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歴史の傀儡真実

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「二人は、これが見えるところまで来られよ」
 と言われ、二人は世界地図を目の前にして、四人で対峙することになった。
 当時の地図なので、当然、アメリカ大陸はない。ヨーロッパとアジアが両端になっていて、
「ここが、イギリスだ」
 と言って、ヨーロッパの中に小さな島国を指刺した。
「イギリスというのは、島国なんですね? 小さいですね」
 というと、領主は笑いながら、
「ここが、日本だ」
 と言って、逆の方の地図の右端の豆粒のような島を指刺した。
 下手をすると、イギリスよりも狭く見えるくらいだった。
「こんなに狭いんですか?」
 というと、
「ああ、そして、この地図には、この蝦夷地というのは載っていないんだ」
 という。
「じゃあ、ヨーロッパというところでは、蝦夷地を認識していないということでしょうか?」
 というと、
「そういうことになる。そして、これがロシアという国だ」
 と言って、彼が指で、その範囲を示すと、何と、その大きな地図の上の半分のさらに半分くらいを示した。下の方は海が多いので、北部に集中する陸のうちのほとんどがロシアというではないか。
「何と。こんなに大きな国だったなんて」
 という。
「ただ、ロシアという国は、この地図において、上の方というのは、とにかく氷の世界と言ってもいいくらいに、寒いところなんだ。この蝦夷地が寒いといっても、それとは比べ物にならないくらいなんだ。何しろ、冬の間は、海が凍ってしまうので、船がさせないというくらいなんだ。想像もできないだろう?」
 と言われて、ビックリしてしまった。
「でも、そんな国が何かしようと考えているんですか?」
 と言われ、
「実は、ロシア人は、朝鮮を自国の支配下に置きたいと思っているようなんだ」
 という。
「朝鮮をですか?」
 と言われ、
「私も朝鮮というところをあまりよくは知らないんですが、どのような国なんですか?」
 と聞かれて、
「寒いところではあるが、港もしっかりしていて、半島なだけに、艦隊の基地を作ることができる。ロシアは、凍らない海を求めているからね。そしてそれともう一つ、朝鮮を手に入れたいという理由の一つに、明国に対しての野心があるからなんだ」
 というではないか。
「明国ですか?」
 と言って、地図に目を落とした重光を見て、
「明国というのは、これだ」
 と言って、地図の中で国境を指でなぞった。
「明国も、結構でかいですね?」
「そうなんだ。この明国をロシアは、侵略しようと考えている。ただ、あまりにも大きすぎるということと、民族性もよく分かっていないことから、朝鮮を占領して、そこから、明国を挟み撃ちにしようと考えているようだ」
 というのだ。
「なるほど、前線基地とでもいう感じですかね?」
「そういうことになるな」
「でも、そんなにでかい国を作ったとしても、本当に統治できるんですかね?」
 と言われて、
「明国を、属国のようにすればいいだけのことさ。政府としての機能は持たせたまま。占領して、そこからの貢物を得ようという考え方なんだろうね」
 と彼は言った。
「その計画を、イギリスが気づき、先手を打とうと、この蝦夷地に、ロシアの攻撃用の基地を作ろうとしたんだが、この島に来てみると、何と、北部から、東部にかけて、ロシアの前線基地がすでにできていたんだよ。イギリスもさぞかしビックリしたようなんだ。なんと、ロシアは、まずは、明国と手を結んで、朝鮮を挟み撃ちにして、ロシアに与えるということだったんだ」
 というではないか、
「でも、それだと、明国は何も得るものはないじゃないですか?」
 というので、
「いや、ここにモンゴルという地区があるが、ここをロシアが、占領したのだが、そこと交換条件ということだったんだ」
「なぜ、明国は、朝鮮を捨ててまで、モンゴルが欲しいんでしょうかね?」
 と聞くと、
「モンゴルは国土も広いし、ロシアとの間の国境にあるので、明国が領有していれば、少しロシアの侵略からの防波堤になると考えただろうね。それともう一つ、日本は、鎌倉時代に、元寇というのがあったのを知っているかい?」
 と言われて。
「ええ、中国の元という国がアジアの征服を図った中で、日本も侵略しようとしたということでしょう?」
「ああ、そうなんだ。その元が衰退し、出てきたのが、明という国なのだが、明の民族は、その時の元の民族に恨みを持っていて、撃滅したいと思っているようなんだ。そして、その民族というのが、モンゴル民族なんだよ」
 というではないあ。
「ということは、元が衰退して、彼らはモンゴルという国を作ったということですか?」
「ああ、そうだ。だが、その国もすぐにロシアに狙われ、合併の憂き目にあったわけだが、そもそも、そのモンゴルの国の領地は、非武装中立の場所にあったのだが、それをロシアが、無理やり合併してしまったんだ」
 と言った、
「まさかとは思いますが、ロシアはその合併を、今回の最終的な明国侵略の第一段階として考えていたなんてことありませんかね?」
 と聞くと、
「それは分からない。しかし、もしそうだったとすれば、ロシアというのは、本当に恐ろしい国だといえる。だから、彼らが朝鮮半島を狙っているのを、我々としては、黙って見過ごすことはできないと、イギリス人はいうのだ。彼らは、今、アジアに勢力を持とうとして、その時期を虎視眈々と狙っている。今はアジアでは、スペインやポルトガルが強いんだが、いずれは、イギリスやフランスも狙っているんだ。
 彼らは、このアフリカから、インドを通って東南アジアと呼ばれる地域をかすめながら、日本や、大陸を目指している。しかし、ロシアは、内陸を通って、シベリアという地区から、南下していき、明国を見ているんだ。だから、今までは、ロシアと対立することはなかったのだが、朝鮮や、明国を見ているとすれば、話は別だ。特に、明国は、他の欧州の国からも注目されていて、どこが先に影響力を持つかということになっているんだ」
 と言っている。
「じゃあ、イギリスが黙っていないということですね?」
 とうと、
「そうなんだ。だが、今イギリスは、インドのあたりの問題も抱えているので、朝鮮に力を持ってこれない。そこで、ロシアに対抗するために、蝦夷のこの土地に、要塞を築き、ここからロシアを監視しようと思っているようなんだ。ただ、要塞を築いているうちに蝦夷地の北部と東部の一部は、安全にロシアに占領されてしまった。そういう意味で、今の蝦夷地は、ロシアとイギリスの利権の元、真っ二つに分かれてしまったということになるんだ」
 という。
「この蝦夷地の南部には、イギリスの影響はないんですか?」
 と聞かれて、
作品名:歴史の傀儡真実 作家名:森本晃次