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天ケ瀬三姉妹

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「えっ、ああ」
 と中途半端に答えると、
「ごめんね。お姉ちゃん、急にこれなくなって、それで私が急遽来ることになったんだけど、お兄ちゃんは不満かな?」
「あ、いや、不満というわけでは……」
 ここで不満と答える選択肢は自分にはなかった。
 しかし、これないのであれば、普通、連絡をしてくればいいと思うのだが、それをせずに、妹のはるかを来させるとはどういうことだろう? はるかの様子を見ていると、おめかしをして、いかにもこれからデートという様相をしている。まるで最初からそのつもりだったかのようにも見える。
 はるかはまだ、中学一年生だ。この間まで小学生だったという意識から、女性として見たということはなかった。そのはずなのに、見ていると、いつの間にか大人になったような気がする。
 ショートボブっぽいその髪型は、実は渡良瀬が好きな髪型で、うっすらとではあるが化粧をしているはるかなど、今まで見たこともなかった。
「この間まで小学生だったんだよな」
 と思いながら見ていると、はるかが思春期に突入したんだということがよく分かった。
「ふふふ、そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ」
 というセリフを吐いたはるかに対して、きゅんとしてしまった自分にビックリした渡良瀬だった。
 特に、このセリフは、渡良瀬に対して、胸キュン言葉であった。それを、この間まで小学生だった女の子に言われ、ドキドキしている。
「やっぱり、女の子って男子よりも、発育はいいんだな」
 と感じた。
 自然と視線が胸に行っていて、その胸はすでに子供のものではなかった。ドキドキしても、無理もないことであった。
「この子とデートしたら、楽しいだろうな」
 と思った。
 しかし、今日は別の女の子とのデートの予定だった。しかも、それは彼女の実の姉ではないか。そんなことが許されていいのだろうか?
 だが、はるかは、そのつもりで来ている。ここに来たということは、当然、ゆかりに待ち合わせの事実と場所を聞いたから来ているのだ。たぶん、はるかが、待ち合わせをしていることを察して、
「じゃあ、お姉ちゃん、私が行って、今日はお姉ちゃんがこれないことを伝えてあげようか?」
 とでも言ったのだろう?
 それで、ゆかりも別に気にすることもなく、
「そう? それならお願いしようかしら? 悪いわね」
 ということになったのだろう。
「本当は、ゆかりがなぜ来れないのか聞きたかったが、せっかくはるかが来てくれて、はるかは、そのことに触れようとしないのであれば、わざわざ聞くこともないだろう。もし聞きたくなったのなら、いつだって聞けるんだし」
 と思った。
 確かに、その通りだった。
 だが、何よりも、来てくれたはるかの気持ちを大切にしたいと思ったのだ。いや、もっといえば、もしはるかがデートしたいと思ってくれているのだとすれば、自分も願ったりかなったりで、
「お願いします」
 と言いたいくらいだ。
 この気持ちをわざわざ壊すこともないだろう。そう思うと、すでに自分ははるかとデートをするつもりになっていたのだ。
 だが、中学一年生の女の子を相手のどんなデートをすればいいんだ? そもそも、自分だって、デートというものの経験はないではないか。はるかにだってあるはずなどない。どうすればいいのかを考えていた。
 それを考えていると、自分が今日、ここに何しに来たのかということを、再度考えさせられた気がした。ゆかりとデートをするといっても、別に何かプランがあったわけではない。どこに行こうか、相手に決めてもらおうと思っていて、そして、答えが出なければ、自分から提案すればいいんだというくらいに考えていた。
 ゆかりの性格は分かっているつもりだったので、デートと言っても、男女二人でどこかに遊びに行くというくらいのものだとたとタカをくくっていたといってもいいだろう。
 だが、今日は急遽予定が変わって、相手ははるかなのだ、この間まで小学生だった女の子とどこに行けばいいというんだ?
 とりあえず、相手に決めさせるというのは、失礼ではないかと思い、提案は自分からしないといけないと思った。
「遊園地にでも、行こうか?」
 と、言ったが、それを聞いて、一瞬だが、ムッとした様子に、はるかが見えたのを、渡良瀬は見逃さなかった。
「子ども扱いされて、嫌だと思ったかな?」
 と感じたが、すぐに表情がニコやかになり、
「うん、いいわよ。連れってって」
 というではないか。
 その楽しそうな表情に助けられた気がした渡良瀬は、はるかの前に立って、歩き始めた。時間的には、そろそろ昼ごはんの時間だったので、
「どうする? 先にご飯にいく?」
 と聞いてみると、
「うん、どこかで食べてもいいよ。でも、そうすると、遊園地の時間なくなっちゃうよ? どこか遊園地以外のところに行くなら、お食事に行こうかしら?」
 と、はるかが言った。
「うん、そうだね、別に遊園地にこだわる必要はないからね。じゃあ、何が食べたい?」
 と聞くと、
「パスタのおいしいお店、この間、お友達に聞いたんだけど、行ってみる?」
 というので、
「うん、いいよ、一緒に行こう」
 というと、はるかはますます嬉しそうな顔をして、目が輝いているように見えた。
 はるかが案内してくれた店は、待ち合わせた駅から、徒歩で15分くらいのところにあり、少し街はずれの、住宅街に近いところに位置したお店だった。
 それだけに、高級感を感じさせたが、
「中学生、それも一年生が、よくこんなところを知っているな」
 と感心させられた。
 レンガで作られたその店は、ビジネス街から離れていることもあり、スーツ姿の人はほとんどいなかった。店に入ると、八割がた席は埋まっていたが、窓際の席が一つ空いていたので、はるかは迷うことなく、その席に座った。
 表からの明かりと、表はレンガ造りだが、店内は白が基調になっているようで、明るさが眩しいほどだった。パスタおお店というよりも、フレンチのお店といってもいいくらいに思えたのだ。
 はるかは、結構落ち着いていて、まるで何度か来たことがあるかのような佇まいに見えた。
「はるかちゃんは、こういうお店によく来るの?」
 と聞いてみると、
「うん、頼子お姉ちゃんが時々連れてきてくれるの」
「じゃあ、ゆかりお姉ちゃんも一緒なの?」
「ううん、私だけの時が多いのよ。頼子お姉ちゃんが自分から誘う時というのは、三人一緒ということはあまりないの。三人一緒の時というのは、親もセットということが多いかしら?」
 といって、ニコッと笑った。
「と、いうことは、頼子は、姉妹のうちのどちらかに、何かを確認したいと思う時に誘うのだろうか?」
 と思い、聞いてみたいという衝動に駆られたが、必要以上に聞いてみようとは思わなかった。
 おそらくは、教えてはくれないだろうと思うからだった。
「このお店は初めてなのかい?」
「うん、初めてきた。友達が親と来たことがあるというのを聞いていたので、私も一度は来てみたいと思っていたの。でも、家族全員で来るという雰囲気ではないということだったので、来るとすれば、頼子姉ちゃんとかな? と思っていたのよ」
作品名:天ケ瀬三姉妹 作家名:森本晃次