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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 と、普段から考えていることではないことであれば、結構スルーして考えるものだったのだ。
 しかも、ロボット工学には、フレーム問題とは別に、
「ロボット工学三原則」
 というものが存在し、微妙に、フレーム問題とも絡んできていることから、すぐに解釈できるものではないという思いと、それぞれをいかに化学反応させる考えを持っているかということが大切だったのだ。
 フレーム問題とロボット工学三原則というものをいかに化学反応させるかということを考えると、博士は従来の自分の性格が一番よく、
「大胆な考えこそが、絡み合った糸をほぐすのに、一番いいのではないか?」
 と思えるようになったのだった。
 美山博士は、ロボットというよりも、アンドロイドのようなものを考えていた。いわゆる、
「人造人間」
 である、
 フランケンシュタインのようなものに近いのだが、さらに、人工知能を搭載したものである、
 昔の特撮などでは、その不完全な知能のために、心を持った人造人間がロボットの身体を持っているがゆえに、精神的に苦しむという話があった。
 だが、博士はそれらもすべて受け入れた形のアンドロイドを製作しようと思ったのだ。
 そこで一番の問題は、
「心を持つというのが、どういうことなのか?」
 ということであった。
 心というのは知能とは違うものである。
 だから、ここで考えるのが、フレーム問題と、ロボット工学三原則の絡みであった。
 フレーム問題は、たぶん、考えれば考えるほど、泥沼に嵌りこんでしまうだろう。
 ということになると、フレーム問題を解決する最短の考え方は、
「いかに、人工知能を人間に近づけることができるか?」
 ということである。
 目の前の無限の可能性を人間の頭で考えようとするから難しいのだ。人間は無意識に判断できる。ということであれば、人間のように、
「無意識に判断ができる人工知能」
 というものを作ればいいのだ。
 何も人間に近づける必要はないが、人間と同じ構造を持った人工知能を作ればいい。そこで博士が考えたのが、
「人間の脳の移植」
 であった。
 もちろん、生きた人間の頭脳を移植することなどできるはずもない、死んだ人間の頭脳を、移植すればいいことだ。
 当然、法律上は許されるわけはないのだが、それを極秘にやろうというのが、博士の考え方だった。
 博士としては、
「臓器移植というのは、今にも命が危なく、その臓器があれば、生き返ることができるという人のために、移植する人が生前に、死後贈与にサインした人が行う移植のことである」
 では、死にかけている人を救うわけではないが、
「長い目で見て、人類の将来に役立てるために使用するというのと、どこが違うというのだろう?」
 という考えであった。
 その思いが、博士にはある。
 だから、死んだ人の頭脳を、そっくりいただこうというのだ。
 さすがに、脳の移植というのはないので、死んだら何の役にも立たない。
「絶対に役に立たないか?」
 といえば、そんなことはない。
 他にもいろいろな研究に使えるのだが、目に見えた利用方法ではない。
 それを思えば、人造人間の頭脳として、その人の脳は生き続けられるのだから、ある意味、素晴らしいと言えないだろうか。
 ただ、なかなか臓器移植に難色を示す人はたくさんいるが、
「死んでからの自分も、今までのようにまったく役に立たないのか?」
 という、生前に、誰の役にも立っていないということをm気にしている人がいるのも事実のようだ。
 博士はそんな人にひそかに脳の提供を促していた。
 実際に、そのうちの一人の脳の確保に成功した。
「さっそく、人造人間の脳の役目をしてもらおう」
 ということで、脳の移植を行ったのだが、相手が人間ではないことで、拒否反応を起こすことはなかった。
 脳も、新しい、
「人造人間の脳」
 として、新たな命をもらい、それを自分の身体に、生として与えることで、活性化されてきた。
 ただ、問題は、
「脳の中に残った記憶」
 であった。
 これが、もしよみがえって、その人の過去を思い出すことで、自分が本当は人間であったということで、余計な悩みを持ちはしないかということが大いなる懸念だった。
 だが、幸いなことに、その危惧はまったくないようで、数年経ったが、アンドロイドは、余計な記憶を思い出して、余計なストレスを持つことはなかった。
 博士のことを自分の創造主だと信じ、今のところ、博士以外の人との接触は、アンドロイド専属の教育係のみであった。
 実はこの教育係も、アンドロイドで、他の世界とは隔絶されたところでしか行動しないので、フレーム問題も関係ない。それでも膨大なデータが教育係としての頭脳に叩き込まれ、何とか動いていた、
 これも、博士のアンドロイド開発の第一歩だった。
「実に限られた範囲でしか動かないアンドロイドであれば、
「無限の可能性をできる限り狭めたところで利用するようにすればいい。まずは、それができるかどうかから始まらず、いきなり普通のロボットを作ろうとするから、フレーム問題にぶつかるんだ」
 ということであった。
 だから、この教育係ロボットに行きつくまでにもかなりの紆余曲折があったのだ。
 最初は、計算ロボットから始めた。電卓だけの機能しかない知能に、身体をくっつけたような感じである。それを少しずつ増やしていき。やっとここまでできたのだ。
 ここまでできたうえで、博士は、自分の理論が間違っていないということを感じると、
「このあたりで少し飛躍した考えを持たなければ、先には進めない」
 と考えた。
 それが、
「人間の脳をそのまま移植」
 という、大胆な発想であった。
 他の人には絶対に知られてはいけない、超極秘の研究であった。
 この教育係ロボットの秘密も、超レベルの極秘事項だったが、脳全体の移植ともなると、さらに、超超極秘事項だったのだ。
 まずはフレーム問題に説明材料としての実験を行ってみた。
「燃料の入った箱を、洞窟の中から持ってこい」
 という命令なのだが、その下には、
「燃料を持ち上げれば、爆弾が爆発すr」
 という仕掛けがあり、アンドロイドは、その仕掛けを知っているという理屈だった。
 フレーム問題から考えれば、ロボットは命令を受けて、その状況を目の前にして、思考回路が停止してしまったということであるが、それはあらゆる可能性を考えてしまって、動けなくなったのだ。
 今回は、さすがに本当に爆弾を使うわけにはいかない。せっかくたった一個しかない貴重な脳を、爆破に巻き込むわけにはいかない。実験段階で、脳を爆破してしまうなど、本末転倒もいいところである。
 結果からいうと、実験は成功だった。
 アンドロイドは、起爆装置のスイッチが入らないように、最初に持ち上げた燃料を間に身体を乗せて、起爆装置に栓をした。その時、テープを手に持っていて、身体を話す瞬間にテープで止めることができたのだ。
 アンドロイドの性能は、人間の数百倍の精密さで、ほとんどの誤差は生じない。アンドロイドはそれも承知しているので、要するにやり方さえ間違えなければ、何ら問題がないということだった。