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天ケ瀬三姉妹

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「俺にも、そういうちひろのような存在がいるんだろうか? もちろん、身近にいないとっ成立しないもので、しかも、いつも自分の味方をしてくれる人でないといけないと思うんだけど、残念ながら、俺にはその存在が分からないんだ」
「それは、今忘れているからなんじゃない? 私もちひろから助けてもらった時はその存在をハッキリと意識できているんだけど、時間が経つにつれて、あれは夢だったのではないか? 夢の中でちひろちゃんは存在しているだけで、潜在意識が作り出した虚像なんじゃないかって思うようになっているのよね」
 というのだった。
「じゃあ、声や、どんな顔だったかということもおぼろげになってきているということなのかい?」
「ええ、そんな感覚だって言ってもいいわ」
「やはり、座敷わらしのような存在なのかも知れないね。でも、座敷わらしというのは、大きな特徴があって、自分のその家からいなくなると、その家は没落するというじゃない。だから、丁重に扱うということが必要なのであって、決して粗末に扱ってはいけないということになるんじゃないかな?」
 と渡良瀬は考えを話した。
「ええ、だから、心の中で、いつも感謝しているのよ。でも、まさかまわりの人に見えていないとは思っていなかったわ。でもそれだけに、私だけでなく、他の人にもちひろちゃんのような存在の誰かがいて、絶えず守ってくれる。そうね。守護霊のようなものがいるのかも知れないと感じているのよ」
 というのだった。

                 長女の頼子

 ゆかりから、ちひろの話を聞いて、座敷わらしを意識するようになってから、渡良瀬は、自分が、
「天ケ瀬三姉妹の中に、自分が本当に好きになる人がいるような気がする」
 と思うようになった。
 それは、自分の中にゆかりのいうところの、
「ちひろのような存在」
 がいるような気がしているからだった。
 それが、天ケ瀬三姉妹の誰かではないかと思ったが、最初から、
「私にはちひろちゃんがいる」
 と言ったゆかりではないのではないかと感じてきた。
 そうなると、一番の候補は、長女の頼子であった。
 頼子は才色兼備なところがあり、教養も備わっていて、最初はついていけなかったような気がしていたが、いつの間にか、彼女の考えに近づいてきているように思えたのだ。
 それだけ、自分が頼子に考えが近づいていて、合わせようとしているということではないのだろうか?
 それを思うと、
「俺って頼子に対して、いや、頼子だけではなく、人に対して合わせようとするところがあることから、どこか女性っぽいところがあるのではないか?」
 と感じるようになった。
 これは、本当は認めたくないと思えるところであった。
 自分にとって、天ケ瀬三姉妹に対しては、男としての威厳のようなものを持っていることで、妹たちから兄のように慕われ、そして、頼子からも、信頼されていると思っていたのだが、それが違っているということだろうか。
 いや、この感情は、三姉妹それぞれに違う感情を持っているからであって、それはむしろ当たり前のことなのではないだろうか?
 そういう意味で自分が頼子に対して、どのような感情を持っているかということを、再度考えてみた。
 頼子に対しては、同級生で同い年なのだが、まるでお姉さんを見ているような感覚だった。
 それは、
「慕いたい」
 という気持ちから来ているような気がしていたが、その漠然とした感情の中に、
「お姉さんがいたらよかったのにな。もしいたら、頼子のような人だったんだろうな?」
 と感じた。
「待てよ。そういえば、以前お母さんから、お前には兄がいた」
 と言われたことがあったのを思い出した。
 あまり詳しいことを覚えていないが、生まれてからすぐに死んだという。父親が違うので、あまり兄という意識はなかったが、本当はもっと強く意識をしてあげなければいけなかったのかも知れない。
 それを考えていると。
「俺にとっての、ゆかりの中のちひろのような存在というのは、今はこの世に存在しない兄なのかも知れないな」
 と感じた。
 そう思うと、
「ゆかりにとっての、ちひろというのも、あくまでも、自分の中の気持ちが作り出した虚像なのかも知れない」
 とも思った。
 それはまるで夢の世界のことのようで、そう、まさに、以前頼子が話していた、
「予知夢」
 の話を彷彿させるものではなかったかと考えるのだ。
 ゆかりと頼子では、同じ姉妹であっても、まったく違っている。
 ただ、二人とも、天真爛漫性はない。あるとすれば三女のはるかだけであった。
 だが、三人一緒にいる時は、天真爛漫さを感じる。それなのに、ゆかりと頼子からはまったく感じられないということは、
 三姉妹が三人一緒にいる時というのは、
「最強なのではないか?」
 という思いだった。
 それぞれ二人だけであっても、個人でいるよりも、何倍もその特性があらわになるように感じるのだった。
 子供の頃に見た、ロボットアニメでそんなものがあった。三つのメカが合体するのだが、その合体の順番によって、陸海空というそれぞれに特化した合体ロボットになるのだ。
 一体ずつでは、普通の戦闘機で、戦闘機としての力も十分にあるのだが、相手が巨大メカであれば、戦闘機の状態では太刀打ちできない。
 そのために、合体して巨大ロボットになるのだが、その組み合わせで、かなりの威力に違いはある。
 それは、それぞれの先頭場所に特化した仕組みになっているからだ。
 陸上で戦うのに、海上に特化したメカに合体したとしても、その性能はいかんなく発揮されるということはない。あくまでも、その機能に特化したものでないと、うまくいかないというのは、周知のことである。
 テレビを見ている子供にだってわかることで、それは、パイロットの熟練さがものをいうということであろう。
 つまりは、日ごろの鍛錬によるものだということも、重々に分かることではないだろうか?
 何も天ケ瀬三姉妹と、この合体ロボットを比較するというのは、あまりにもということになるのだが、合体することで、どのような特化したものになり、そしてその特化が導き出されると、無敵の存在になるかということを、子供心に感じた気がした。
 ロボットアニメをよく見ていた小学生時代というと、そばにいたのは、頼子だった。
 頼子を通じて、天ケ瀬三姉妹を知ることになるのだが、最初は一人一人が新鮮だった。
 頼子の紹介とはいえ、三人それぞれに独立した存在として見ていたからだ。
 いくら姉妹だからといって、そんな絆が存在するなど、兄弟がいない渡良瀬に分かるわけもなかったからだ。
 渡良瀬にとって、
「兄がいた」
 ということを母から聞くことになるのは、まだまだ後のことであったが、天ケ瀬三姉妹を見て、
「羨ましいな」
 と感じたのと同時に、自分にも、似たような存在の人がいたのではないかと感じたのも事実だった。
 その時にどのようなことを感じたのかというと、それが、
「ゆかりにとっての、ちひろのような存在」
 だったのかも知れない。
作品名:天ケ瀬三姉妹 作家名:森本晃次