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天ケ瀬三姉妹

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 なぜなら、自分が今度は来年、受験を控えている。だから、今年は、受験を気にすることなく、高校生活を謳歌したいと思うようになったのだが、せっかく受験を忘れたいと思っているところに、高校受験とはいえ、受験生であるゆかりと一緒にいると、自分が受験を思い出さなければいけないということで、あまり喜ばしくはなかった。
 そんなことを考えていると、せっかくの高校時代が台無しになるという思いから、なるべくなら、ゆかりが受験生だということを理由に、距離を置きたいと思っていた。
 しかし、そんなことを口にできるはずもない。嫌われたくはないという思いと、何よりも相手が受験生だということだ。
 いくら頭がよくて、
「ほぼ、合格間違いない」
 と言われているだけに、逆にプレッシャーもあることだろう。
 それを思うと、変なプレッシャーをかけてはいけないと思う。だからこそ、距離を置きたいという展開にしたいのだった。
 だけど、
「一度くらいはデートらしいことをしてもいいかな?」
 と思ったのは、ゆかりが、以前苛めに遭っていたという思いがあったからだ。
 寂しさを身に染みた彼女を、いきなり突き放すようなことをすれば、今度はブーメランとして、自分にその戒めが帰ってくるということが分かったのだろう。
 その日、渡良瀬は緊張していた。妹のように思っている女の子だとはいえ、今までデートなどしたことはなかったので、これをデートと呼んでいいのかどうか迷っていたこともあって、さらに緊張が増してくる。
 待ち合わせ場所は、駅にしておいたのだが、このことは、たぶん、誰も知らないはずだった。
 自分が誰かにいうようなことはしないし、ゆかりの方こそ、彼女の性格からいうと、本当に付き合っているというわけでもないのに、デートというのは、絶対に隠しておきたいことに違いないからだった。
 ただ、三姉妹やその家族は皆勘がいいので、誰か一人くらいは気づくかも知れない。それでも、気づいたその人が、誰かにいうようなことはないと思う。自分の時にされても嫌だからだ。
 それくらいのことは、皆心得ているので、もし、誰かに気づかれたとしても、それ以上話題が大きくなることはないだろうと、渡良瀬は感じていた。
 待ち合わせの時間に、今まで一度も遅れたことのない渡良瀬は、その日も、約束の時間よりも二十分も早目に来ていた。
 早めにくると、想像以上に自分がワクワクしていることに気が付いた。
「こんなに楽しみに感じていたなんて」
 と思ったが、本当のデートではないという思いからか、複雑な心境になった。
 かといって、他の女の子とデートがしてみたいという意識は、さっきまでは確かになかったのだ。だが、
「待ち人を待っている。その相手が女性であり、デートをする相手だ」
 ということを意識し、実際に自分が相手を待っている状況に陥ると、本当にデートをするような気持になっていた。
「これは、本当のデートじゃないんだ」
 と、言い聞かせようと思ったが、それもうまくいかない。
「このまま、付き合ってしまおうか?」
 と、まだデートもしていないくせにそんな風に感じた。
 もっとも、デートというのは、知り合ってから、仲良くなるためにするものであり、自分とゆかりとでは、
「すでに仲は良く、ただ、付き合っているというよりも、兄妹のような関係なんだ」
 と思うことで、ゆかりに対しては、
「デートをする相手よりも、むしろ、仲の良い相手であり、気持ちも分かりあっているんだよな」
 と感じていた。
 だが、そんな相手とデートをするというのは、ある意味で新鮮な気がしてきた。
「お互いに、まだ知らない相手の奥の部分を垣間見ることができるかも知れない」
 と思うと、半分怖い面もあった。
「知りたくなかった」
 と感じる部分まで掘り下げてしまいそうで怖いのだった。
 そのうちに、震えが襲ってきた。これが本当のデートだったら、
「これは武者震いだ」
 と感じたであろうが、相手がゆかりともなれば少し違う。
 どうしても、ゆかりのことを気遣ってしまう自分がいるのだ。
 普通のデートであれば、相手のことをまだ知らない状態でのデートなので、その場で何とかなると思うところもあるだろうが、今回のデートは、相手を知っている。しかも、それが自分にとっての初デートであり。ゆかりもそうであろう。
 それだけに、気を遣ってあげなければいけないという思いが強くなり、ゆかりの目をしっかりと見てあげなければいけないと感じた。
 しかし、正直恥ずかしい。
 好きになってくれたと思う自分に対してどんな目をするというのか?
「まさかとは思うが、自分がゆかりを好きになり、離れられなくなるなんて感情が芽生えたとすれば、どうしよう?」
 と感じるのだ。
 好きな男を、じっと見ない女の子っているのだろうか?
 男女が見つめあっていて、女の子が男性をじっと見つめているのを、ドラマなどで見ると、さすが女優というべきか、その視線の鋭さに、見つめられたわけでもないのに、釘付けになってしまうのは、それだけの目力のせいであろう。それを考えると、その時の女優にも勝るとも劣らない目をしているのが、ゆかりだと感じているのだった。
 時間というのは、最初に感じていたものと次第に変わってくるもので、いつも友達との待ち合わせで、自分が最初に来ているので、最近では三十分という時間に慣れてしまって、最初ほど、長くは感じないようになっていた。
 ただ、それは、いつも待ち合わせをするメンバーが決まっていて、人数もほぼ決まっているのだとすると、大体誰が早くきて、誰が遅いのかというのは、ほぼ間違いないくらいに決まっていた。
 いつもの、
「仲良しグループ」
 というのは、大体が六人のグループだった。
 そのうち、早く来るのは自分を含めて、三人、そして、ほとんど時間通り、大体二、三分前からちょうどくらいの時間にくるのが、二人、この二人は遅れることはない。そして、残りの一人が必ず遅れてくる。時間通りであっても、一度もなかった。
 早く来る人で、さすがに30分も早く来るのは、渡良瀬だけだった。
「お前いつも早いな」
 といって次に来るのが、十分前の友達で、その次に五分前に来る友達も、やはり、同じ言葉を掛けるのだった。
 二人も最初から、来る時間を集合時間から逆算して決めてきているのだろう、そういう意味で、それ以上早くも遅くもない。
 そしていつも遅れるやつは、どれだけ遅れるかは決まっていない。5分遅れくらいで来ることもあれば、30分遅れることもある。ハッキリしているのは、
「必ず遅れる」
 ということだ。
 だから、
「待ち合わせを正午にした場合、早く来る連中はいいとして、いつも遅れるやつだけに、待ち合わせ時間を、11時半だと言えば、何時に来るだろう?」
 と話したことがあり、実際に実行したことがあった。
 三十分、彼だけ早く告知していると、ちょうど、正午に来たのだった。
 結局その時は、
「実は待ち合わせが正午だった」
 ということは話していない。
「彼が遅れるということは何かの彼なりにポリシーがあり、その通りに遅れているのだとすれば、教えない方がいいだろう」
 ということになった。
作品名:天ケ瀬三姉妹 作家名:森本晃次