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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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「でも、人間が必ず、人間に生まれ変わるといえるんでしょうか?」
 と聞かれて教授は、
「そうなんだ。何に生まれ変わるかというのは分からないとされているけど、私はかなりの確率で、人間ではないかと思うんだ。その身体や、生態を形作っているものは、遺伝子によって受け継がれる。少なくとも、人間だけは、他の動物とは違っている。それは感情があったり、理性があったり、きっと神がそう作ったといえるのではないかな?」
 教授が宗教的な考えを話すのが初めてだったので、皆教授は宗教的なことには興味がないと思っていたが、実際にはそうではなく、宗教にかぶれているといってもいいくらいだった。
「でも、ですよ。人間が人間に生まれ変わる必要はないと思うんですよ。だって、皆前世があるとしても、前世があったのかどうかという記憶すらないでしょう? それは理屈として、前世が何であったか関係なくするために、前世の意識をわざとなくしているのではないかと考えるのは、無謀でしょうか?」
と聞くので、
「じゃあ、その理由は? 理由もないのに、前世の意識をわざわざ消すというのは、何か違うと思うんだけど?」
 と教授が聞いた。
 研究員たちは、少し考えてから、
「人間は感情を持って入りじゃないですか? だから他の動物とはまったく違うから、自分たち人間だけが特別だと思う。だけど、他の種族は種族で、彼らの世界を持っていて、自分たちだけが、他の動物と違って、最高なのだと思っていたとすれば、その世界は、まるでパラレルワールドなのかも知れないですね。ひょっとすると、自分がなるはずだった相手を見ているかも知れない。動物であれ、昆虫であれ。だけど、一生のうちに、一度は、そんなパラレルワールドに出会う時があるかも知れないよね。それを感じると、死が近いと考えるのは、無謀だろうか? ドッペルゲンガーを考えるうえでの重要なカギになるかも知れない」
 と、教授は言った。
 だが、次の瞬間、教授は今までに感じたこともないような恐怖というべきか、何かの覚悟とでもいうべきか、思い詰めたような表情でいうのだった。
「アンドロイドというのは、生まれ変わるということはないのだ」
 と……。

              サイボーグとアンドロイド

 またしても、沈黙があった後、教授が口を開いた。
「君たちは、アンドロイドと、サイボーグの違いが分かるかい?」
 と言われて、いきなりだったので、漠然とは皆分かっているが、
「なぜ、教授がそんなことを聞いたのか?」
 ということを含めて、余計なことを考えてしまったことにより、言葉に詰まってしまった。
「考えすぎだ:
 といってもいいだろう。
 すると、一人が口を開いた。彼はあまり忖度する方ではなく、空気を読まないという意味で、天真爛漫と言えばいいのか、ただ、研究所には、そんな人間が一人くらいはいないと、それこそ、一つの考えに凝り固まった世界になってしまうという懸念もあったくらいである。
「アンドロイドというのは、アンドロイドは人間そっくりの機械であり、サイボーグは人体の一部を機械に変えた存在なのでこれらはまったく逆のものです」
 と模範解答を示した。
「うん、その通りだね。ということは、端的にいえば、アンドロイドは機械ということになり、サイボーグは人間だということになる。つまり我々が作ろうとしている人造人間というのは、どちらのことになるのかな?」
 と聞かれて、
「私はずっとアンドロイドだと思っていました。だから、人間が、機会を作り、元々なかった頭脳を人工知能として埋め込もうとしているのだから、ロボット工学三原則も、フレーム問題も絡んでくるはずですよね?」
 と、もう一人の研究員が言った。
「そうなんだ。ただ、そうなると肉体はどうなるんだ? 機械の肉体でなければいけない。それが、もし、元は人間であるサイボーグだとすれば、身体には、適合性というものがあり、臓器移植などでも、下手をすれば、拒否反応を起こして、うまくいかない場合が多い。同じ人間であっても、それだけ慎重に行わなければいけないのだから、サイボーグとなると、もっと大変だ。それだけ人間のようにデリケートな適合性を示さないと、魂と肉体が拒否反応を起こしてしまうと、フランケンシュタインよりも、もっと深刻な問題になりかねないのではないかな?」
 と、教授はいうのだ。
「確かにそうですね」
 というと、教授がまた、たたみかけるように、
「魂は不変なものなのだから、それに遭う肉体も不変でなければいけない。人間は生まれる時に、魂と肉体が同時に生まれてくる。だが、サイボーグは死なないんだ。だから、肉体が永遠でなければいけない。だが、肉体が衰えていくのは仕方がないことであり、人間が最初にサイボーグを作ろうとした時、このことに気づかなかった。これが、サイボーグにおける、フランケンシュタイン症候群だといえるのではないかな?」
 と教授がいうと、誰もが黙り込んでしまった。
 さらに教授は、
「昔の特撮もので、地球で人間消失という事件が起こったが、それは、自分たちの星で不老不死になれるだけの科学力は発達したが、それと並行に行うべき、肉体の衰えを解消する開発が皆無だったことで、魂は人間から離れることはなくとも、身体だけが衰えて、最後には死んでしまい、魂が彷徨ってしまうという状況になったという。それで、地球には自分たちに似た若い肉体が溢れかえっているということで、自分たちの生命保存のために、地球人の若い肉体を欲しがったという、実に身勝手な宇宙人の話が出てきた。その話をあサイボーグの開発を考えていた時に、最初に引っかかった問題だったんだ」
 ちなみに博士は、最初はサイボーグの方の研究をしていたが、今の問題が解決できずに、アンドロイドの開発に移行した。こっちはこっちで大変だが、何とか、サイボーグを考えるよりも若干近道な気がして、そちらを研究することにしたのだ。そのことを研究員は話には聞いていたが、ハッキリと実感することはできなかったのだった。
 ただ、他の人たちは、博士が、
「どうして、サイボーグから、アンドロイドへの研究に移行したんだろう? こちらの方が難しい気がするんだが」
 と言っていた。
「そうだよな。最初から土台があるものを変えるだけなのに、どうしてなんだろう?」
 と、研究員の中には、正面から真っすぐに考えることを信条としている人が一定数いるが、彼らの考えはそうであろう。
 いや、一般人の発想であっても同じなのかも知れない。それが、分かっていない人は逆に、
「一般人の一般人たるゆえんだ」
 と言われていることを理解できないのではないだろうか。
「研究員たるもの、一般人よりの優れた頭脳を持っていなければならない」
 という発想は、傲慢にさえならなければ、立派なものだ。
 傲慢に考えてしまう輩がいるから、逆に研究員は、高飛車で、自分のことを何様と考えているのか? ということになるのであろう。