「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」
「だから、我々は国家主義ではなく、自由主義として、自分たちで各々強くなり、後で、有事には軍隊として結成されればいい」
と考えていたのだが、
「それが、クーデターを起こした国なのか?」
と考えたが、しょせんは、自分勝手な国民が、自己保身のためだけに動いているといっても過言ではないだろう。
超原始的な世界
かつて、奴隷を使っていた国がこの地区でもたくさんあった、東南アジアの発展途上国がたくさんある中で、インドネシアとフィリピンと、それぞれ少し先にある島国があった。国土としては、東京都よりも少し狭いくらいの島だが、昔は原住民だけがクラス。まるでブッシュマンのような島だった。
そこでは、文明から隔絶されて、かつて、どこの世界にも存在した奴隷の、いわゆる発掘地区でもあった。
白人どもが、定期的に奴隷狩りにやってくる。原住民は、言葉も通じず、文明というものから完全に切り離された世界に住んでいて、ただ、奴隷として生きるために生まれてきたかのような生活が、ある程度成人した人間には科せられるのであった。
奴隷とされた民族は黒人である。ほとんどの人間が天然パーマが掛かっていて、それは男も女も同じであった。衣服も草の腰巻のようなものだけで、手には槍を持っているという、いかにも、数百年前の土人という雰囲気で、その様子から、いかにも、
「奴隷」
という雰囲気だった。
今でもそんな種族が存在していて、それこそ、空を旅客機が飛んでいたとして、槍で撃ち落とそうとするようなシーンが見られそうな種族であった。
昔であれば、
「奴隷狩り」
と言われる連中がやってきて、定期的に奴隷が買われていったのだろうが、今は人権問題から、奴隷として、本国に連れて帰るということもない。
今の時代にはそもそも、奴隷商人などというのは存在しないのだが、まったく進化することのない未開人たちが存在していた。
今では、近隣の島からでも、先進国に、
「留学生」
などという名目にて、彼らは出稼ぎに行っているのだった。
中には、不法滞在の連中などもいたりするが、安い対価での労働力ということと、本国の若者が、なかなかつきたくないような職業でも、彼らであればやるということで、貴重な人材として、国内に、彼らのような連中が蔓延るようになるのだった。
最近は、だいぶマシになってきたが、少し前までは、
「洋式トイレの使い方も分からない」
ということで、完全な未開人というイメージであった。
そんな彼らを見ていると、本当に昔の映画に出てきた、
「ブッシュマン」
を思い出す。
こんな未開人たちを、昔の帝国主義では、国内に連れてきて、奴隷として扱っていたのだろう。
もちろん、今では奴隷制度などはやっていないが、
「留学生制度」
というのはいかがなものだろうか?
東南アジア系の連中が結構先進国にきていて、働いている。いい悪いの問題もあるだろうが、国家は推奨しているようだ。
しかし、数年前に起こった、世界的な伝染病によるパンデミックのため、水際対策ということで、入国も出国もできなくなった。
そのせいでというか、そのおかげでというか、外人が入ってこなくなったのは、よかったのだろうか。
日本などは、海外からの連中を、留学生としても、労働力としても、観光客としても大いに受け入れる政策だったものが、根本から変わっていったのである。
ただ、あの連中は、国内でロクなことをしないということで、嫌いだと思っている人も多いことだろう。
「やはり、何かを買うにしても、日本人から買いたいものだ」
と言っている人が多いと思う。
外人どもを受け入れる体制のところも多いだろうが、基本的に外人が嫌いな人も結構いる。
それこそ、幕末に生きていたら、間違いなく、
「攘夷運動をしていたことだろう」
と思っているに違いない。
尊王に関しては難しいが、攘夷は間違いないに違いない、
そんな国よりもさらに奥まった島が、独立国を作っているなんて、誰がしるだろう。
その国が、前章で紹介した封建的な国連委任統治国家だったのだが、その国が財政的に落ち込んだことで、島の一つを売却することに決めた。
最初は、欧州の二、三の国と、アメリカが委任統治に名乗りを上げたのだが、実際に調査してみると、
「これほどの未開の地が、世界に存在していたとは」
というほどのひどい国であった。
欧州の国が最初に見切りをつけ、アメリカも議会の賛成を得られなかったということで、領有を断念したのだったが、そこで名乗りを上げたのが、欧州の中でも、それほど大きくない国だった。
この国自体が、そもそも、大国から数十年前に独立を果たした国であって、まだ、独立後の混乱がやっと収まったくらいのところであった。
彼らは、国連で承認を得て、補助金を国連からもらえる契約で、統治を任されることになった。
この国は目立たなかったが、実は独立に際して、他の国から、それぞれの部門、例えば治安、行政、教育、財政などのプロフェッショナルを引き抜いてきて。彼らのおかげで、「もっとかかるのではないか」
と言われた、国家の安定を、十年とちょっとで成し遂げたのだった。
元々専門家の人たちというのは、過去に自国のクーデターに巻き込まれ、強制的に国家に拘束された経験のある人ばかりであった。
彼らを引っ張ってきて、国の債権を依頼したことで、早く国家の体制が生まれることになったのだ。
今では彼らが、初代の主要大臣として新しい国家を作っている。前の国から独立したといっても、まったく違う国を作るという目的であっただけに、前の国の影響はほとんど受けていない。
ただ、この国の国民レベルは、致命的といってもいいほど、酷いものだった。
前述のように、空に旅客機が飛んでいると、槍で撃ち落とそうとするくらいの国民性だ。
下手をすると、
「部族の中には、いまだに人食いがいるかも知れない」
と言われるほどで、旅行などはもってのほかで、この国にやってくる人間は、国連の人間か、国家に用のある人しかこない、来るはずはないのだった。
この国の独立の際に、一番最初に整備されたのが、飛行場だった。文明という言葉とは隔絶された世界であったから、飛行場どころか、空を飛ぶということ自体、信じられないという人たちばかりだ。
だから、他との交通は船しかない。しかも、かつての本国としか、定期便はない。だが、実際には、この国には、誰も使っていないために、今は雑草に覆われてしまっているので、誰も知らなかったようだが、巨大な森になっているところは、かつて、空港が存在したのだ。
その空港を整備したのが、旧日本陸軍だった。
彼らは、大東亜戦争にて、南方資源の確保のため、マレー上陸作戦を敢行したが、実にうまくいった。シンガポールの陥落、さらにインドネシアにある油田の確保、当初の目的は十分に果たせた。
しかし、戦線が拡大してしまい、伸びきったことで、物資の輸送などがままならなくなってしまうことは分かっていた。
作品名:「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」 作家名:森本晃次