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無限と矛盾~知恵ある悪魔の創造~

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 たまに、メルヘンチックな話をしてみたり、一見無駄だと思うようなことを平気でしてみたりするのだ。
 それは、博士の感性が違っているだけで、やっていることは、他の男性と変わりはないのだ。
 感性が同じでmやっていることが違うよりも、よほどまともな性格だと思うのだが、それだけに、急に豹変するところがあるのは、奥さんには許せなかった。
「他の女性なら我慢できるのかも知れないけど、私には無理だわ。でも、私の場合はあっさりと別れられたけど、他の女性だったらどうなのかしら? 少しでもずれてしまうと、厄介なことに平気でなってしまいそうで、奥さんは恐ろしいと感じた。
「やっぱり、私のような女性でないと、あの人はダメなんだわ」
 と感じたことから、
「再婚は、たぶん、できないでしょうね」
 と笑いながら言いそうだ。
 しかし、その中に嫉妬の感情は欠片もなかった。
「せいせいした」
 という感情が溢れているようだ。
 別れるということが、いいことなのか、悪いことなのか、果たしてどうなのか、別れた後も、よく分からない様子だった・。
 奥さんがよくできた人だったので、その後、教授時代に付き合った女性がいたが、彼女がまた真逆な女で、完全に教授の金が目当てだったのだ。
 あわやくば、結婚して、地位と名誉も手に入れようと画策していたかも知れないが、教授の性格に、その女はすぐについていけなくなった。
 こういう女は、今度は我慢はしない。
「こいつがダメなら、さっさと他に乗り換えた方がマシだ」
 と、合理主義に走るのだ。
 元々教授も、その女も同じ合理主義者なので、その分、お互いのことはよく分かるのだろう。
 それだけに、我慢できなくなれば、もう執着はしない。女の方とすれば、男に関しては百戦錬磨なので、
「こいつも、しょせんはこの程度の男だったんだ」
 と見切りをつけて、できるだけ、今の間に、金を引き出そうと考えていたことだろう。
 そのあたりまでも、教授は合理的に考えるから分かるのだ。だが、女のその奥の本性が分からない。ある程度まで奥に侵入しているにも関わらず、男としては、自分のいる位置が分からないという矛盾に苛まれてしまうのだ。だから、苛立ちもあり、奥さんには感じたことのない思いの正体が何なのか分からずに、苦痛になってしまうことだろう。
 だから、教授は却って、簡単に女を切り捨てることができる。自分が後悔しないことが分かっているからだ。
 もちろん、こんな女に後悔などはしないだろうが、何か後味の悪さがある。それが、この女の置き土産のような気がして、いつ爆発するか分からない爆弾を。身体の中に埋め込まれた気分であった。
 そんな憤りがあることから、
「しばらく女はいい」
 と思うようになった。
 性欲が我慢できなければ、風俗を利用すればいいのであって、何もリスクを覚悟で、恋愛をする必要もない。
 リスクというのは、この女の場合は、相手のことが手に取るように分かったからよかったが、ちょっとでも違うタイプの女で、いかにも騙そうとしているのが見え隠れしているとしても、教授であれば、それを見抜くことはできないと、自分で思っていたのであった。
「女なんて」
 と普段から思っているはずなのに、いつの間にかこちらの気持ちに入り込んできて、その気にさせる女がいることは分かっていた。
 それまでに、そんな女がいなかったわけではない。その時は結婚していたので、甘い罠に引っかからなかっただけだった。
 合理的に考えると、リスクを犯して、女房もいるのに、他の女にうつつを抜かすということが、信じられないのだ。
「女房の方が絶対にいい」
 と言い切れるわけではない。
 どちらかというと、奥さんは、性欲をそそる方ではなく。性格的に合うと思ったのと、自分の合理性を理解してくれると思ったからだったが、最初からそこが間違えていたのだった。
 彼女も普通の女性であり、ただ、気が強いところがあった。それが、合理性という意味で自分と同じではないかと思ったのが間違いだったのだ。
 いや、自分と同じだというところは間違っていなかったのかも知れない。
「同じだ」
 と思うことで、必要以上に近い距離感を感じてしまい、その間の溝の距離を勘違いしてしまったわけではなく、目の前に見えている距離を、
「それが正しいのだ」
 と信じて疑わなかったことが問題だったのだ。
 それはきっと、自分が、
「距離を見誤った」
 ということを思いたくなったことで、違う方向に錯覚してしまったからではないだろうか。
 その方向というのは、普通の人が普通に感じることであり、自分としては、あまり人と同じでは嫌だと思っていることで、無意識に認めたくないと感じていたことだったに違いない。
 その思いが、
「勘違いをしていた」
 という一言で納得させようという無謀なことになったのだろう。
 一言で納得できるはずなのないのに、そう感じたのは、
「早く忘れてしまいたい」
 という思いがあったからなのかも知れない。
 その女に騙された時は、別に奥さんでもなければ、結婚を真剣に考えているわけでもないのに、相手がやたらと近寄ってくることを、億劫だと感じながらも、甘えてこられることを容認した。
「どうせ、俺の金が目当てなんだろう?」
 と感じてもいたが、心のどこかで、
「そんな女ばかりではないんだ」
 と信じたい自分もいるのだ。
「騙されるのは、騙される方だって悪いんだ」
 と、いつも考えていた。
「合理的にさえ考えていれば、騙されることなんかない」
 という信念もあった。
 それだけに、騙されるという観念が、教授にはなかったのだ。
 どちらかというと、
「騙されてみたい」
 と思っていたほどで、
「騙されたふりをして、相手を欺瞞に満たしてやろう」
 とさえ考えていた。
 しかし、そんな時の教授は、自分が、そんな悪党のようなことができる人間だと思い込んでいた。それが一番の間違いで、自分を騙そうとするやつには、騙されたつもりで相手をすれば、相手を手玉に取ることができると思っていた。
 相手がどれほどの力量なのかということを考えずに、自分が教授としての頭があることを過信していたのだ。
 そこが、一番の悪いところだったのだろう。
「騙しているつもりで騙されているということに、まったく気づこうともしない。それが、自分の傲慢な考えからきているということを分からないからだ」
 と言えるのではないだろうか。
 だが、その時は、別に金をむしり取られることも、騙されることもなかった。
 なぜか急に女が自分から去って行ったのだ。相手が自分のことを知りすぎたことで、怖くなったのだということを知らない。
 相手の女は、百戦錬磨ではあったが、百戦のうち、何敗かはしているだろう。その相手のことは決して頭から離れることはない。
 どうやって知り合って、どうやって、仲良くなり、その間に自分がどうやって手玉に取られたのかということを、後から考えて整理でき、頭に叩き込んでいた。
 これが、この女の、
「他の女にはできないすごいところ」
 だったのだ。