無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~
「なるほど、今先生が話してくれた内容は、きっと、一気に話をしないといけないことだったと思うんですよね。最初と最後がきっちりと理屈に合うような考え方は、幾通りもあったとしても、導き出す結果が一つであろうが、無限であろうが、一緒だと思う。そこに先ほどの究極の考え方としての、ゼロと無限が同じではないかということを結び付けると、世界が循環しているということを身に染みて感じるような気がする。生物地球科学的環境であったり、食物連鎖の関係も、すべては循環することから、無限が有限になるんだと思うんです。そして無限が有限になった時点で。無限もゼロに変わるのではないかと思うんですが、そう考えると、無限とゼロというのは、同一次元では存在しえないものだともいえるのではないでしょうか?」
と研究員がいうと、
「なるほど、その発想はありだと思うよ。俺が一つ今思い浮かんだのは、薄い紙をどんどん積み重ねていくと、厚みが増して、高さが形成されていくではないか。だけど、その薄さがそのまま枚数を掛けても、その暑さには決してならない。その間には空気が入ったりするからではないかと思うんだけど、それ以外にも何か我々の知らないものが介在していて、無意識にその矛盾を分かっていて、分からないような考えになるのではないかと思うんだよね」
と教授は言ったのだ。
この時の、無限というものと、ゼロというものの究極の発想が、いずれ循環に巡ってくるようになると、サイボーグやアンドロイドにも影響してくるものがあるのではないかと考えるようになった。
「元々人間から移植したサイボーグというものも、人工知能を搭載したアンドロイドというものも、どちらも、循環が不可欠なものではないかと思う。知能や遺伝子は、色褪せることのないものだと思うんだけど、でも、肉体というものは、衰えてくる。形あるものは必ず壊れるという諸行無常の言葉があるからね。その時、衰えた肉体をどうすればいいのか? ということになるのだろうが、昔の特撮を考えた人は、それを地球人の若い肉体に目を付けたという話だったりするんだよね。しかも、同じような話が別の特撮で、別の脚本家が書いた作品だったりするから興味深い。きっと、皆一度は、肉体と精神、いわゆる魂というものを分離して考えた時、いかにうまく発想するかということがカギになるのではないかと思うんだよね」
と教授は続けて話していた。
「なるほど、じゃあ、アンドロイドを作る時、肉体を決して衰えることのないものにしないといけないということでしょうかね? ただそれを考えると、まるで、無限という発想をまたほじくり返したような気がしてくるんだけど、それとは同じことなのか、違っているのか、考え方が別れるともうんですよ」
と、研究員が言った。
そこで、教授が博士になってから考えるようになったのは、前述の、
「人間の若い肉体をアンドロイドたサイボーグに移植数という技術」
であった。
その頃には、アンドロイドだけではなく、サイボーグも実用化されるようになった。その基礎を築いたのは、ほかならぬ美山博士だったのだが、この発想でも、究極の問題として、
「永遠に壊れない、滅びない肉体というものをどうすればいいか?」
という問題が残ることになった。
そこで博士は少し違った発想をすることになった。それは、
「人間の寿命を少しでも長くしていこう」
という考えであった。
実はこの着想は、博士が活躍している時には、すでにタイムマシンというものも開発されていて、
「過去に行って自分が過去に及ぼしたことが未来において、影響しない」
ということが、パラレルワールドによって証明されたのだが、さらに進んで、未来において、影響してほしいものだけ影響させるということができるようになった。
その前提となる発想は、いくら過去が変わっても、生命が生き抜くための、循環というものは、過去を変えたくらいでは変わらないということも考えられるようになったからだ。
もちろん、一定の法則に基づかなければいけないもので、それが、
「循環を壊すことのないようにすること。つまりは、循環が、最大級の何にも勝るという優先順位だということだ」
ということであった。
それらを考えることで、過去において未来のために、及ぼした発想というのが、
「人間の寿命を長くする」
ということであった。
今現在の令和三年と言われるこの時代では、数十年前から言われている深刻な問題としての、
「少子高齢化」
という問題があり、
「真剣に、子供が生まれず、寿命が延びていくと、若者でそれだけの年寄りを育てることになるのか?」
という問題に直面しているわけで、それを今必死で解決しようとしているわけだが、そnことで、元に戻ってしまうと、今度は未来にて、ロボットの肉体を形成するための、人間の肉体が不足するということになる。
あれはいつの時代だったか。、サイボーグ化ということが、真剣に語られるようになり、社会問題となった。
つまり、寿命を延ばして、サイボーグなどに移植することで、ほとんど、サイボーグ依存型になり、人間が生きられない状態を阻止しなければいけないということで、過去に戻って、その頃から徐々に当時の人間に分からないように、寿命を延ばすことを考えた。
しかし、それが当時の人間を苦しめることになるわけだが、未来の人間も切羽詰まっているのである。
だから、寿命を延ばした後の善後策として、人間のサイボーグ化というのが奨励されるようになった。
つまりサイボーグになってしまえば、半分不老不死のようなものだし、人間が増えても、それほど困ることはない。何しろサイボーグには燃料さえあれば、大丈夫だった。
その燃料も空気から摂取するものなので、無限に存在していることになる。だから、時代が進むと、空気も有料になるという時代が訪れるのだ。
サイボーグ化に成功すれば。人間の肉体も保証される。確かに以前は、薬もワクチンもなかったので、身体が老いとともに、衰えていった。それは肉体の衰えに、精神がついていかなかったからで、
「死なない」
ということになれば、肉体が衰えるということもなくなってきた。
そして希望者だけがサイボーグ化してくると、その死なないという発想が以前の究極の目標になってきたことで、この世の中がある意味、目指すものが分かってきたのだった。
そのことから、今度は、
「機械が人間を管理する」
という時代が訪れた。
人間には徐々に自由がなくなり、昔の時代に戻りつつあった。しかし、そうしなければ、人類の未来はない。究極の選択を迫られる状態が目の前まで来ていたのだった。
空間都市
サイボーグやアンドロイドの研究を続け、やっと博士の研究が、ある程度までくると、そこから先は、結構早かった。サイボー後、アンドロイドと、立て続けに第一号ができてから、実験体制が整うと、その研究は、実験段階に入り、その状況を見ながら、並行して、量産への体制を着々と進めていたのだった。
作品名:無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~ 作家名:森本晃次