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大学時代の夢

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 という思いからか、何か焦りのようなものが生じていることから、それだけでは収まらない心のわだかまりがあったのではないかと感じたのだ。
「もう、聡子のことなんか忘れてしまえ」
 という思いと、
「この苛立ちを与えた聡子という女に対して、一矢報いる何かがなければ気が済まない」
 という思いが交錯した。
 だが、先ほどの男に対しての怒りは不思議となかった。感じたのは。
「あの男は、聡子の思惑を知ってか知らずかの態度だったのだろうか?」
 という思いと、
「いやいや、思惑を知らないわけはない。聡子に黙って利用されようとしたのか?」
 と感じた。
 男とすれば、聡子と別れたいと思っているところに、自分のまわりにいる男たちを紹介されて、聡子に似合う男をあてがえば、ここで別れることを、この俺のせいだという意識を分散させることができると考えたのかも知れない。
 そんな風に思っていたのだとすれば、聡子との利害は一致し、
「円満に別れることができる」
 と考えたのではないだろうか。
 どちらにしても、二人が須川に、いや、須川だけではないのかも知れないが、やったことというのは、おおよそ許されることではないと思えてならなかった。
 しかも、
「可愛さ余って憎さ百倍」
 というだけないか。
 この時の須川の心境は、まさにその通りだったのではないだろうか。
 相手の男が果たしてどういう意見を聡子に行ったのかというのは気になるが、どうせ、
「あいつでは心もとない」
 というのが本音だっただろう。
 しかし、男としては、聡子に潔く別れてほしいという思惑があったのだとすれば、
「あいつはいい男なんじゃないか?」
 というだろう。
 どっちに転んでも、失礼千万な二人が、こんなジャッジをすることすら、許されることではないだろう。
 自分たちの納得のためだけに、女のまわりにいる男性たちをジャッジするなど、もってのほかだ。もし、これを須川以外の男性にもしているとすれば、今度は逆に、聡子が、この男のまわりの女性をジャッジしていたのかも知れない。
「この二人は、本当に痛いカップルだ」
 と言われても、無理もない二人だと言ってもいいのではないだろうか。
 そんなことを考えていると、
「残念だけど、この喫茶ルームに来ることは、当分はないな」
 と思った。
「ほとぼりが冷めれば、また来ることになるかも知れないな」
 と感じたとすれば、それは、あくまでも、須川は、
「自分が悪いというわけではない」
 ということを、十分に自覚はないということだろう。
「悪いのはあの二人であって、この喫茶室にも、この俺にも一切の落ち度はないのだ」
 と感じた。
 そういえば、須川がそれから以降、何人か付き合うことになったのだが、その時にでも、この時のようなひどい仕打ちをされたこともないし、
「自分にはまったくの落ち度があったわけではない」
 と感じたことはなかったのだ。
 そんなことを感じていると、須川は、聡子のことが本当に好きだったのかどうか、考えるのも嫌になった。
「好きだったのではなく、癒しを求めていただけなんだ。だから、求めた相手を間違っていたわけではない」
 と思うのはあくまでも、
「自分に落ち度はない」
 ということを証明したいだけだった。
 その証明がいったん出来上がると。それが免罪符になり、それ以降、自分に対して相手がいかに思っているかを判断してもいいという免罪符であった。
 そもそも、そんなものなど必要があるはずなどない。
 それなのに、なぜそんな感情になるのかというと、
「それだけ、自分には、本当の恋愛というものをしたことがない」
 という証拠だと思ったからだ。
「本当の恋愛って何なのだろう?」
 本気の恋愛というものなのか? だったら、本気というのは何なのだろう?
 好きになった人を守りたいという感情なのか? それとも、守りたいという人の登場で、自分が変わったということを確かめられるものだからなのだろうか?
 もっとも、守りたいという感情と、本当の恋愛というものをくっつけて考えるにふさわしいものなのかというのを考えてしまう。
 好きになった人のことをあきらめるというのが、どれほど辛いのか、あの時の二人に分かっていたのだろうか?
 もし、二人に罪があったとすれば、その辛さから、逃げようとしたからではないのだろうか?
 須川は、聡子と縁が切れてからしばらくして、そんな風に感じるようになった。
 聡子のことは、意識しなくなっていったが、二人が自分にした行動に対しては、結構考える機会があった。
「考えては、打ち消して」
 というのを何度も繰り返していたが、その感情がどういうものなのか、いや、この感覚は感情ではなく、考察であるということを感じ、感情を振り払うことで、彼女のことを忘れなければいけないと思うのだった。
 それにしても、こんな仕打ちを受けた自分が、忘れるために努力しないといけないなんて、理不尽なのではないかと思ったが、この理不尽さをいかにその後の自分の人生に生かせばいいのか、その時に分かるはずもなかった。
 しかも、年齢を重ねるごとに、そんなことを考えるのも嫌だったし、
「考えないようにしよう」
 とすら思ったほどだった。
 それから、二人の心境について、いろいろ考えてみることにした。
 ほとんど恋愛関係を結んだ人がいるわけではないのに、考えて何が分かるのか? と考えたが、どうにも自分なりに納得できないのは嫌だった。正直、
「舐められている」
 としか思えないからである。
「そもそも、聡子という女性がそういうことをする女だったのか?」
 というところから考えてみたが、
「そんなことを考えることができる女性でなければ、偶然思いついたとしても、行動に移すだけの根性じゃないだろう」
 もし、そんな気持ちが頭のどこかにないのであれば、思いついてから、行動するまでに、一つ何かクッションがあるのではないだろうか。そのクッションは、行動するための起爆剤のようなものであるならば、思いついただけで行動するには、やはり日ごろから頭に描くことのできる性格でないとできないことではないだろうか。
 それを考えると、須川の女を見る目がなかったということなのだろう。だから、あんな男と付き合うことになったのだろう。
 聡子はそんな性格だから、あの男と知り合ったのか、それとも、あの男が聡子のそんな性格を見て、同類だとでも感じて近づいたのか。まわりから見て、
「誰が見ても、羨むくらいのカップルだ」
 と言われていたようだが、それは、
「美男美女」
 ということでなのか、それとも、
「性格が合う二人であり、その性格がいいことから、言われていたことだ」
 ということなのか、それによっても違ってくる。
 ただ、美男美女と言われているばかりなら、意外と性格的に腐っているカップルも結構いたりする。特に顔がいいというだけで得をしてきたことで、絶えず、上から目線で、性格の悪さがさらに顔に出るので、悪魔のような形相になっているかも知れないのだ。
 そんな二人がいつ、どうやって知り合ったのか実に興味がある。下々のありがちな合コンや大学祭のようなところで知り合うような気がしなかった。
作品名:大学時代の夢 作家名:森本晃次