「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」
ただ、名前だけは、いかにも怪しい集団というべき名前で、どちらかというと、名前だけが、空回りしていて、必要以上に、一定の限られた範囲内でだけ、不安にさせているのだった。
その組織が、空回りし、その場にとどまっているかのような状況を、組織は想定したということであろうか?
まるで、禅問答をしているかのように見える組織の形は、かなりの幅を持っての、行動のように思えるが、それはあくまでも、そのように見えさせるために、カモフラージュなのかも知れない。
「きっと何かの大きな目的を持っているに違いない」
と考えられる。
とりあえずは、今は狭い範囲だけ、つまりは、原始的な島でとれる麻薬に対しての暗躍から始まっている。同時多発的に他の世界でも、行動を起こしているのだろうが、それが、何かを隠すためだということが目的ではないか?
「木を隠すなら、森の中」
ということなのかも知れない。
「路傍の石」
と同一の意味なのかも知れない。
彼らが、今、目立ってはいけない理由に、もう一つあって、それは、今が発展途上だということだ。目的は何であれ、見つかってはいけない理由がそこにあるということが重要なのである、
組織が生まれた経緯として、まず、この島が独立した時、他のと東南アジアの国とは違って、特殊だったことが問題だった。
細かいことは説明すると長くなるので割愛するが、そのせいもあってか、国連からの統治を受けても、完全に立ち直れなかった、そのせいもあって、やむを得ず、今の国家を残すため、原始的な島国を分割することにした。
しかも、急速な改革を行わないと、生き残れないという問題もあり、切り捨てられた方の島は、数十年、誰の統治も受けない島だったのだ。
その間に、実は、日本兵が潜んでいたのだが、もちろん最初から、横田少尉だけだったわけではない。他にも日本兵は残っていたのだが、定期的に、国連に連行された人がいたのだ。
最初は旧日本陸軍が、三十名ほどいた。それが定期的に移送されることで、残った兵士は、次第に島の人間に染まっていくようになった。彼らは、生き残るための方法を学び、さらに、この島の秘密も知ることとなる。それを、
「クレージーカルチャー」」
という組織に洗脳され、彼らの思いのままに誘導されるようになった。
組織は、最先端の医学とともに、精神科の知識も持っていた。
いまだに世界のどこでも、解明されていない心理学的な症候群の解明など、すでになされていて、しかも、潜在意識を引き出すことができる機械も開発していたのだ。
催眠術のようなものでも、機械によって掛けることができたり、記憶喪失も、ほとんど、機械を使って、取り戻すこともできるようになっていた。
だから、この世界でとれる麻薬は、その機械の効力を引き出すために、摂取することで、人間をコントロールしたり、その人の記憶を書き換えることすらできるのだ。
それは、本人が忘れてしまっているはずの潜在意識についても同じことで、その機能を使って、世界の最先端医療に革命を起こそうと考えていた。
ただ、これはあくまでも、大きな目的のためのデモンストレーションに過ぎない。
「それくらいのことなら、十数年遅れて、一般の世界にだってできるくらいのことだろう」
というのだった。
それくらいのことで、この組織は暗躍しているわけではない。もっと、大きな目的があるのかも知れないが、幹部の人のさらに、一部の人間しか知らない。
「我々の考えていることは、ある意味、人類の究極のテーマを実現することに近いだろう」
ということであった。
「不老不死」
あるいは、タイムマシンを使って、過去や未来へ行けるようになる。
というような、今のところ、研究が途中で大きく頓挫していることなのではないだろうか。
不老不死であれば、死なないということでの、生態系や、社会の仕組みを根本から壊してしまうという考え。
さらには、タイムマシンの場合には、
「タイムパラドックス」
と言われる、矛盾であったり、理不尽なことが裏に潜んでいるという逆説の問題であった。
それこそ、
「タマゴが先か、ニワトリが先か?」
さらには、
「ゼロ除算」
というべき、数学では、あってはならない計算方法に至るまでの、いわゆる、
「禅問答」
のようなことを、解明することなのであろうか?
いや、解明することで、それまで見えていなかった何かが見えてくることで、解決する問題を、いかに見つけるか? ということが、彼らの目的に近づくことであった。本当に、理解不能な問題と言えるのではないだろうか?
大団円
彼らの組織が暗躍することで、世界がどうなるのか、今のところ分からない。
彼らの目的が分からないというのもあるのだが、麻薬を生産する植物が、かなり島で大きな需要になりつつあるということが、組織の中で問題になっていた。
「君たちが、あの薬に、禁断症状のようなものを伴わないので、それほど蔓延はしないと言っていたが、これはどういうことなのかな?」
と、組織の長が、薬物の研究員に聞いていた。
確かに、彼らが最初に見積もっていた量では、生産を増やすことなく、今の量で賄えると思っていたのだが、ここで生産を始めてから、計画としては、五年で撤収するはずの予定が、今の段階で、二年ほどしか経っていないのに、需要が目に見えて増えてきたのだ。
あくまでも、撤退時には、自分たちがここで何をしていたのかということを、知られないというのが前提だった。
それがあるから、この島で薬を使って、人を活性化させ、人足としての活力にすることで、財を成すという計画だったのに、もしそれが叶わずに他の組織などがこのことを知ってやってくれば、そいつらが利用してしまうことになる。
万が一そんなことになるようだったら、
「麻薬の基礎になる植物を、存在からしてなかったことにするように、すべてを刈り取って、そして、加工場や資料、その他をすべて、証拠が何も残らないようにするというのが、最悪のシナリオの結末だった。
この情報をもたらしてくれたのは、実は横田少尉からだった。
横田少尉は、シナ事変が起こってすぐ、一時期、満州のハルビンにいたのだ。その時は、本人も知らなかったのだが、いた部隊は、731部隊だったのだ。
いわゆる、
「関東軍防疫給水部本部」
と呼ばれているところで、そこでは、細菌兵器の開発、毒ガスなどの、それらの兵器が人体にもたらす影響を調査したり、新たな兵器の開発のための、人体実験が行われていたのではないかと言われているところであった。
所在地は、かつての日本の傀儡国家として成立していた満州国、最大の都市といえる、ハルビン郊外にあったのだ。
そこでは、朝鮮、中国、ロシア人などの捕虜に対し、人体実験を主なっていたという、
あきらかな
「ハーグ陸戦協定違反」
を犯していたと言われているが、実際には、終戦前に関東軍の手によって、一切の証拠となる施設、資料、さらには捕虜の証拠を一切隠滅したことによって、実際のところは、闇だと言われている。
元々、米英蘭に対して宣戦布告を行った大東亜戦争では、
作品名:「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」 作家名:森本晃次