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「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」

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 元々は一つの国が欧州の帝国主義国家の植民地になっていたが、独立した際に、独立の混乱から、クーデターが起こり、元々の国が独立したはいいが、軍事主義国家と、封建国家の二つの国に分裂した。
 最初は、軍事主義国家の方が、国家統一を目論み、いきなり封建国家に侵攻したが、それを国連が避難したことで、軍事主義国家は、一気に悪者になってしまった。
 彼らも意地があるからか、侵攻をやめることなく、国境に軍事力を集中させ、強引に国家の統一を図ったのだが、国連の方にも意地があり、多国籍軍を組織し、一気に介入したのだ。
 国連に介入されてしまっては、軍事国家もどうすることもできず、結果、撤退することになった。
 信仰された封建主義国家は、混乱してしまったが、この国の単独統治を申し出る国はいなかった。
 なぜなら、軍事主義国家に気を遣って、統治を言い出せないのだ。軍事主義国家と国交がある国がほとんどで、武器を買ってくれ、経済的にも兵器輸出国がなくなることは困ることであった。
 さらに、下手に統治をおこなって、こちらが侵略されるというのは、本末転倒だったからだ。
「そんなところに介入するなど、冗談ではない」
 という国家はほとんどだったのだ。
 結果、国連という組織の中で、
「統治部」
 というものがあるとすれば、その組織が、国連安全保障委員会という組織から、委任される形での、不規則で直接的ではあるが、委任統治のような歪な体制を、
「国際的委任統治の体制」
 というのであった。
 実質上の統治は、国連の機関なので、国連加盟国はもちろんのこと、加盟していない国でも、
「国連に歯向かう」
 ということになり、まるで、
「錦の御旗を敵にする、朝敵」
 ということで、賊軍になるようなものだった。
 つまりは、
「世界全体を敵にまわしてしまう」
 ということであり、たかが小国一国のために、自国の運命と荒廃を委ねるわけにはいかないのだった。
 したがって、国連機関の実質、独占統治による自由主義国家という触れ込みで、独立したのだった。
 だが、いつまでも、国連が介入するというわけにもいかず、委任統治ということは、必ず、統治なしの独立国家としての体制を整えなければならず、何とかやっと最近、名実ともに、独立国家の体裁が整ってきたのだった。
「我々、独立国家として成立はしたが、まだまだ小国なので、国連の支援を願いたい」
 ということで、政府の成立、そして落ち着くまでということで、独立してから、二年という期限付きで、国連が介入し、軍事面でも、国連軍が駐留していたのだ。
 その間、この国は、何をとっても弱小の国であったが、経済面では、少し持ち直しているようだった。
 元々は鎖国をしていた国だったので、開国をすることで、海外の文化が入ってきた。
 この国には資源が存在することも、国連の調査で分かったので、この国の産業として大切な輸出資源となった。
 ただ、そのことを統治中の国連にも漏れてしまったことで、独立の条件として、その資源の最大の輸出先を国連と定めたのだ。
 その資源が次第に重宝されることが研究によって分かってきたので、この国との国交を結ぼうとする国が多くなってきた。
 この機に乗じて、国家が発展するわけではなく、国内の資本家が設けることになったのは、前述のとおりであり、国家としてうまく煽てて、自国への資源輸入ルートを確保するという状態になったのだ。
 それぞれの国は、国家の一投資家と手を結ぶといういびつな恰好になったことで、投資家が次第に財閥化していき、しかも、諸外国の思惑がバックについていることで、この国は、
「いつクーデターが起こってもおかしくない」
 と言われるようになっていた。
 バックの諸外国からの戦争になった時の援助ルートはできあがっていたので、あとは、いつ火が付くかということだった。
 国際法上としては、絶対に戦闘行為を行う場合に、いわゆる、
「宣戦布告」
 というものをしなければいけないという決まりはなかった。
 宣戦布告というものは、自国民に対しての宣言である、
「詔」
 というものと、国際社会に対して行う対外的な意味合いとがある。
 詔というと、日本の場合には、
「天祐を保全し、万世一系の皇祖をふめる、大日本帝国天皇は、忠実勇武なる汝、有衆に示す」
 というところから始まる。
 つまりは、簡単にいえば、万世一系の系譜のある大日本帝国の主権者である天皇が、忠実かつ勇武である臣民に対して、命令するということになるのだ。
 その後は、国際法に背くことないようにしながら、陸上海上において、死力を尽くして、戦えということであり、その際に、あらゆる手段を用いても構わないという内容である。
 その後に、戦争を起こす経緯を説明、つまりは、戦争理念というものである。
 これが、詔であり、主権者である天皇が決めた宣戦であるということになるのだ。
 諸外国に対しての、宣戦というのは、文字通り、
「自国は、○○国を敵として戦う」
 ということを、全世界に知らしめるということである。
 これは重要な意味を持つものであって、宣戦布告がなされると、第三国と呼ばれる国は、速やかにその体制を示さなければいけない。
「A国に味方する、あるいは、B国に味方する。あるいは、中立の立場を貫く」
 ということである。
 第三国が中立してしまうと、片方の国に、軍需物資を供与することが難しくなり、もし、中立を宣言した国が、自国の命運を担っているのであれば、宣戦布告をしてしまうと、自分の首を絞めてしまうということになるだろう。
 そのことが分かっていると、
「宣戦布告をしてしまうと、自国が不利になってしまう」
 ということで、わざと宣戦を布告しないまま、戦闘状態に入ったことになる。
 国際法上では、その場合は戦争と言わず、事変であったり、事件として片付けられることになる、
 戦争であれば、世界規模の大戦となり、事変であれば、あくまでも、地域紛争という事態にすぎなくなってしまうのだ。
 だから、この国は、独立後に戦争というものを起こしたことはないことになっているが、実際には紛争や事変などは結構あったりした。
 戦争といってもいいくらいの事態にまで陥ったのだが、あくまでも代理戦争的な要素があったので、大っぴらに戦争にしてしまうと、混乱に乗じて、自国が滅亡してしまう可能性が高かった。
 それを考えると、
「戦争にしてしまい、事を大きくすることは、自国の滅亡を意味することになってしまう」
 ということで、避けなければならないことであった。
 ただ、この国の軍備は、さすがに元々の分裂した軍事国家には劣るだろうが、軍は弱いわけではない。何しろ元々は軍事国家の一部だったからだ、
 しかし、弱いというのは、指揮官などの官僚を、皆隣国の軍事国家に取られてしまったので、軍に強さはあっても、統率能力がなく、結果的に、国家を担うだけの軍隊を作り上げることはできなかったのだ。
「下手をすれば、あっという間に攻め込まれて、首都は陥落させられるに違いない」
 と言われていた。