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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 パラレルワールドというものを信じる信じないかということを、それぞれの世界で、まったく別の考えになっている。
「疑似空間を作り出したこの世界は、果たしていくつ存在しているのだろう?」
 二つだと思うのは浅はかでると思うくらいに、発想は複雑化しているのであった。
 パラレルワールドの科学者あ、いや、そもそも、そこの住人の発想は、こちらとはまったく違っていた。
 特に一番の問題は、
「モラルや常識、そして、宗教の違い」
 だったのだ。
 こちらの世界での正義は、向こうでは悪。そしてこちらの悪は向こうでは正義、だから、こちらでタブーとされていることも向こうではできることになる。だから、彼らはそのことを知らずに、他の土地で行動を起こせば、そこに、トラブルが生じるのは、当たり前のことだ。
 しかし、彼らはこちらの世界のように、隣国とかかわりを一切持とうとしない。かかわりを持つ時は、戦争をするという意思をハッキリとさせた時にしか、行わない。
 そもそも、戦争にモラルなどないと考えている彼らには、そもそも、モラルという概念がないのかも知れない。だから、こちらの世界に肉体を頂戴するということも、
「別に俺たちは悪いことをしているわけではない」
 と思っているので、悪気も何もないのだ。
 やつらにしてみれば、命が存在しないサイボーグの身体をいただいて、何が悪いというわけだ。
 確かに、これがアンドロイドであれば、窃盗という程度で、話し合いの余地もあるだろう。
 彼らにも、こちらに提供できるものもあるのだから、彼らもそれを否定もしていないつもりのようだ。だが、サイボーグということになると、半分は人間である。こちらの世界では、
「誘拐殺人」
 ということになり、普通であれば、今の時代では、
「よくて、無期懲役、最悪は死刑」
 ということになるのだ。
 しかも、それを国家、いや世界レベルで行っているのだから、いわゆる国際法ということになる。これは、こちらの世界では、戦争も辞さない状態で、下手をすれば、
「絶滅戦争」
 ということになるだろう。
 だが、問題は、こちら側にもあった。
 彼らが作った疑似空間でのターゲットは、あくまでもサイボーグである。アンドロイドの開発は、世界的にも認められていたが、当時はまだ、国家に対しても機密事項だっただけに、これを問題にすることは、
「国家を欺いた罪」
 として、ほとんど昔あったとされる。
「国家反逆罪」
 に等しく、極刑が基本であった。
 だから、これを国家の問題にするわけにはいかない。幸いなことに、サイボーグを盗まれたことで、国家に気づかれるということも、国民や国家に何か問題が発生するということもなかった。だからこそ、とりあえず様子を見るしかないということだった。
 ただ、博士はその時、重大なことを忘れていた。
 アンドロイドはもちろんのこと、感情を込めると、
「サイボーグはフランケンシュタインのようにはならないだろう」
 という微妙なところで結界を踏みそうな問題を、実際に実証もせずに、ここまで来たという事実であった。
 これは、非常に証明には困難なことである。何しろ、フランケンシュタインという話が書く物語であり、比較ができないからだった。
 そのことは、博士だけではなく、機密プロジェクトに入っている数名の科学者には分かっていたことだが、誰も口にしなかった。
「口にしてはいけないことだ」
 というタブーだと思っていたのか、最初から、証明は不可能だとして、スルーするしかないと感じていたのかのどちらかなのだろうが、
「自分ですら、スルーしてしまうのだから、もうあとは結果が答えを出してくれるしかないのだ」
 ということであったが、ひょっとするt、今回の出来事が、その結果を証明してくれるのではないかと、思うようになっていたのだ。
 完全な他力本願ではあるが、今回出現した疑似空間による空間都市が、ただ、市民の間に不安と疑心暗鬼を漂わせていることは確かであるが、この膠着状態を、国家が先制攻撃などをして、崩さないということを願っていた。
 そんな状態において、空間都市の連中は、こちらのことを彼らなりに考えていた。ただ、今まで戦争以外の他国とのかかわり方をしたことがなかったので、隠密にことを運ぶしかないと思っていたが、まさか数人とはいえ、自分たちの計画を知っている人たちがいるなど、想像もしていなかったに違いない。
 元々彼らの目的は、肉体だけだったので、肉体だけを持ち去るつもりであった。
 パラレルワールドの世界では、サイボーグや、アンドロイドという概念はない。ロボットという概念があるだけで、その違いは、
「意識、感情を持っているか?」
 ということであった。
 そういう意味では、こちらの世界でも、果たしてどこまで意識、感情、ひいては、感覚というものまで持っているのかということを分かっている人がいるかどうかである。
 これは、元々存在している他の生物だってそうだ。
 人間が見ていての、愛玩動物、ペットになりそうな動物であれば、文句なしに、感情が伝わってはくるだろう。
 意識くらいまではその存在くらい分かるのが飼い主というものだろうが、
「肌が合わないと思っている動物であれば、意識も感情も分からないだろう。さらに、感覚となると分かるはずがない」
 と思っている。
 その証拠として考えられることとして、
「意識と感情、どっちも存在していなければ、感覚を理解することはできないだろう」
 という思いであった。
 だから、下等動物に関しては分かるはずもない。だから、自分たちが作るアンドロイドやサイボーグには、せめて、感情くらいは分かってあげたいと思うのは、
「生みの親としての思いだ」
 と感じていたのだった。
 だから、少なくとも博士を中心とした、極秘開発チームの面々は、程度の大小こそあれ、アンドロイドやサイボーグに対しての感情は、分かるつもりでいるのだった。
 だからこそ、他の世界からの闖入者と、その目的が分かったのであって、他の人たちには分かっていないことだった。
 闖入者側としては、完璧な侵入だったので、まさか、自分たちの存在をこっちの人間が知っているなどということが分かるはずもなかった。彼らには、
「これほど楽なことはない」
 と思っての任務だったことだろう。
 だから、存在さえ分かってしまうと、彼らが何を目的にこの世界にやってきたのかが容易に分かった。
 そのため、対策として、アンドロイド、サイボーグ、すべてに、目をつけるようにして、さらに、これは以前から標準で装備されていたことだが、
「緊急時には、彼らの人工知能を一度停止させ、こちらから遠隔で操作できるように細工をしていた」
 ということで、急遽、アンドロイドやサイボーグの操作員の臨時招集を行っていた。
 まさか、このような事態になるということまで、予測していたことではなかった。このような細工を考えていたのは、元々ロボット開発への危惧とされた、
「フランケンシュタイン状態になっても、こちらから操作できるようにという、一種の救済措置だったのだが、まさか、それがここで役に立つことになるなんて」
という思いだったのだ。