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必要悪な死神

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「あまりハッキリとは覚えていないんだけど、たしかかくれんぼをしていたと思うんだ。その時、俺は冷蔵庫か何かの中に隠れた気がしたんだ。扉が最後までしまってしまわないように気を付けていたんだけど、急に中が真っ暗になったんだ。その時、声を出したような気がしたんだけど、真っ暗な中に吸い込まれたような気がして、自分がどこにいるか分からなくなった気がするんだ。次の瞬間、足元が割れたような気がして、谷底に真っ逆さまに落ちていく感覚に陥ると、あとは気が付けば、自分の部屋で寝ていたというわけなんだ」
 という。
「そんなに鮮明に覚えているのか?」
 と聞かれ、
「いやいや、そんなことはないんだ。本当は、覚えていないはずだったんだけど、思い出しながら話していると、どんどん記憶がよみがえってきてね。だから、早口だっただろう? 早口で話さないと、また忘れてしまうような気がしてきて、そのせいもあって、記憶がよみがえってきたんだよ」
 と友達が言った。
「お前が隠れたというのは、あのスクラップの場所だよね?」
 と他のやつが聞くと、
「ああ、そうだよ、ちょうど鉄屑の上の方に、おあつらえ向きに自分が入れるくらいの冷蔵庫があったんだ。俺は身体が小さいからちょうどいいと思ってね」
 というと、
「怖いとは思わなかったのか? 閉まって開かなかった場合のことだよ」
「それが、その時はそう思わなかったんだ。むしろ、その冷蔵庫に呼ばれているような感覚でね」
「でも、おかしいな、あんなところに冷蔵庫なんかあったかい?」
 と、まわりに聞くと、皆首をかしげて、
「いや、冷蔵庫があったのなら、気づくはずだし、ましてや閉まっているのなら、まさかこの中にないだろうかと、危険に感じるはずだと思うんだ。それがないということはどういうことなのか、自分でもよく分からない。皆はどうだったんだろうね?」
 と一人がいうと、
「俺も、冷蔵庫を見たという意識はないんだ。隠れようと思ったくらい、目立っていたのであれば、すぐに分かるはずだ。一人が気づかなかっただけなら、まだ分かるけど、皆であのあたりを何度も探したんだから、あれば分かるはずだ」
 という。
「そんなバカな、じゃあ、俺が隠れたあれは、何だったんだろう?」
「それを言うなら、どうして、冷蔵庫の中から出て、どうやって家に帰りついたというんだ? そのことを家族に聞いてみた?」
 と聞くと、
「うん、ちょっとだけ匂わせるように聞いてみたんだけど、俺が帰ってきた時、気配がしたので。俺だと思ったらしいんだ。廊下を通り過ぎるのが、扉のすりガラス越しに見えたらしいんだけど、ハッキリと見えたわけでもないし、声も聴いたわけでもないけど、いつものことだからと、気にもしていなかったというんだ」
 というのだ。
「なんか不思議だよな? 誰も、お前の姿をかくれんぼの最後に皆散り散りになって隠れた時から見ていないことになる。そして、帰り着いたのも分かっていない。まあ、お前のところの親の立場からすれば、気配がしたというのであれば、疑うこともないだろうな」
 というのだった。
「俺が気になっているのは、冷蔵庫の扉が閉まったのだと思うんだけど、その時に、中が急に真っ暗になったんだ。その時、真っ黒というわけではなく。真っ青な感じがしたんだ。暗い中で、見えないが、壁のようなものがあれば、その壁がペンキで塗られた真っ青な色という感覚なんだけどね。それを思うと、次に感じたことが、今となってみれば、一番印象に深いことだったんだ」
「それはどういうことなんだい?」
「あの時の真っ暗闇が、初めて感じたのではなく、前にも感じたことがあるような。しかも、それも頻繁に感じられるような気がする感覚なんだよ」
「それもおかしな感覚のようだな」
 というのを聞いて、行方不明者は、一瞬ムッとした表情になったが、
「だけど、本当のことなんだから、しょうがないよな」
 と、少し投げやりに答えていた。
 少しだけ間があったが、
「あっ」
 と、行方不明者が何かを感じたようだ。
「どうしたんだ?」
 と聞くと、
「実は今まで話していたわけではないんだけど、実は俺には弟がいて、よく親に叱られては、押し入れに籠って、出てこなかったりしたんだ。俺が感じる、あまりにも親のいう理不尽な態度に、弟は完全にキレた時など、学校にいかないといって、閉じこもっているんだ。本人は、登校拒否だって言っていたんだけどね。そんな時、俺も弟の身になって押し入れに閉じこもっている感覚になったことがある。あの時も真っ暗な中で、足場も分からない中で、急に奈落の底にでも叩き落されたような気がしてきたことがあったくらいなんだよ」
 というではないか。
 それを聞いた、もう一人のやつが、
「そうそう、お前の弟のことは聞いたことがある。その時、先生が話をしていたのを偶然聞いたんだけど、先生は、登校拒否とは言わずに、不登校って言っていたような気がする。不登校と、登校拒否って何が違うんだろうね_-?」
 といった。
 今でこそ、登校拒否という言葉はあまり使われず、
「不登校」
 という言葉が非常に多い。
 これは、中学に入ってからくらいから、苛めの問題というのが本格的な問題になってきた。
 その卑劣さは、自分が苛められている頃とはまったく違う。
「数年しか違わないのに、ここまで違うものなのだろうか?」
 と、感じたのだ。
 ただ、まだ塚原が小学生の頃、自分が苛められている頃は、苛めというのがそこまでs社会問題になっていなかったが、それは小学生の世界でのことだからだろう。
 これが、中学、高校ともなると、小学生の段ではない。
 なんといっても思春期が絡んでくると、身体も精神も、子供から大人への変革期にあたることで、その程度は果てしないものになってくるだろう。
 嫉妬が渦巻き、自分で自分を抑えることのできない子供が、パワーだけは大人になってしまったことで、抑えられるはずもないのだった。
 中学生になってから、実際に自分のまわりでも苛めの問題は結構あった。しかも、小学生の頃に自分が感じた。
「傍観者も苛めっ子と同じだ」
 という意識であるが、今度は自分が傍観者になってしまうと、
「傍観者になるのも仕方がない」
 と思うようになった。
「なるほど、下手に庇いだてなんかすると、今度はターゲットが自分に代わるだけで、何ら解決にはならない。苛めがこっちに移ったことで、苛めから回避できた人が、こっちwp助けてくれるはずもない。そんなことは分かり切っていることなのに、本来なら後ろめたさがあるはずなのに、感覚をマヒさせることで、自分は悪くないと思わせることになることに、嫌気がさしているはずなのに、どうすることもできないのだ」
 と考えていた。
「不登校と、登校拒否」
 何が違うというのだろうか?
 登校拒否というと、自分から、学校には行きたくないという気持ちの表れで、普段は、別に変わった態度をとっているわけではなく、まさか親も、子供が学校に行っていないとは思っていないこともあったりする。
 しかし、不登校というのは、基本的に陥った理由は、いじめ問題が一番多く、家庭でも、
「引き籠り状態」
作品名:必要悪な死神 作家名:森本晃次