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大学時代の夢

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 そんな状態だったので、初恋だった人の妹と、付き合うということに対しても、違和感を感じるのに、それ以上ともなると、想像すらするのが罪であるという感覚になっていたのだった。
 さすがに、そんな不埒なことを考えること自体、許されることではないと考えると、
「普通に友達としてであれば、意外といけるのではないか?」
 と思うのだった。
 しかし、実際に話をしてみると、二つしか違わないのに、話題がついてこない。それでも、何とか由香子は付き合ってくれているようだった。
 そんな様子を見ていると、
「これだったら、俺の方が話に合わせられるようになるまで、待ってくれているだろう。だから一生懸命に話を合わせられるように頑張ろう」
 と思うのだったが、そう思ったのを予知したのか、それからすぐに、由香子は、須川から距離を置くようになった。
「これがあざとさなのか?」
 と感じたが、どうもそうではないようだ。
 実際に嫌われているのではないかと思うほどになり、それまでのあの思わせぶりな態度は何だったのだろう?
 再会してから、そんな風になるまで、考えてみれば、三か月もかからなかった。実際にはもっと経っているだろうと思っていたのだ。なるほど、なかなか馴染めないと思ったはずだ。合わない話を合わせようとしているのであれば、二か月くらいなら、許容範囲で、三か月くらいまで、スムーズに行っていた時期とのギャップは埋まるはずもないくらいである。
 須川本人としては半年くらいは経っているつもりだった。それくらいであれば、話が合わなければ、自分の話下手を真剣に悩んだとしても仕方がないだろうからである。
 それにしても、彼女の心変わりはどこにあるのだろう?
 確かに天真爛漫で、天然なところがあった。心変わりをするのも分かる気がするし、心変わりをする場合、ケロッとしてしまうくらいの女だということは分かっていたような気がしていた。
 ただ、天真爛漫というのは、
「罪のないこと」
 であって、あざとさではなく、あどけなさが垣間見えるものではないのだろうか。
 彼女の場合は、最後はあざとさではなく、真剣に上から目線だったのではないか? と感じさせるところがあった。
 しかし、別れてしまって、その時のことを思い出そうとするとできないのだった。
 完全に、意識が飛んでいるのだ。まるで夢でも見ていたかのような感覚になり、好きだったのか、そんなに真剣ではなかったのかということが曖昧になってきて、気が付けば、別れていたという感じであった。
 もし好きだったとすれば、どこが好きだったのか。
 天真爛漫さだったのか、それとも、天然なところか、はたまた、姉とは似ても似つかないところなのか、いろいろ考えた。
 確かに姉とはまったく違った。といっても、今の姉を知らないだけに、どんな女の子になっているのか、興味はあるが、妹とこのような形になってしまった以上、いまさら知ったところでどうなるものでもない。
 もし、それを知りたいという思いがあったのだとすれば、
「今のつかさに遭ってみると、自分の好み通りの女の子になっているかも知れない?」
 と考えたからだ。
「俺の好みって、いったいどういうものなのだろう?」
 と考えてみたが、簡単に思いつくものでもなかったのだ。
「つかさに会ってみたいな」
 と思い始めると。今度は、由香子と別れてしまったことがもったいないと感じるようになった。
 ただ、どちらかから、
「別れよう」
 と切り出したわけではなかった。
 もし、逆に、正式に別れ話をしていれば、ひょっとすると、また付き合いを続けられたか、それとも、正式に別れられたかも知れない。
 しかし、もしここで復縁できたとしても、最終的には別れが待っているような気がして、その時、
「あのまま、自然消滅していた方が、お互いに傷つかなくてよかったかも知れないな」
 と感じたかも知れない。
 しかし、自然消滅というものが、ここまで寂しくて情けないものだとは思わなかった。確かに、傷つくことはないかも知れないが、それだけに、しばらくの間、頭の中に彼女のことが離れず、別れたことを後悔しているに違いない。
 頭の中で、何かモヤモヤとしたものが渦巻いていて、次第にその渦の中に、記憶にも残らず、寂しく消えていくものだと須川は感じていた。
 記憶というものがいかに曖昧で、いかにいい加減なものなのかということを思い知るのは、それから少ししてのことだった。
 あれは、退学三年生が終わり、四年生になってすぐだっただろうか。そろそろ就活を考えなければいけない時期に入っていた。
 まだ、自分たちの頃は、就職活動の正式な解禁というのは、十月だった。
 だが、実際に十月になって活動などしていては、もう完全に手遅れである。
 実際には、四年生になってすぐに活動を始めなければならない。基本的には六月末くらいまでには、有力企業の第一次面接の予約は締め切っているのが現状だった。
 友達が教えてくれなければ、呑気だった須川は、完全に乗り遅れるところだった。
 その時に二、三人であったが、頼れる友達を作っておいて本当に良かったと思うのだった。
 その友達のおかげで、就職戦線に乗り遅れずに済んだのだが、さすがに成績の悪さだけは、どうしようもなかった。
 それでも、何とか、八月くらいまで、何十社という会社を受けまくり、あがいてはいたのだが、思ったようにはいかずに、ほとんどの会社は、一次審査にも合格できず、内定が一社ももらえないという惨敗状態だった。
 就職活動をしている間に、友達が数人できたが、彼らがいうには、
「十月までに、内定がもらえなかったら、結構きついかもな」
 ということであった。
 八月中旬くらいまでは、自分の行きたいジャンルの会社を目指して就職活動をしていたが、
「これではダメだ」
 と思い、業界の幅を増やして、その業界のことも勉強し、真摯に就職活動と向き合ったのだ。
 それでも、なかなか難しく、九月に入り、半ば諦め気味で受けた会社、二、三社から内定通知を貰うことができ、何とかホッとできたのだった。
 何とか、就職活動も終わり、卒業のめどが立ったことで、ふっと気が抜けてしまっていた。
 友達は、旅行に行ったりして、最後の大学生活を満喫しようと計画していたが、少しの間、就活での疲れが残って、精神的にまだ、身体に震えが残っているほどだったのだ。
 そんな状態でなかなか、重い腰が上がるわけもなく、
「もう少し、ゆっくりすることにする」
 と、旅行に誘ってくれた友達に断りを入れ、少し落ち着くことを選んだのだった。
 だが、悲劇というのは突然襲ってくるもののようで、それから少ししてのことだった。須川に思いもよらない悲劇が襲ってきた。
 その日は、数日間、ずっと家にいて、身体に根が生えるのではないかと思うほど、身体が重たくなっていたので、
「これではダメだ」
 ということで、何とか買いものにでも行こうと思い立って、夕方くらいから出かけた時のことだった。
 帰る頃にはすっかり、夜のとばりは下りていて、バスを降りてから、家に帰ろうと歩き始めていた。久しぶりに歩いたこともあって、身体の平衡感覚が少しおかしくなっていたのだろう。
作品名:大学時代の夢 作家名:森本晃次