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歴史の傀儡真実

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 天下統一と言われているが、戦国時代の天下統一は、別に、
「全国統一」
 という感覚ではなかった。
 いわゆる、
「機内統一」
 というのが天下だったのだ。
 京都を中心に、丹後、摂津、河内、伊勢、尾張、美濃、三河、敦賀などと言われるような地域を統一できればいいというくらいだったのだ。
 だから、尾張から、都から離れていて、足利十五代将軍の足利義明を奉じて、京に凱旋したことで、信長の天下統一はなったと言ってもいいのではないだろうか。
 その後、本能寺の変が起こったとしても、それは、あくまでも後で起こったことであり、信長が、安土城を築き、岐阜で行った城下町をさらに発展させたことで作り上げた世界が、実際の天下統一の形だったわけだからである。
 信長の天下は、本当はここから先があったはずなのだが、本能寺の変から、山崎の合戦を経て、秀吉に委ねられることになった。
 これも、前述の、歴史における
「もしも」
 ではないが、
「この時、信長が死んでしまったことで、日本の歴史が、百年逆行したといえるのではないか?」
 と言われているが、まさにその通りではないだろうか。
 ただ、あくまでも、
「もしも」
 ということであって、本当のところは分からない。

                普請事業と応仁の乱

 そんな戦国時代の史実を前述では、大まかに書いてみたが、ここから先は、史実とは異なるお話として見ていただければいいかと思います。
 まあ、簡単にいえば、小説の中でもあるあると言われる、
「パラレルワールドもの」
 と言ってもいいだろう、
 あるいは、
「もしも、歴史にこういう人物がいれば」
 などという、
「時代小説に近い、歴史小説」
 というべきか、
「歴史小説に近い時代小説」
 というべきか、実に難しいところである。
 作者も、あまり深く考えていないので、書いていながら思いついたことを書いていく形になるので、却って面白くなるのでは? と思っています。果たして、どんな作品になることやら。。

 時代背景としては、戦国大名が全国に現れ始めた頃であっただろうか。北条早雲も、毛利元就も、まだまだ現役だった頃だ。
 北海道を除く、全国には、守護大名があり、次第に戦国大名が台頭してきて、下剋上が目立ってくると、それぞれの国の範囲は変わらなくとも、支配者の名前が目まぐるしく変わってくる。
 当時、日本地図があり、時代を把握できる人間がいれば、日本地図に支配者の名前を書かせていけば、結構移り変わりの激しさが、分かってくるのではないだろうか。
 群雄割拠の戦国時代、まだまだ戦闘のやり方も昔ならではで、単純なものだった。
「やあやあ、我こそわ」
 などと名乗りあっての一騎打ちなどもあったのかも知れない。
 そんな頃、一人の若い侍が、街道を使って、北を目指していた。
 戦国時代の入り口とは言っても、まだまだ、地域によっては、守護大名の力も強く、比較的、治安が守られていた。北の方の京から遠ざかれば遠ざかるほど、一人旅をしていても、さほど心配なことはなかった。
 もっとも、この侍は、かなり強いらしく、一度山賊のような連中に襲われかけたが、その首領を一撃のもとに倒して、他の山賊をたじろがせたということである。身の軽さは、剣の腕からすると、
「忍者の出身ではないか?」
 と思わせるほどだった。
 相手が巨漢であっても、相手の力を利用して、それほど苦労せず、相手を倒すすべを知っているのだ。
 だからこそ、街道を一人で旅ができるというものだった。
 彼は、みちのくも通り抜け、津軽までやってきた。そこで、船を雇うのだった。
「蝦夷地へ行きたいのだが」
 というではないか。
「蝦夷地? 結構金はかかるが、あんたに払えるのか?」
 と、少し荒くれを思わせる船頭が、いかにもマウントを取っていうと、
「ああ、金は心配いらない。これでどうだ?」
 と、布を巾着のようにして、腰にぶら下げていたものを外して台の上に、ばら撒くと、そこには見たこともないようにまばゆいばかりの小判が、山吹色に光っているのであった。
「こ、これは」
 と船頭が、腰を抜かしそうになるのを見て、若い侍は、ニヤリと口を歪めて笑みを浮かべると、
「これなら文句あるまい。それでも文句があるというのなら」
 と言って、今度は、巻物のようなものを広げて男に見せた。
 すると船頭は、先ほどの小判を見た時よりもさらにビックリして、侍の顔を見上げると、
「ええ、ここまで揃っていらっしゃるんなら、文句のいいようがありませんわ」
 と言った。
 この船頭は、このあたりで一番の手練れとして、その筋では有名であったが、それはあくまでも、船頭仲間だけのことであって、この男、どうしてそれを死っていたのだろうか?
 この男は他の船頭にはまったく目もくれずに、この船頭のところにやってきたのだ。見る目があるのか、誰かから情報があったのか分からないが、とにかく、得体の知れないおとこであるのは間違いないようだ。
「俺は、確実に北海道へ行きたいんだ。あんたなら安心だと思ったんだよ」
 というではないか。
 見るからに、身なりはシャキッとしていて、若いくせに、身分のある人物であるということは、船頭の目から見ても分かった。
 その筋で極めるくらいになる人間は、それなりに人を見る目も備わっているというもので、ここまで話をしただけで、船頭は、この男を気に入ったのだった。
 年齢からすれば、若造のくせにと言いたくなるくらいなのだろうが、そんなことは、どうでもいいくらいに、相手の技量の底がないという感覚に、初対面でまいってしまったと言ってもいい。
「代金は、そんなにはいらないが、蝦夷地に渡るには、何か理由があるんじゃないのかい? よかったら教えてはもらえないかい?」
 と船頭がいうと、
「いや、それはできない。申し訳ないが」
 ということであった。
 今までの船頭であれば、武器を突き付けてでも、聞き出そうとするのだろうが、まったく怯むことのない男を見ていて、却って、こっちの方がタジタジになっているのを感じると、それ以上は聞けなくなった。
――この男、只者ではない――
 と、話をするうちに、どんどんその思いは強くなっていったのだった。
「今の時期、海も荒れることが多いので、慎重にいかなければいけないので、すぐにといわけにはいかないが、それでもいいかい?」
 と言われた男は、
「ああ、任せた以上、そちらに従うだけさ」
 と、男の性根は座っているようだった。
「そうか、今のところ、四、五日くらいはかかるだろうと思っているが、様子が変わってくれば、教えるとしよう」
 と船頭は言った。
「ところで、船頭の連中は、こうやって船がさせない時は、どうしているんだい?」
 と言われると、船頭は、
「俺たちの本職は確かに船頭なのだが、それだけではやっていけない。農家を手伝ったり、武士のところで、剣術を教えてもらったりしているんだ」
 というではないか。
「ここの殿様は誰なのかな?」
 と言われて、
「中江弘忠様です」
 と答えたのを聞いて。
作品名:歴史の傀儡真実 作家名:森本晃次