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必要悪な死神

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 というのが本音なのかも知れない。
 だが、父親は、付き合い始めてから、母親のことをずっと女として見てきたに違いない。それなのに、今回は女として見てきたことが、間違っていたかのように思わなければいけないことをどう感じているのか?
 結婚したことを後悔しているのか、それとも、
「あいつが不倫するんだったら、俺だって」
 という思いに至ってしまったのか。
 もし、塚原が大人になっていたら、後者だったかも知れない。
 ただ。それは、自分があくまでも他人事として見た場合のことで、
「自分に果たして、報復による不倫というものができるのか?」
 と聞かれれば、
「できないだろうな」
 としか思えないに違いない。
 そんなことを考えていると、
「あの時、母親が家にいたことが、正解だったのではないか?」
 と思うのだった。
 もし、怒りに任せて出て行っていれば、父親も不倫に走ったかも知れない。そうなると、二人の溝は決定的なものになり、離婚は免れないだろう。だが、
「不倫の先にあるものは、絶望しかない」
 というような言葉をよく聞くので、
「そんな悲惨なことに、どうして大人は首を突っ込んで、しかも、何度も繰り返すのだろう?」
 と思った。
 それは、妊婦さんにも感じたことだった。
「あんなに、長時間、苦しい思いをして子供を産むのに、また一年もすれば、産婦人科に来る。喉元過ぎれば、何とかっていうのと同じよね」
 と、母親が以前、近所の奥さんと話をしていたのを聞いたが、その母親が分かっていても、不倫をしているというのは、何とも皮肉なことに思えて仕方がなかった。
 父親は、その時、不倫に走ったのかどうか、正直分からない。しかし、いつの間にか二人は仲直りしえいて、不倫騒動がまるでウソのようだった。母親が別れたのは間違いないのだろうが、父親は、まさか母親が別れたという事実だけで、簡単に許す気持ちになったというのだろうか?
 もし、そうだとすれば、こんな後味の悪いことは、子供として許していいものなのかと思ったのだ。
 だが、その日、何も言わない母親に疑問を感じた。
――本当に知らないのだろうか?
 と感じたが、知っていて、わざと知らせないということもあるかも知れない。
 だが、そんなことをする理由がどこにあるというのか? まさか母親も、煩わしいことは嫌いで、かかわりになるのが嫌なので、余計なことを聞かないようにしようと思っているのだとすれば、こちらも隠そうとしている分際で、よくそんなことを思えるものだと感じる。
 だが、本当に知らないという可能性もある。もし、知らないということであれば、友達は家に帰ってきているということだろうか? それを確かめるすべもないので、気にしながら過ごすしかなかった。
 月曜日に学校に行けば分かることなのだが、その月曜日がなかなか来ないように思えてならなかった。
「最悪の週末になってしまった」
 と感じた。
 確認すれば済むことなのだが、時間が経てば経つほど、余計に確認しずらくなるし、しかも、
「あと数時間で分かることだ」
 と思うと、確認もできなくなる。
 しかし、実際に時間が経つにつれて、精神的にはきつくなってくる。どこまで耐えることができるかということも、問題になる。
「あと少しだけのことなんだ」
 と思えるのか、それとも、
「我慢できなくなる感情が、まもなく飽和状態に陥る」
 と感じるのと、どちらが早いというのだろうか?
 それを思うと、最後になればなるほど、自分がきつくなってくる。やはり今のうちに確認しておくべきことなのだろうか?
 だが、その心配はなかった。なんと、その日の夕方、行方不明になったと思っていた友達から電話があったのである。
 友達からは、別にいなくなったことに触れているわけではなく、ただ、宿題の話という、普通の会話だったのだ。
 塚原としても、本当は彼がどうしていたのか聞きたいのはやまやまだったが、ここでは母親に聞かれてしまうので、そのことに触れるわけにはいかなかった。相手もまったく気にもしていないようなので、拍子抜けしてしまったこともあって、何も言わなかった。ただ、行方不明でないということが分かっただけで、よかったのだ。
 もし、行方不明になったということでないのであれば。今さら、昨日のことを蒸し返す必要もないような気がしたのだ。
 ただ、それは今の電話の間でだけのことであって、今度学校で会った時、しっかり聞かなければいけないところだと感じたのだ。
 ただ、それは今の電話の間でだけのことであって、今度学校で会った時、しっかり聞かなければいけないところだと感じたのだ。
「最悪の土日になるだろう」
 と思い、これ以上ないというくらいに長く感じるのではないかと思った土日だったが、事なきを得たと思うと、まったく気にならないためか、今度は土日が思っていたよりも、あっという間に過ぎてしまい、気が付けば月曜日になっていた。
 目が覚めてからが、今度はなかなか時間が過ぎてくれない。
「どうして、あいつは、何も知らないような態度でいられるんだろう? 実際にどこに行っていたというのだろうか?」
 ということを考えていたが、そのまま言葉にして質問をぶつけるのがいいのか、考えてしまっていた。
「要は、相手の出方次第だな」
 としか思えない。
 相手が、最初に誤ってくるようなら、意識があったのだろうから、聞けば教えてくれるだろう。しかし、なぜあの時に見つからなかったのかが分かるかどうか、別問題のような気がしていた。
 学校で、あの時一緒にいた連中も、さぞや、同じことを感じていたことだろう。最初に口を出すのがいつも同じやつなので、
「ここは、出しゃばったりしないようにしよう」
 と、塚原は思っていた。
 塚原には、まだ苛められっ子だった頃のことがまだ頭に残っているので、自分から表に出ることはしなかった。
 出てもいいのだが、梯子を外されてしまうことが怖いので、必要以上には、何も言わないことにしたのだ。

                 乗り移る感覚

「お前、金曜日の夜、あのまま家に帰ったのか?」
 とやはり、最初に口を出す友達が、唐突に切り出した。
 口調を聞いていると、どこか怒りに満ちているように見えて、まわりの皆も、
「その気持ちは分かる」
 と感じていたことだろう。
「あの日だろう? 俺もよく分からないんだ。気が付けば、自分の部屋の布団の中で寝ていたんだ。しかも、ちゃんとパジャマに着替えてね。表が真っ暗だから時計を見ると、夜の二時過ぎで、普段からそんな時間に目を覚ますことのない俺だったので、このまま眠れなかったらどうしようと思ったんだけど、うまい具合に眠れてくれて、普段休みの日に起きる時間である、七時頃には、目が覚めたんだ」
 というではないか。
「ん? ということは、それ以前の記憶はどうなってるんだ?」
 と聞かれた行方不明者は、
作品名:必要悪な死神 作家名:森本晃次