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歴史の傀儡真実

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「ああ、彼は勘違いされやすい人間というよりも、むしろ、相手に勘違いをさせることに長けているんですよ。それをわかっているかいないかで、戦国の世を生き抜いていけるかどうかだということなんでしょうね。私は外から見ているので、他人事のように見えているんですが、でも、他人事のようにして冷静に見るというのも大切なことではないかと、いつも信長には教えられている気がするんだ」
 と、信定は語った。
「じゃあ、信長さんは、鉄砲の重要性を知っているということですか?」
「ええ、そういうことになります。鉄砲というのは、実際に使ってみると、結構、最初は大変です。まず、あの重たさ、そして衝撃からの反動、さらに、煙も出るので、その時に急に目の前が見えなくなることだってあります。そして、やってみれば分かりますが、打ってみると、次に打ち出すまでに結構時間がかかります。それが鉄砲の最大の弱点になるんですよ」
 と、信定は話した。
 確かに、鉄砲というのは、持つのが大変そうに見える。そして、あの音と反動はすごいものがある。下手をすれば、鼓膜が破れないか、気にしなければいけないくらいである。
 まだ、桶狭間を戦ったくらいの頃の信長なので、自分が将来、長篠の合戦で、
「鉄砲の三段撃ち」
 というものを開発するなど、思ってもいなかっただろう。
 ここにいる人間も、
「皆そうに違いない」
 と思っていたのだろうが、実際には、信定は鉄砲の使い方を研究しているようだった。
 そういう意味では、信長よりも、信定のほうが、鉄砲について精通していて、ひょっとすると、本土の人間よりもたくさん所持しているのかも知れないと感じたのだ。
「信定殿は、鉄砲を相当所持しておられるのかな?」
 と聞くと、信定がニヤリと笑って、
「ハッキリとした数は言えないが、少なくとも信長よりもたくさん持っているさ。それはそうだろう。こっちは、イギリス人と、スペイン人から輸入できるし、さらに、鉄砲鍛冶も充実しているからな」
 といった。
「じゃあ、今なら信長と戦をしても勝てるんじゃないですか?」
 と聞くと、
「それは分からない。なんといっても、本土とこの蝦夷地とでは、条件がまるで違う。なるほど、こっちで戦をすれば、負ける気はしないだろう、しかし本土での戦となると、こっちは自信がない。それを考えると、どっちが強いかなどというのは、まったく考える余地もないくらいではないだろうか?」
 というのだった。
「ひょっとして、信定さんが、信長に、鉄砲の時代が来ることを教えたんじゃないですか?」
 と聞くと、
「もし、そうだとして、私にどんな得があるというのかな?」
 と聞いてきたので、重光は少し考えたが、
「信長に天下を統一させるためですよ。もし、他の武将が天下を統一すれば、いつかは、この蝦夷地を侵略にやってくる。そんなことにならないように、親戚同士の二人が協力すれば、本土は信長が、蝦夷地はあなたが支配することになる。それぞれだと難しいだろうが、お互いに、利害関係を一緒にして、手を握れば、いいとこどりができるんじゃないですか?」
 と、言った。
「確かにそうなんだけど、私は、実はこの蝦夷地を自分の手に収めようとは思っていない。実際に南部だけで十分だと思っている。しかし、北部にロシアが干渉してくるのは困ったことなんだ。だから、北部に目を光らせているが、本土はさほど気にしていない」
 といった。
 この時代に男として生まれてきて、野心を持つことのできる立場にいる人は、天下を一度は夢見るはずだ。
 しかも、日本本土の群雄割拠を征服するわけではない。蝦夷地だけであれば、できなくもない。
 それなのに、まったく興味を示さないということは、そう見えるだけなのか、恐怖の裏返しで、何も考えていないように見えるのかも知れない。
 信長は、あれだけ野心家なのに、その親戚が、野心を持っていないといえるだろうか。
 もし持っているとすれば、隠しておく理由があるからで、それがどのような理由なのか、分かる気がするが、野心を持っていないといけないという理由としては。この国の裏に潜んでいる、
「イギリス」
 という国を意識しなければいけない。
 見ていると、どうしても、この信定の体制は、イギリスによる、
「傀儡国家」
 なのではないかということである。

                 傀儡国家

 歴史上、傀儡国家と呼ばれるものが、存在した。その多くは第二次世界大戦における国家であり、特に、大日本帝国が樹立したものが多かった。
「傀儡」
 とは、
「操り人形」
 のことで、海外勢力である文、
「操る側の人間」
 がいて、元々そこにいたその国家の主権者である、
「政権」
 というものは、そのまま存続するというものである。
 しかし、大航海時代におけるヨーロッパなどが行った政策は、元々いた先住民の政府を破壊して、そこに自分たちのルールに則った政府を樹立するということだ。当然主権は、征服した側にあり、征服された側の先住民は、無理矢理に従わされるということになる。
 要するに、
「侵略された」
 ということになるのだ。
 しかし、傀儡国家というのは、少し違う。
「侵略された」
 という意味では同じなのかも知れないが、表向きは、今まで通りの、
「独立国家」
 という様相を呈している。
 しかし、元々の主権者には、その力はなく、主権者として君臨しているが、あくまでも、侵略した側の政策通りにしか動くことのできない。
「見かけの政権」
 なのである。
 どうして、傀儡国家などというものが、存在するのかというと、大東亜戦争時代の大日本帝国を考えれば分かることである。
 当時の世界情勢は、東南アジアのほとんどの国は、欧米列強の侵略を受け、侵略してきた国の作った政権が存在した。それらの国は、侵略してきた国の占領下にあり、元々あった先住民のおける、当地の方法や文化は崩壊させられ、占領国の政府が新しく樹立されることになる。
 そんな状態のアジアを、
「解放する」
 というスローガンを持ち、日本は戦争を始めたのだった。
 日本側の目的は、東南アジアに存在する資源の確保、そして、傀儡国家として樹立した満州国は、日論戦争において獲得した満州鉄道の支線から、その周辺を支配することで、ソ連の脅威の排除という、安全保障面からの問題と、さらにもう一つ、さらに切実なる問題として、
「世界恐慌と、人口増加問題を、満蒙問題と一緒に考え、満州を平定することで、一石二鳥の開設を図る」
 というものであった。
 当時、中国の一部だった満州地区であったが、満州鉄道とその保護に必要な地域は日本の統治下にあった。しかし、中国側が、満鉄の支線に、中国独自の鉄道を建設し、満鉄を脅かしてくる。それらの問題と、前述における、人口問題として、日本から移民を受け入れる土地の確保という問題のために、満州事変をでっち上げたのだ。
 国際連盟による、
「リットン調査団」
 は、これを、
「日本の自衛権の行使には当たらないとして、満州国を否認する決議」
作品名:歴史の傀儡真実 作家名:森本晃次