「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」
彼らが大日本帝国においての、特高警察のような役割であった。
次第に特高警察が大きくなって、陰で暗躍できなくなってくると、今度は、原始的な島の方で暗躍することになった。
一度は手放した島であったが、後から考えると、資源の問題、労働力としては、実に金になるものを手放したことになり、少し後悔があった。
そこで、
「我が国が養成してきた秘密警察を、そちらの島の治安維持に役立てたい」
ということで、国連や、委任統治委員会の許可を得て、晴れて、島に派遣することになった。
「ここまで権力を与えなくてもいいのではないか?」
という、国連の常任理事国の連中からも意見としえは出たが、しょせんは、他国のことであり、下手にいうと、
「内政干渉だ」
と言われかねない。
下手に内政干渉をしてしまうと、
「そんなにいうなら、貴国が、我々に変わって、統治をお願いしたい」
と言われると、どこの国も、他国に支配を広げられるほどの余裕はなく、自国の安定が一番大切であるということで、余計なことは癒えなくなってしまうのだった。
そんなぐうの音も出ないような状態を作りあげると、あとは、他の国に承認させるのは、難しいことではなかった。
何しろ、警察を派遣しようと言っている国というのは、国連の機関によって、委任統治されている国家ではないか、他国がとやかく言えるような立場でもなければ、とばっちりを受けてしまうのも、困ったものだったのだ。
委任統治されているという国家のわりに、国連でのここまでの強気な態度に、他国はすでに萎えていたといってもいいだろう。
「先手必勝」
相手をビビらせてしまえば、その時点で、こちらの勝ちなのだ。
秘密警察が政治に絡んでくると、本当は危ないということは他国も分かっているのだろうが、彼らが何を考えているのか想像もつかないので、今、この国を責めても、どうにでもなるものではない。後々になって、自国の災いのためにでもなってしまうと、それこそ、本末転倒なことである。
国連でも、何とか通過させることができると、あとは簡単だった、
「国連が許可した」
ということで、もう誰も、そんな原始的な島のことを気にするところもないだろう。
後は、国家ぐるみではなく、民間企業に、国家レベルの仕事をさせればいいのだ。
形は民間であるが、国営のごとき権力を与えた企業。他の国にはそんな企業はないかも知れない。
国営にしてしまうと、国家が金を出さなければいけなくなるからだ、
ここは、金を出すことはしないが、国営としての権力を与えるというもので、なぜそんなことができるのかというと、他にライバル的な会社がないからだった。
そうなると、外野には、
「何かおかしい」
と感じる人はいなくなる。
つまり、ここでは、
「いかに、陰のように、秘密裏に進めるか?」
ということがカギになってくる。
他の企業とはまったく正反対の動きをすることで、怪しまれないような状況を作るという、一種、不可思議なことによるカモフラージュだといえるのではないだろうか。
実は、今もう一つ、暗躍している国家があった。
その国家は、最近までは後進国であり、やっと発展途上となった国で、これから世界に出て行こうとするところなのだが、それはまるで、明治維新の頃の日本と似たようなところであった。
今から十数年前まで、その国は鎖国をしていた。
といっても、日本や朝鮮がしていたような鎖国ではなく。元々、他の国の属国であったものが、独立国になったことで、鎖国せざる負えなくなったのだ。
というのも、元々の国が、別れた国と貿易をしないように、他の国に働きかけた。
その国から他国は大切なエネルギーや資源を供給されていたので、逆らうことはできなかった。
そのため、別れた国と、国交を結ぶわけにもいかず、結局は鎖国同様になっていたのだ。
だが、時代が変わって、資源を供給していた国の勢いが弱くなってきた。
資源を供給してもらえるといっても、時代は進み、彼らの資源やエネルギーはすでに古いものとなってきていて、しかも、資源に限界が見えてきたのだ。
そのため、必ずしもその国のいうことを聞かなければいけないという立場関係ではなくなってきた。
そのため、それまでの発言力は次第に低下していき、その国は孤立に突き進んでいたのだった。
その国とは、次第に犬猿の仲になってしまい、国交を断絶するところも出てきた。
そうなると、鎖国させたその国を、開国させることを考えるようになった。
普通であれば、攘夷ということで、今までの歴史から言っても、開国を迫るのは、強引であろうが、悪いことではなかった。
日本が結んだような、不平等条約ではなく、普通の通商条約が結ばれた。
だが、明らかに、他国との差は歴然である。経済や世界の覇権というものが渦巻く中で、今のままでは押しつぶされてしまうということになる。
そこで、急速な方向転換が必要になる。
それが、昔の日本でいうところの、
「富国強兵」
であり、
「殖産興業」
となるのだ。
ただ、先進国からすれば、この国が発展し、軍が強化されることは望ましくなかった。
「出る杭は打たれる」
というべき状態において、先進国が頭から抑えつけておこうという考えがあからさまに出ていたのだ。
そうなると、先進国に対して、
「もう少しで先進国の仲間入りができるかと思ったが、実際に、その距離は思ったよりも遠い」
と考えた、発展途上で、先進国に近い国は、この急進国を使って、自分たちの優位な世界を作ろうという暗躍があった。
急進国の方も、そんなことを知らないまま、暗躍して自分たちの力を蓄えようとしているのだから、まわりから見ると、ちょうど、先進国に近い国がオブラートになって、暗躍している急進国の様子が隠れて見えないという、効果も表れていたのだった。
彼らは、進んで他の世界を見分することにした。自分たちの国を富ませて。、他の国とも対等になろうとした。もう資源にばかり頼っているわけにもいかなくなったことで、
「技術を輸入して、成果を輸出する」
ということを考えた。
そのため、彼らは、まるで奴隷のごとく、海外ではひたすら下手に出た。
相手は、自分たちが上だと思っているから、下手に出られると、態度としては、
「それが当然だ」
という澄ませた顔をしながら、心の底で、喜んでいる。
そのギャップが相手に油断を生むのだ。その油断というものが、
「まさか、相手が欺こうとしている」
などということを思わせるわけもない。
彼らは、文明が遅れてはいたが、人間的には先進国の人間に勝るとも劣らない頭を持っていた。
むしろ、相手を欺くということにかけては、類を見ないほどの力があるようだ。相手をさらに油断させて、そこから切り込むことが天才的にうまいといってもいいだろう。
そのおかげで、技術だけでなく、いろいろな情報に対しても、苦もなく手に入れることができるようになった。
それは彼らにとって有意義なことで、少なくとも、輸入できるのは、技術だけではなく、情報も手に入れることができるということが分かったというのm、大きな効果であった。
作品名:「軍人の魂」と、「知恵ある悪魔」 作家名:森本晃次