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歴史の傀儡真実

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 つまり、ひょっとすると、明国や、朝鮮を経由して入ってきていたのではないだろうか?
 時代としては、ほぼ、同時期に鉄砲も伝来することになっているので、キリスト教や鉄砲以外でも、他にも伝来していたものがあり、すでに日本には、海外からのルートができていたのかも知れない。
 そんな時代の蝦夷地なのだから、歴史上はほとんど表に出てはいないが、知られざる秘密があったとしてもおかしくはないだろう。
 数か月かけて、陸路を津軽までやってくると、そこで、またしても、足止めを食ったわけだが、
「どうせ、ここまで来ているんだ。慌てたってしょうがない」
 と思っていた。
 ただ、一つ気になるのは、今まで、ほとんど海に出たこともなく、船にも乗ったことがなかった重光は、大人のくせに、船が怖かった。
「沈没したらどうしよう」
 あるいは、
「船酔いするというが、かなりきついものらしい。大丈夫だろうか?」
 という思いであった。
 父親に聞いた松前というところは、かなり寒いということであり、津軽からは船で、結構かかるという。
「まるで、地球の端っこに行くような感じがする」
 というと、父親は、
「まあ、そうだろうな、そこから先は誰も行ったことがないんだからな」
 というのを聞いて、少しゾッとした重光は、
「ひょっとすると、行った人は何人もいるんだろうけど、帰ってこれなかったんじゃないですかね?」
 と言うと、
「そうかも知れないな。だから、お前も深入りするんじゃないぞ」
 と言われたが、自分で、帰ってこれなかったとは言ったが、逆に、
「居心地がよくて、戻ってくる気がしなかったんじゃないか?」
 と感じたが、それは言わないことにした。
 自分で行った時、確かめればいいだけだからである。
「蝦夷地というところは、普通に隈が出たりするらしいので、どんな凶暴な動物が潜んでいるか分からない。松前に着いたら、そのあたりの情報は、なるべく早く教えてもらっておくのだな」
 と言った。
「ところで英語で通訳というのは、何かの商談か何かですか?」
 と聞くと、
「そうだな、基本は、商売の通訳になるだろうが、外交的なこともあるのではないかと言われた。辞書はあるらしいので、英語が少しでも話せれば、大丈夫ではないかという話だったので、お前に白羽の矢が立ったというわけだ」
 と言われた。
 重光は、津軽で五日滞在したところで、船頭がやってきて、
「明日なら、何とか行けそうだ」
 という話を聞いて、
「おお、そうか、それはありがたい」
 と言って、喜びの声を挙げた、
 すると、船頭は少し浮かぬ顔をした後で、少し思い切ったかのように、
「旦那は、松前のどこに行きなさるんですか?」
 と聞かれて、
「函館というところだと聞いているんだが? それがどうかしたのかい?」
 というと、
「ああ、いえね、函館というところは、少し危険なところだという話を聞いているんですよ。何しろ、日本の勢力が及ばない場所だということなので、常識も通じないという。そんなところに行かれるでしたら、それなりの覚悟はおありなのかと思いましてね」
 というので、
「それは私も聞いている。どうやら、英語を話すスペイン人というのがいるということで、スペイン人なら、私も、京にいた頃、親交があったので、少しは違うと思う、何しろ私は、見込まれる形で行くのだから、他の人よりも一番ふさわしいと思っているんですよ。だけど、そんなに危険なところなのかい?」
 というのを聞いて船頭は、
「実は、私も詳しくは知らないんです。今言われたくらいの情報くらいしか知らないので、それで気になったんですよね。今までに、何人か、松前に行ってほしいと言われて、お連れしたことがあったのですが、どうも、こちらに戻ってきた様子がないんですよ」
 というのだ。
「やはり、外人というところが引っかかるのかな?」
 というと、
「それはもう、そうですよ。お隣の朝鮮や、明国の人だって、何か信用できないところがあるくらいですからね」
 と船頭はいう。
「まあ、いきなり何かあるとは思えんが、忠告を得ておいて損はないだろう。せいぜい気を付けることにしよう。ご忠告、あい分かった」
 と、重光はいうのだった。
 翌日、船で渡ったのだが、想像以上に船というものは揺れるもので、どれくらいの時間がかかったのかというのも、意識にない。とにかく、船酔いをしないように意識をしっかり持っていようと思っていると、何とかなるもので、気づいたら、蝦夷地についていたのだ。
 そんな重光の様子を見て、
「旦那だったら、大丈夫そうな気がする。ですが、お気をつけなすってくださいよ」
 と、船頭がいうので、
「いや、ありがとう。恩に着ます」
 と重光と数名の重臣は、船を降りて、港から、函館の街を見た。
 そこは、
「本当にこれが、日本なのか?」
 と思うほどの佇まいで、異様な雰囲気を醸し出していた。
 というのも、木造中心の日本家屋とは違って、白い土の壁の建物が多く、武家屋敷のような、日本庭園を持った家というのは、存在していない。少し歩いていくと、その先に、白い壁があり、その壁には、三角や四角の穴が開いたようになったものがいくつも存在した。
 よく見ると、そこに行くまでに、大きな堀が形成されていて、そこには、水が溜まっている。向こう側にいくには、いくつかの限られた橋を渡らなければならず、その箸も、向こう柄に垂直に立てられていて、何やら、仕掛けを使って、それを遅さなければ、橋が使えないようになっているようだ。そして、垂直になっている橋のせいでよく見えないが、その向こうは門になっているようで、その門の上にも、塀のような壁があり、さっきと同じような四角や三角の穴が開いているではないか。
「あの穴は一体何なのだろう?」
 と不思議に思うのだった。
 先ほどの門の向こうに、大きな櫓のようなものが見える。
 館のようなもので、それが、何重にも上に向かって積み重ねられている。数えてみると、誤断くらいあるようだ。瓦を使った屋根が階層を表しているのか、まるで、五重塔を横に広げて、屋敷にしたような佇まいだったのだ。
「それにしても、何と美しい櫓なんだ」
 と思って、思わず見つめていた。
 重光は、ゆっくり歩いて、門に近づくと、どこからか、馬に乗った武者が走ってきたのだ。
「そこのお方、しばし待たれい。我が城に何か、御用かな?」
 と聞かれたので、
「私は、三河の国の門脇上総守重光と申す者です。国元からの命令で、蝦夷地の函館というところに参るようにと下命を受けたのだが、こちらに、その書状が」
 と言って、馬の上の武者に手渡した。
 その男は、その場で、書状を読むと、
「これは失礼しました。お話は伺っております。どうぞ、こちらへ」
 と言って、重光一行を迎え入れてくれた。
 一行は、橋の手前のところまで行くと、馬に乗った武者が、脇に刺した刀を抜いて、橋の向こう側にいる人間に合図を送ったようだ。
 それを見た向こうの人間が橋をゆっくり立てかけてあるものを、こちらに向かって降ろしてるようだ。
「ギシギシ」
 という音が聞こえてきて。ゆっくりと降りてくる橋を見て、
「何という、カラクリなんだ」
作品名:歴史の傀儡真実 作家名:森本晃次