出す女の子ではないと、他の人なら思うだろうが、松阪は最初は驚いたが、すぐに冷静になると、
「りほらしいともいえるかな?」
 と感じた。
 ただそれはあくまでも、
「りほの性格を分かっている」
 という意味でだけで、決して、ホッとできる内容ではなかった、
 むしろ、気になることであり、それだけ彼女が、
「何かで切羽詰まっている」
 ということである。
 というのも。普段はあまり人に頼る方ではなく、頼みごともしない。
 それだけに、おとなしい性格に見えて、決して目立つことはない。だが、たまに弱弱しく見えたり、フラフラしている時がある。そんな時が危なっかしいのだ。
 寂しさが極度になってくると、人恋しくなるようで、
「私、男に騙されやすいのかも知れないわ」
 と言って、笑っていたことがあった。
 ひょっとすると、彼女の結婚の話も、実は騙されたのかも知れない。
 それは彼女自身の問題ではなく、家族が相手側に騙されたか何かして、彼女の人生が狂ってしまったのかも知れない。
 彼女は、決してそんな時、親に少しは文句をいうだろうが、むやみに逆らったりはしないだろう。彼女は結構したたかなところがあり、
「これで、親に貸しができた」
 というくらいに感じているかも知れない。
 もちろん、それは勝手な想像だが、この三日間一緒に過ごしていて、家族の話が出た時、
「あの人たち」
 などという一見他人行儀であるが、完全に上から目線で、しかも、他人事に見えたことから、親に対して、何か絶対的な立場を持っているだろうと感じたのだ。
 その内容は、彼女の口から、教えてもらった。
「田舎に帰ってから、結婚する予定だった」
 ということから分かった気がした。
 どの時点で破局し、どのような形になったのかは分からないが、親の勇み足だったのだろうということは想像がついた。
 そんな状態において、それでも、家から出ようとはしなかったのだから、絶対的な優位を持って家にいる方が得だということになったのだとすれば、彼女のしたたかな面から、よく分かるのだ。
「人に頼ることと、今回のことは違う」
 と思うことで、いずれは家を出ようと思っているかも知れないが、とりあえず今は家にいることにしたのだろう、
 仕事は、地元の小さな事務所で事務員をしているという話だったが、気楽に仕事をしながら、結婚相手を探しているのかも知れない。
 彼女は雰囲気的に、一見美人タイプに見えるが、それはおとなしくしているからであり、たまに、自分がまわりの中心にいなければ気が済まないような時があり、そんな時の彼女の笑顔は、幼く見えて、可愛らし系になっているといえるだろう。
 この松阪の想像が当たっているとすれば、彼女は、今何か自分の中で問題を抱え、普段は相談をすることもなく、一人で何とかしようとしているところ、自分だけでは解決できないことが勃発し、松阪を頼ってきたのではないだろうか。
 だから、松阪とすれば、
「明日は、行ってあげなければならない」
 そう思い、
「自分の想像が外れていることを願う」
 と、翌日は自分の行動が無駄足になってほしいというくらいに感じた。
 一年生の頃、彼女との関係は、いつもこんな感じだっただろうか。よく相談をされ、何かあった時に呼び出され、いつも、無駄足だったことを思い出した。
 その時電話がなければ、きっとそのことをずっと忘れていたことだろう。
 そう思うと、自分が、彼女にとって、
「願いを叶えるナイトのようなものだ」
 ということだったのを思い出した。
 そして、その願いは、そっくりそのまま、何もないことを願うことに繋がってくるのだった。
 その日、松阪は、いつもより早く目が覚めた。約束の時間までかなりあるにも関わらず、一度目が覚めて、早いからと言って二度寝してしまうと、寝過ごしてしまうという気がしたからだ。
 幸いにも、目が覚めた時間は、普段の朝よりも少し早いくらいだったので、そのまま目を覚まし、シャワーを浴びた。自分でも何を考えているのか分からないまま、入念に身体を洗った。
 何かを食べようとは思わなかった。普段から朝食は摂らない。
 実家にいる頃、あれほど、朝食というと、毎日、嫌というほど、判で押したような、
「ごはんとみそ汁」
 正直、すぐに飽きてしまった。
「なんで、そんな当たり前のことにうちの親は気づかないんだ。バカなのか?」
 と思ったほどだが、口が裂けても言えなかった。
 そのせいで、朝食を食べるという習慣は自分の中でトラウマとなり、食べれなくなった。ただ、喫茶店のモーニングや、ホテルの朝食バイキングなどでは、洋食として、トーストや卵料理にコーヒーなどは好んで食べることが多かった。
 ただ、これも、起きてからしばらくするから食べれるのであって、実家にいる頃のように、起きてからすぐであれば、洋食にしたところで同じだったに違いない。
 そのせいなのか、ある程度年を取ってくると、コメの飯を食べるのがつらくなってきた。これは、朝食のトラウマから来ていると思っているが、逆にみそ汁は好きだった。
作品名:起きていて見る夢 作家名:森本晃次