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大学時代の夢

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 それに比べて、時代小説は、史実の追及は度返しである。かといって、時代考証をおろそかにするわけにもいかない。中には、
「時代考証は、デタラメです」
 という但し書きを書いて、いかにもギャグのような作品を書く人もいるが、それはある意味で例外である。完全に娯楽性のみだからだ。
 時代小説がミステリーだと言ったのは、ある程度正しい史実を元に、娯楽性を追求して書いているのだから、謎解きの要素も踏まえている。そういう意味では、
「時代小説を読むには、最低限の歴史認識が必要だ」
 と思うのだ。
 歴史認識があるから、登場人物が史実に対してデタラメであっても、
「どうして彼らが登場する必要があるのかということは、歴史を知らなければ想像もできないこと」
 だからだ。
 それは、時代考証についても同じことで、時代への認識が間違っていれば、時代考証から歴史を勘違いしてしまいかねないからだ。
 特に推理するには、基本的なルールとして、
「与えられた材料には、ウソがあってはならない」
 というのがあるだろう。
 探偵が謎解きを始めた時、それまで一度も登場したことのない人物を
「犯人だ」
 というのはルール違反である。
 確かにトリックの中には、「叙述トリック」というものがあるが、それにも最低限のルールがいくつか存在する。それが、時代小説における時代考証であり、ミステリーと似ているというところはそういうところからも来ているのだ。
 また、SFというのは、そもそも、時代小説というのは、時代を超越しているので、史実があるとはいえ、誰も見たものが、この世に残っているわけではない。それを思うと、その時点で、歴史小説であっても、架空のものだといえるだろう。
 時代小説の場合は、あくまでも娯楽性重視で、一定のルール、例えば時代考証などを守りながらの、架空の話である。
 だから、実際に存在したといわれている人物を、自分の中で勝手に、
「駒」
 として扱い、本来であれば敵の武将を自分の味方にしてみたり、逆に、味方のはずの武将を敵にしてみたり、そして、少し反則であるが、時系列的に出会うはずのない人物を登場させてみたり、いわゆるパラレルワールド的な演出と、タイムパラドックスのような話にすることで、SF色が出るというものだ。
 そういう意味で小説というのは、一つのジャンルを書いているつもりでも、実は他のジャンルの様相も呈している場合が結構あったりする。
 それが小説の醍醐味であり、読むだけではなく、
「自分でも書いてみたい」
 と思うこともある。
 趣味としては、かなり難しいということもあるので、なかなか小説を書こうとする人は少ないだろう。だから、密かに自分だけで書いて、自己満足する人も多いだろうから、そう思うと、実際の執筆人口は、思ったよりはいるのかも知れない。
 さて、聡子と知り合ってから、半年くらいが過ぎようとしていた。
 半年も経てば、彼女のことを少し分かってきていて、彼女は自分の口からは話さなかったが、ウワサであったり、部活の様子などを見ていると、どうやら彼氏がいるのは間違いないようだった。
 それを知ってから、それまでと少し自分が変わってきていることを、須川は気づいていた。
 少し遠ざかっているというのか、それとも、少しずつ縮めようとしてきた距離を、知った時点から、それ以上近づかないようにしたというのか、明らかに自分の中で、何かが変わってきた。
 そのうちに、聡子が須川の態度に対して、寂しそうな態度をとるようになった。
 ただ、それは、須川にだけだというわけではなく、まわりの自分の友人、皆に対してであったのだが、やはり、自分が聡子のことが好きだと思ったからなのか、そのことに気づいていなかった。
 そのせいか、須川の中で、
「俺が何か、したのではないか?」
 と思い込んでいたが、それこそ自惚れであったのだ。
 そのうちに、ウワサが流れてきて、どうやら聡子は、
「彼氏と別れたらしい」
 ということだった。
 本当は自分から確かめたいのだが、それもできないで、少し悶々とした気持ちになっていた。
「もし、別れたのであれば、俺にだってチャンスがあるじゃないか?」
 という思いはあるのだが、いざ自分にチャンスが来たと思うと、
「俺が果たして、彼女にふさわしい男なのだろうか?」
 と感じた。
「臆病風に吹かれた」
 ということなのだろうか?
 男というものが、本当に自分の中にあるのであれば、臆病風などないのかも知れないと思った。しかし、相手のことを考えて、猪突猛進にばかりではないのが男だといえるのではないだろうか。それを思うと、必要以上に、自分を煽るようなことをしてはいけないと感じるのだった。
 そんな時、自分の中で、
「試される」
 ことが起こったのだ。
 それを演出したのが、聡子だったのだが、彼女が何を思ってそんなことをしたのか分からない。ただ、須川の気持ちを分かったうえで、聡子の中で何かを吹っ切りたいという思いがあり、言い方は悪いが、
「須川は利用された」
 ということかも知れない。
 だが、この行動が聡子にとって、かなり度胸のいることだったというのは間違いないだろう。下手をすれば批判されることである。自分の中で納得できていたことだったのだろうか?

                 猜疑心

 その男が、聡子と付き合っていた男だったとは、最初は知らなかった。しかし、さすがにいくら恋愛に疎い須川だと言っても、ここまで露骨なことをされると、勘づかないわけもない。何しろいつもは、二人だけでしか過ごしたことのないその場所に、他人が入り込むなどありえないと思っていたからだ。
 だが、それはあくまでも、須川の勝手な思い込みであり、いくらなんでも、それを相手のせいにしてはいけないのだろうが、
「聡子には彼氏がいて、その彼氏と別れそうになっている」
 というようなそんな話を外野から聞かされていたのだから、怪しむくらいは当然のことであろう。
 そのウワサを持ってきたのが、友達だと自認している人であり、須川にとっては、
「友達の中一人」
 というだけであり、それ以上でもそれ以下でもない。
 下手をすれば、挨拶だけの相手だと言ってもよかった。それだけに、その人の話には須川に対しての忖度という意味では、限りなくゼロに近いだろう。それだけに、信ぴょう性はあるような気がするのだった。
 ただ、
「くだらないウワサの伝道師」
 というだけなのかも知れない。
 結局、
「信じる信じないは、本人である須川の胸三寸」
 ということである。
 だが、情報が最初からあっての状況が、判断するにいたるだけの条件を満たしていれば、それは十分にありえることだといえるのではないだろうか。
 そう考えると、その場というのは、
「俺はまるでピエロか何かか?」
 という思いを抱かずにはいられない。
 いつものように、授業を受けて、そして、これもいつものように、喫茶店に入って、コーヒーを注文した。普段と変わらない時間だった。
 手放しで喜んでもいい時間。それなのに、須川には何か違和感があった。不安な気持ちが心の中のどこかにあり、何かに怯えているほどの感覚だった。
作品名:大学時代の夢 作家名:森本晃次