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歴史の傀儡真実

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 と、重光と、頼経は感心していた。
 特に、設計関係に精通している頼経の目は、そのからくりをとらえて離さない。
 数十秒かかって、橋が降ろされ、ちょうどいい距離のところに、橋が降り立った。この時代くらいになってくると、日本本土でも、それまでの山城から、平地に城を構える部署も出てきて、そこを館も兼ねてから、根拠地とする大名も増えてきた。
 そのため、支城といy形での櫓をあちこちに建設し、いわゆる、守りのかなめにしているのであった。もちろん、戦闘用のところもあれば、物見やぐらというものもある。それぞれに機能を分散した形の城となっているのだった。
 門が開いて、中に入ると、さらに驚かされた、門の中にも、屋敷が広がっていて、その屋敷の向こうに、また、塀がめぐらされている。
「これは一体、どういう仕掛けなんだ?」
 と、重光も頼経も自分が何に驚いているのか、最初は分からなあった。
 その壮大な広さなのか、それとも、厳重に張り巡らされた堅固なイメージなのか、ただ、じっと見ていると、錯覚を起こしそうになるのを感じて、その錯覚こそが恐ろしさの秘密なのだということを、重光には分からなかったが、さすが設計を得意とするだけあって、頼経には分かっていたのだった。
 それだけに、重光よりも、頼経の驚きの方が激しいのだが、それを見ていた案内人の武者には、二人が感じていることの違いが横から見ていて分かったようだ。
 そして、頼経は、
「これは素晴らしい」
 と、一言言って、納得したような顔になったことで、隣の重光も我に返ったかのように、案内人の男を見返した。
 その表情からは、驚きの雰囲気はだいぶ消えていた。それを見た案内人の武者は、
――この男、どうやら、肝は据わっているようだな――
 と感じたのだった。
「ここは、櫓なのか? それとも城なのか? それとも、館なのか?」
 と、重光が言うと、
「私には、そのすべてが凝縮されたものではないかと思えてきました。これからの世の中は、このような形の要塞のようなものが、わが国にもどんどんできてくるのではないかと思えてきましたよ」
 と頼経が言った。
「なるほど、私は、最初櫓なのではないかと思ったあの正面の建物だが、門の中に入ってから見ると、まだ、それほど大きく見えてこない。ということは、あの建物は、想像以上に遠くの方にあるということで、だとすると、大きさは想像をはるかに超える、半端ではないものなのではないのだろうか?」
 と重光がいうと、
「ええ、その通りです。殿も思われたと思いますが、門から入ってきた時、自分の目がどうかしてしまったのではないか? とお考えになりませんでしたか? たぶん、足が進まなかったのは、その感覚を納得できなかったから、そこから動けなかったんですよね? つまり、動けなかったのではなく、動かなかったといって方が正解なのかも知れませんね」
 と、頼経がいった。
「うむ、その通りだ。さすが、設計や縄張りに関して得意としている頼経らしい解釈だ。お前にそういわれると、私も、自分の感じていたことに、確信が持てるようで、嬉しいぞ」
 と、重光は言った。
「それにしても、あの中央に聳えるあの建物は何なのだろうか? 何か、宗教的な意味合いがあるのだろうか?」
 と、重光が、今度は、案内人に聞いた。
「先ほどの、こちらの方が言われたことが正解で、ここは、櫓も、城も、館も兼ねた、一種の複合施設のようなものだと思っていただいて結構だと思います。そして、ここだけで、一つの街が形成されていて、大きな要塞ともなっているんですよ。だから、ここには大小でかなりの建物が存在します。今でも少しずつ増えているので、その数を正確には把握できていないほどですよ」
 ということだった。
「目の前の屋敷は、あれは、家臣の屋敷となるのかな?」
 と言われた案内人は、
「ええ、その通りでございます。目の前にありますのは、家臣の屋敷になっていて、ここを守る砦の役目もしていますが、その奥には畑もあって、ここで、自給自足もできるようになっています」
 というのだった。
「なるほど、要塞の中に、家臣お屋敷を入れるというのは、便利なこともあるのだろうか?」
 と聞かれて、
「ええ、家臣と言っても、何かあった時に、すぐに駆け付けることができるということと、もう一つは。全体を一つにしておくと、それぞれに、監視にもなって、謀反を起こそうとするものがいれば、監視しているものもいるので、すぐに分かります。表に理由がないと出れないようになっているので、外との連絡も取れないので、武器弾薬を手に入れることもできません」
 という。
「なるほど、日本本土では、下剋上などという、謀反が流行ってきているので、ここでは、その下剋上対策もしっかりされているということですね?」
 と聞くと、
「ええ、そうです。たぶん、この函館というところは、これから日本本土が歩むであろう。数十年後の未来だと思っていただいても、いいのではないかと思います」
 と言った。
「じゃあ、本土でも、これと同じような建物がどんどんできてくるということでしょうか?」
 と聞くと、
「ええ、その通りです。本土や都にも、外人が、少しずつ増えてきているのではないですか? そして彼らの話を聞いて、いろいろ動く大名も多くなってくるはずです。本土では、どこの外国人が多いですか?」
 と聞かれて、
「朝鮮人、明国の人間は多いですね。最近は、スペインという国と、イギリスという国の民が都にはいて、朝廷や公家に接近しているようです」
 というと、
「朝廷にですか。なるほど」
 と彼がいうので、
「何か?」
 と聞くと、
「武家ではなく、朝廷だということに少しびっくりしましたが、なるほど、そういうことであれば、室町幕府も、そう長くはないですね」
 というではないか。
「その理由は?」
 と聞くと、
「我が主にお伺いくださいませ」
 というだけだった。
 重光と、頼経は、しっかりと城郭を見ながら、お互いに自分の考えていることを反芻しているようだった。
「ところで、あの中央に聳えている、あの大きな建物は何ですか? まるで、五重塔のように見えるので、宗教がらみかなにかですか?」
 と言われた。
「ああ、あれは天守閣というものです」
 と言われ、
「天守閣? それは何ですか?」
 と聞き返すと、
「まあ、ハッキリといえば、君主が家臣に対してその権威を示すための建物です。もちろん、戦になると、あそこに籠城するということもありますが、住居となる屋敷は別にあります」
 というではないか。
「天守閣というものですね? 確かにあれだと、遠くから見ると、錯覚してしまいそうな感じですよね。遠くなのか、近くなのか、一瞬では見分けがつかないような感じですね」
 というと、
「そうなんですよ、それも狙いです。実際に敵に攻め込まれた時、いかに防御するかというのが、城の真骨頂になるんですよ。天守閣が落ちれば、城は終わりですので、そこに行くまでに、どれだけ防御ができるかというのが問題なんです。これから天守閣の手前えの館までご案内するわけですが、城の防御についても、説明してまいりましょう」
 というので、
作品名:歴史の傀儡真実 作家名:森本晃次