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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 それが幸いしたのか、やつらの目的はもちろん、彼らの考え方の一部ではあるが分かってきた。少なくとも、こちらとは、モラルや感情がそもそも違っているということであり、ここからの対策は難しかったのである。
 だが、そこまで分かってくると、急にサイボーグの方が異変を起こし始めた。アンドロイドの方は問題がないのに、どうしたことなのか?
 異常のないアンドロイドに、サイボーグを観察させ、遠隔でその原因を調査していたが、そこで分かったことは、
「どうやら、やつらの作り出す疑似空間というところでは、サイボーグは、耐えられる環境ではないようだ。臓器移植の時に起こる拒否反応のようなものが、今ここで起こっている。このまま放っておくと、サイボーグは、壊滅するか、生き残ったとしても、やつらの世界の存在を脅かすことになるのではないだろうか?」
 ということであった。
 確かに彼らは、こちらのことを考えずに、肉体を盗みにきた。しかし、それもモラルの違いから、まったく悪いとは思っていないのだから、
「罪作りだ」
 ということになるのだろう。

                抑止力と奴隷問題

 疑似空間を使って、サイボーグを精神から切り離し、肉体だけを、自分たちの世界に連れ帰ろうという発想は、やつらの精神だからできることだった。
 こちらの人間としては、いや、厳密にいえば、
「こちらの人間すべてではなく、極秘研究に携わっている連中」
 だけのことなのだが、
「サイボーグと言っても、ロボット化されているのは一部だけで、基本的には、脳をはじめとして、主要な臓器や機能は、生身の人間なのだから、その肉体と精神を切り離すということは、殺人に値する」
 ということである。
 そこには苦痛も伴うことになるだろうし、思考能力のある者から、将来を奪うというのは、本当に殺人に値すると考えてもいいだろう。
 そうなると、やつらのしていることは、危険極まりないことであり、彼らにとって、悪くもないと思っていることを、こちらの人間が強硬に拒むということは、相手にとって、まるで嫌がらせを受けていると感じると、今度は、向こうも容赦しないと考えられる。
 つまり、
「サイボーグでダメなら、今度は本当の人間を襲うことになるだろう」
 という最悪の場合の考えである。
「他の人を守るために、極秘とはいえ、行っているサイボーグ計画を断念し、相手の好きなようにさせて、納得して帰ってもらう」
 という行動にとるかである。
 それは、
「サイボーグを見捨てる」
 ということであり、これほど後味の悪いことは科学者にとってはないことだ。
 屈辱などという生易しいことではなく、ひょっとすると、このショックから立ち直れずに、将来において、唯一無二とも呼ばれるような博士とそのまわりの人間を抹殺してしまうことになりかねないのだ。
 これは、人類にとっての大きな損失になりかねない。
 そういう意味で、最初から簡単にあきらめるのではなく、実際にどのように先に進んでいけばいいのかということを、今以上に真剣に考えていかなければいけないということなのではないだろうか。
 つまり、これがある意味、
「いい機会」
 なのかも知れない。
 新たな考えをもたらすために考えなければいけない時期に差し掛かっているということであり、博士の方としても、国民に、今こそ、サイボーグ計画の話を暴露する時期ではないかとも思った。
 相当なショックであることには違いない。
 だが、言わなくてはいけないことを言わないというのは、科学者のモットーから離れることになる。
「科学者というのは、発明発見したら最後ではない。それらをいかに吟味し、人類の正体に対して、開発してきたものがどのような影響を及ぼすのかということを、人類に示してこそ、開発したと言えるのではないだろうか? それこそが、開発に携わった、科学者としての責任である」
 というのが、モットーだと思っている。
 サイボーグも開発してしまったら、終わりではない。そのメリット、デメリットをしっかり研究したうえで示して、実際に使用する人の進むべき道を示してあげるという、
「トリセツ」
 をしっかり示すことが、科学者の責任としてできるかどうかが、科学に携わる人間のモットーなのだ。
 それができないのであれば、きっと科学者は、開発してしまったことに対して永遠に後ろめたさを持ち、決してポジティブに考えることができなくなってしまうのではないだろうか。ネガティブに考えることが、科学者としての生命を奪い、永遠にその力を発揮できないとすれば、それはそれで、人類にとっての損失である。
 なぜなら、そこから先、時間だけが経過し、発展がない世界がずっと続いていくのだ。
「形あるものはいずれ壊れる」
 という諸行無常がある限り、この状態になってしまうと、あとは滅亡をただ待っているだけだということになるであろう。
 この疑似空間を作っている連中に対して、ある時、
「神なき知恵は、知恵ある悪魔を作ることなり」
 という言葉を思い出した。
 ここでいう。
「神なき知恵」
 の、神というものが、もし、パラレルワールドの住人であるとすれば、彼らに悪気はないとしても、その知恵は、我々にとっては悪魔なのである。
 いかに、理論立てて説明しようとも、基本的なモラルが相手にないのだから、最初から、論理詰めで話し合える土台にないということだ。
 これが、テレビの特撮などでテーマとなる、
「侵略されている地球」
 という発想と、
「勧善懲悪」
 という日本人が特に好む考えとが融合することで出来上がったものであり、
「結びつくべくして結びついたこの発想」
 というものは、空前のブームを巻き起こした理由の一つでもあるだろう。
 ただ、この番組自体は人気があったわけでhなく、その前の番組の人気を買って製作されたが、リアルさという意味、さらに、子供向けの番組としての目的とかけ離れていたことで、途中から人気が急激に落ちて、次回作が継続しなくなったという罪はあると思うが、長い目で見れば、長々と続いたシリーズの中で、一つ一つを見た時、この話が一番今も名作だと言われるゆえんがあったからだ。
 逆に言えば、この番組の存在がなければ、ここまで特撮人気シリーズとして発展はしなかったように思える。
 一度、途中で逆のイメージを植え付けるということで、路線変更しないまでのインパクトを与えたのは、大きかったと思われる。
 そんなシリーズには、いろいろな名言や、名シーンも隠されている。
 もちろん、この言葉の、
「神なき知恵は、知恵ある悪魔を作るものなり」
 という言葉、
 さらに、当時の大きな問題として大きなセンセーショナルを巻き起こしたもので、
「核抑止力」
 をテーマとした、
「冷戦における核軍縮競争:
 のドラマの中でのセリフとして、
「血を吐きながら続けるマラソン」
 と言ったあの言葉も大きな意味があっただろう。
「自国を守るために、核開発が必要なんですね?」
「ああ、そうだ」
「もし、こちらよりも向こうの方が強力な兵器を作ったら、どうするんです?」
「そうすれば、またこっちも相手よりお強力なものを作ればいいじゃないか?」