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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 ということであるのだが、悲しいかな、パラレルワールドの連中には、そこまでの解釈はなかったのだ。
 そのため、彼らは、こともあろうに、この世界と、パラレルワールドのトンネルを、空間に作ったのだ。
 それも、いわゆる、
「疑似空間」
 というもので、その空間は、こちらの人間には見えなかった。
 というか、そもそも、向こうのパラレルワールドは、未来の世界なのだ。
 こちらの世界のような感覚ではなく、科学力もハンパではない。しかし彼らも知らなかったのだが、トンネルを超えてこちらにやってくると、頭の構造は未来とは隔絶され、レベルは過去に戻ってしまう。そのことを、まったく理解していなかったのだ。
 なぜなら、パラレルワールドというのは、あくまでも、
「並行世界であり、同一次元であるからだ」
 ということなのである。
 だから、どんなに文明が発達した未来であっても、行ける過去の範囲はかぎられていて、しかも、その過去へのトンネルが作れるのは、彼らの科学力をもってしても、疑似空間でしかないのだ。
 しょうがなく、疑似空間を作って、こちらへの侵略を本格化させようとして、実際に計画に移したのだが、想像していたものと違ったのだ。
 当初の計画通りに、疑似空間にサイボーグをおびき寄せ、向こうの世界に拉致するところまではよかったのだが、本来の目的である、
「若い肉体の確保」
 は思うようにいかなかった。
 なぜなら、こちらの世界のサイボーグを連れていって、向こうのアンドロイドに移植しても、拒否反応がすごくて、使い物にならなかったり、移植できたとしても、すぐに肉体が亡んだりした。
「なぜなんだ?」
 と、彼らには、その理屈がまったく分かっていなかった。
 最初、こちらの世界でも、サイボーグの消失を問題視していたのは、博士を中心とした一部の人間だけだった。
 なぜなら、当時はまだ、サイボーグの存在は、極秘状態だったため、これを事件にしてしまうと、極秘に研究していたことがバレてしまい、ここまでの努力が水の泡だったのだ。
 だから、必死にサイボーグ失踪はひた隠しに隠していた。
 それができたのも、サイボーグの記録が、公式の世界にはなかったからだ、
 人間でいえば、
「戸籍がない」
 という状態であったことを幸いに、博士はできるだけひた隠しにしてきた。
 だが、そのうちに、
「本当に極秘にする必要があるのだろうか?」
 と考えるようになった。
 公式の世界では、アンドロイドだけがいればいいだけで、サイボーグの研究は、将来に向けてのものであり、存在自体を消してしまうことはなかったのではないかと思った。
 ただ、失踪事件が起きてしまったことで、もう公開するわけにはいかなくなった。それを公開してしまうと、博士に対しての、世界のほとんどの人が失望するからだ。
「人類の救世主」
 として崇められている存在の博士が信頼できないとすれば、
「誰を信用していけばいいんだ?」
 ということになり、世界で、人がそれぞれを信用できないという問題に直面し、アナーキー状態になるかも知れなかったのだ。
 すでに博士の存在や行動変動は、社会全体を動かせるようになっていたので、博士の身体は自分だけのものではなく、
「世界の国家が共通で守らなければならない特別扱いの人間」
 になってしまっていたのだ。
 未来におけるパラレルワールドでも、博士の存在は知っているのだが、博士の影響力がそこまでとは知らなかったようだ。これほどの科学力を有していながら、それを役立てることはできない。
「なぜかって? それは、この世界がパラレルワールドで成り立っているからさ」
 と言って、未来の人からすれば、あきれたという顔になるだろうが、実際には、その過信が、過去においては、致命的だったりする。
 だから、未来からこちらに来ている人を見つけることができないのは、科学が発展していないからではなく、それぞれの世界に、絶対的な結界が存在しているからだということになるだろう。
「パラレルワールドというのは、まるで鏡に写った、いわゆる鏡面反応のようなものではないか?」
 と言っている科学者がいて、博士はその科学者のその話を気にしていた。
 実際には、その説に共鳴したというよりも、
「その説はありえない」
 と思っている方なのだが、どうしても気になるのだ。
 その理由はいくつかあって、その一つが、
「証明できないからだ」
 ということであった。
 基本的に博士が考えていることで、他人が考えたことと共鳴した場合には、まず絶対に証明できることが大前提であった。
 しかし、この場合は大前提の時点で挫折したのだ。
 ということは、
「この説は信じられない」
 と言い切ることができるのだが、それも証明できない。
 最初は、
「なぜ、証明できないのか?」
 という、その理由を考えていたが、そのうちに分かるようになったのだ。
 その理由として、まずいえるのは、
「共鳴反応を、論理的に証明できないことからだ」
 と思ってたのだ。
 鏡面反応というのは、
「鏡に写ったものは、左右は対称に映るが、上下が対称に映るということは絶対にないのだ」
 ということであった。
 この件に関しては。さすがに博士にも証明はできなかった。
 だが、実際には、パラレルワールドである、侵略者の世界では、解決していた。未来なのだから、それもありなのだろうが、同じ世界の未来では、絶対に解決できないことになっているのだ。
 これは、この世界の運命であり、パラレルワールドにも、同じような証明できないことがあり、こっちの世界では、かなり前から証明されているような、
「まさか、今さらこんなことが証明されないなんて」
 ということになっていたのだった。
 パラレルワールドという世界において、証明できないことは、
「パラレルワールドという発想そのもの」
 だったのだ。
 ではなぜ、こちらの世界を侵略できるくらいに分かっているのに、理解できないのかというと、彼らの頭では、そもそも、
「同一次元における、もう一つの世界」
 という理論が存在していなかった。
 開けたこちらの世界を、パラレルワールドのような世界だと思っておらず、同じ世界だとは思っていない。
 なぜなら、時代を超越しているからだ。
 彼らの科学力をもってしても、同一時代のもう一つの世界に入ることはできない。だから、それがタイムマシンの変形という形で開発されたというのは、彼らにとっての、
「偶然の産物」
 でしかなかったのだ。
 それが分かっているから、我々の世界は、彼らから侵略を受けるのだ。まさか、彼らの信じていない概念でしかないパラレルワールドに侵略に来ているとは思わない。まったく別の宇宙に来ていて、
「宇宙がこれだけ、無限を証明している世界を作り上げているのだから、同じような存在の生物がいる星があっても不思議ではない」
 と考えたのだ。
 こちらの世界であれば、偶然をスルーはするが、存在自体を疑っているのだから、最初から証明などする必要のない世界で、この世界を証明するだけ無駄だとまで考えているおだった。