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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 実験には、慎重に慎重を重ねて、十分な期間を要し、国家からも実用可能な許可が出た。さっそく、企業との営業に入ったが、その間に博士の側では、独自の量産方法を編み出していて、密かに、一企業に絞って、量産開発を進めていた。まずは量産施設の確保であったが、それもスムーズに行えて、実際に量産にも入っていた。
 しかも、量産方法には複数が存在し、博士が一任した企業にだけ許可された方法が導入され、あとは、一般企業向けの、限られたアンドロイド製作だけしかできないようになっていた。
 このことは、法律でも守られていて、要するに、博士の研究は、国家として公認の事業だったのだ、
 当然、管轄は文部科学省になり、そこで行われた研究は、そのまま、国家直轄の企業に委ねられることになった。
 その企業は、国営というわけではなかったが、ほぼ国の機関と言ってもいいくらいで、博士もそこに対しての絶対的な発言力と、立場としては、派遣顧問のような立場となっていたのだ。
 そこでは、アンドロイドの全面的な開発と、サイボーグが扱えた。
 前述のように、サイボーグというものの扱いは、実にデリケートで、他の企業ではとても扱える代物でもなかった。
 しかも、半分は生身の人間なのだから、そのメンテナンスは結構ハンパではない。下手に民間に任せてしまうと、サイボーグの寿命は、ほとんどないといってもいいだろう。
 それでもサイボーグが必要なのは、他の星や、未来からの、肉体を狙ってこられた時のための対策でもあった。
 今のところ実際にはそのような事実はないが、かなりの確率で、そのようなことが起こるのではないかという懸念が、当時にはあり、実際に未来において、その予感は的中するのだが、国家も、その考えに同調し、というよりも、
「博士のいうことだから、万が一にもウソはないだろう」
 という、国家も、
「そこまで信用するのか?」
 というほど、博士に全幅の信頼を寄せていたのだ。
 博士は、科学者としても、タイムマシンなどの開発においても、SF的な発想としての協力者として、参加もしていた。
 その他の研究に関しては、博士は一切かかわることはなかった。ただでさえ、サイボーグ、アンドロイドの研究にはかなりの対応時間がとられる上に、これは博士側からの要望だったのだが、タイムマシン関係への積極的な関与だけで、本来なら、一人の人間のキャパシティをはるかに超えていたのだが、
「よくできたものだ」
 と周りは感心していた。
 実はこれこそ、国家にも極秘だったのだが、博士はすでに自分のダミーを作成することに成功していた。
 ダミーに一定期間だけ、自分の頭脳のコピーを移植して、その間は博士としての機能を発揮していたのだ。
 ただし、継続性に決定的な欠点があり、タイムマシン研究に携われる時間は、十時間までと決まっていた。まるで、電池の有効時間のようなものである。
 それでも、
「本来の研究の方が、忙しい」
 という理由で、一日七時間だけ、タイムマシン研究に尽力していた。
 他の人からバレることはなかった。それだけ完全なるコピーだったのだ。しかも、本物と、ダミーは接触してはいけないような設計になっていたので、本物を知っている人はダミーをほとんど知らず、逆も同じことであった。
 博士は、どちらの研究もおろそかにすることもなく、しっかりと、研究を重ねてきた。
 そのおかげで、
「タイムトラベルに対応できる。アンドロイドやサイボーグの開発も見えてきた」
 のだった。
 そもそも、人間ですら、タイムトラベルには、かなりの危険性を伴っていたので、特にサイボーグのようはデリケートであった。しかし、これは、サイボーグにとっても死活問題としての重要性を孕んでいた。したがって、タイムマシンの研究は、サイボーグの命運をかける意味もあって、博士が主導する意味が十分にあったのだった。
 そんなタイムマシンの研究が、いい方向に歩んでいたと思っていたのは、表の研究がうまくいっていたからだ。前述のように、タイムマシンの研究が飛躍的に発展し、タイムパラドックスの根拠を打ち消すことができたのは、パラレルワールドの存在があったからだった。
 パラレルワールドというのは、
「並行世界」
 あるいは、
「並行宇宙」
 とも言われ、つまりは、
「同じ次元に、もう一つの酷似した世界が存在し、その世界を、論理物理学の世界でも、その証明が現実化されている」
 ということから、パラレルワールドの存在が注目され始め、博士の研究において、
「パラレルワールドというのは、その存在において、過去に何か起こっても、それが未来に直接は影響しない。その辻褄を合わせるため、つまりは、タイムパラドックスの矛盾を解消することができる、唯一の存在なのだ」
 ということから、タイムマシンの開発が急に進んで、実用化されるようになったのだが、そのために、未来から過去にやってきた連中が、
「未来における問題も解決を、過去に求める」
 ということを考えたのだった。
「過去を変えたとしても、未来の我々に影響しないというパラレルワールドにいけるタイムマシンを開発すればいいのだ」
 という発想が未来に起こったのだった。
 元々、博士は、
「タイムマシンの開発では、パラレルワールドの垣根を超えることは、絶対にタブーだ」
 ということで、タイムマシンを開発したのだが、その発想は、実はパラレルワールドにいる博士にも、同じ考えがあり、そこまではうまくパラレルワールド同士で、交差した関係を持つことは禁止されていたのだが、パラレルワールド側で、肉体の衰えをいかにするかという存続問題が出た時、
「もう一つの世界に手を伸ばすことで、この世界の問題を解決しよう」
 という発想が生まれた。
 パラレルワールド側の博士には、確かにこちらの世界と同じ発想があり、
「犯してはならない、タブーである侵略行為」
 ということで、パラレルワールドを超越した干渉は、
「侵略」
 とされ、世界レベルでの犯罪となり、
「死刑だけでは済まされない大罪」
 ということであったが、それを国家ぐるみで、しかも、自分たちの今と未来を守るために行う、一種の、
「緊急避難的な発想は、今の法律の違法性の阻却の事由と同じ発想になるのではないだろうか?」
 という考えの元、世界レベルで、未来のパラレルワールドが、パラレルワールドの垣根を制御するタイムマシンの開発に成功したのだ。
 そこで、やつらは、未来から時空と、パラレルワールドの境界を越えて、この世界にやってきた。
 本来ならそれは世界レベルでの犯罪行為だったのだが、それを超極秘として、世界各国の首脳ですら知らない、国家レベルの、
「救済計画」
 が実施されていたのだ。
 その状況を把握できないでいた、もう一つの世界警察の目を盗んで。一部の過激な団体が、こちらの世界に、
「若い肉体」
 である、サイボーグを求めてやってきたのだ。
 もちろん、目的は、その肉体である。それ以外は、どうすればいいのかということを、深く考えることなく、計画を実行した。
「サイボーグは、肉体を維持するには、その精神もともにあってこその問題だ」