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早朝と孤独

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「これ以上の開発は、意味があるのか?」
 という話になったが、開発初潮である、ロバート・オッペンハイマーがいうのには、
「もし、ここで原爆開発を頓挫させれば、ここから先はアメリカの極秘事項になってしまう。そうなると、国家が国家の都合で兵器を持つことになり、もっと危険なことになる。だから、開発した兵器を実験という名目でデモンストレーションを行い、核兵器、つまり自分たちが開発しているものが、どういうものなのかということを、マスコミを通して全世界に知らしめる必要がある」
 と言って、まわりすべてを納得させた。
 だが、実際には、科学者も、アメリカ軍も、さらには大統領も、すべてが、日本への原爆投下ということを決めたのだ。
「頑強に抵抗する日本軍を降伏させるには、原爆投下しかない」
 という名目で、
「それによって、戦争を一刻も早く集結させ、アメリカ兵の被害が、最小限とするために、原爆を使用するのだ」
 ということを言えば、原爆投下に反対する世論を納得させることができるというものであった。
 実際に、それで戦争は終わった。しかし、そのことが、その後の冷戦を引き起こすことになり、相手が新たな兵器を作り上げると、さらに、こちらも、もっとすごい兵器を……」
 という、
「核開発競争」
 というものに拍車をかけることになった。
 それにより、世界には未使用の核兵器、さらには、核実験による多大な被害などの犠牲の上に成り立っていた平和だったのだ。
 そのことを人々は、
「キューバ危機」
 によって知った。
 アメリカとソ連による、全面核戦争が目の前に迫っているのだ。
 そんな恐ろしいことが、起こったことで、やっと人類は核兵器排除を口にするようになった。
 前述の特撮番組でも、核開発競争を皮肉った作品があった。
「地球に徴兵気を持っていることを知らせるというための、ミサイル発射による、
「惑星迎撃実験」
 だったのだ。
 恒星間弾道弾は見事に目標惑星を破壊し、実験が成功する。その時、実験を見守っていた防衛軍の人たちは、歓喜の声を挙げる。
「予想以上の成果だ。これで、地球は安全だ。地球を侵略しようとする連中に対して、我々は、ミサイルのボタンに手をかけて、待っていればいいんだ」
 というと、他の隊員が、
「地球に徴兵気があることを知らしめるのよ。そうすれば攻めてこなくなる」
 という。
「超兵器は持っているだけで、侵略を防げるんだ。これで地球は安全だ」
 と言って喜んでいる中、一人だけ浮かない顔をしていた。
 この物語の主人公であった。
 彼は今の会話の隊員に問う。
「地球が安全なら、何をしてもいいというんですか?」
 と言われて、その人は黙り込んでしまう。
 すると、主人公は意を決したかのように、
「ようし」
 と言って、駈け出そうとするのを、隊員が止めた。
「どうしたっていうんだ?」
 と聞かれて、
「忘れるな。地球は狙われてるだ」
 と聞かれ、
「それで超兵器が必要なんですね?」
「当たり前じゃないか」
「もし、相手がこちらよりも強力な兵器を作ったら、どうするんです?」
「その時は、こっちもさらに強力な兵器を開発するさ」
 と言われて、主人公の顔はさらに暗くなった。
 そして最後のとどめに、
「それは、、血を吐きながら続けるマラソンですよ」
 というのだった。
 これこそ、当時の世界情勢における、東西冷戦の象徴ともいえる、
「核開発様相」
 そして、
「格の抑止力」
 ではないか。
 持っているだけで平和が守れるというのは、核兵器の傘の下に存在する幻影でしかない。それを、このドラマは、
「血を吐きながら続けるマラソン」
 という表現をしたのだ。
 ちょうど、その時、主人公は、檻の中にある丸い輪の中を、その空間においてだけ走り続けることになる、ハツカネズミを見ながら、答えていたのが、印象的であった。
 物語は、粉砕した星から、兵器の放射能を浴び、巨大な怪獣に突然変異してしまった破壊された生物が復讐のために、地球にやってきた。
 主人公は気の毒に思いながら、正義のヒーローに変身し、地球のために、復讐鬼と化した怪獣を倒すことに成功する。実に複雑な思いだろう。
 さすがに、この事件で防衛軍も目が覚めたのか、
「兵器開発競争を凍結する」
 ということになった。
 確かにこの物語と、世界情勢だけを見ていれば、開発を凍結することで一段落なのだが、それだけでいいのだろうか?
 確かに、地球が開発をしなければいいというのは正解だが、実際に地球は狙われていて、他の星に地球にも勝るか学力があり、地球侵略を目論んでいるとすれば、なんら解決になっていないではないか。
 理不尽にも復讐鬼と化した怪獣を図らずも葬ってしまった。侵略でも何でもないのに。
 地球のエゴと傲慢さ、地球至上主義が生んだ悲劇なのだ。
 しかし、他の星の侵略者には関係ない。本来であれば、地球だけが開発をやめても、何ら解決に至ったわけではなく、核開発競争の愚かさを唱えただけだ。
 だから、本来なら、他の星とも協議をし、軍縮に賛成されるだけのことをしないと、目的の平和は訪れない。本当の意味での平和ではないのだ。そういう意味では片手落ちな話ともいえる。
 ただ、この話が優秀で、代表作とも言われているのは、見事に社会風刺ができていて、皆考えているにはいるが、口に出さなかったことであるに違いない・
 そんな素晴らしい特撮番組の中に、人間の覚醒、いや、秘めたる感情を呼び起こしながら、かつての英国が、清国に行った戦争を模しているかのような内容の話もあった。
 その話は、一つのある街において、ある時期から奇怪な事件が起こるというものだった。まず、防衛軍隊員のおじさんにあたるパイロットの飛行機が、突然の事故を起こしたということだった、
 人的事故であったことは間違いなく、パイロットが引き起こした事故ということになった。
 しかし、それを信じられない人も結構いた。あの冷静沈着な人が……。ということである。
 そんな調査の最中に、一人の男が発狂したかのように、ライフルを撃ちまくり、あたりを恐怖のどん族に突き落とした。ライフル魔は急に失神し、そのまま昏睡状態に陥り、数時間死んだように眠った後、何事もなかったかのように目座絵、自分の暴挙を警察から聞かされても、まったく記憶にないということであった。
 おりしも、防衛軍の作戦質の中で、二人の隊員が、次々に発狂し、暴れまくったうえ、昏睡したのである。
「ライフル魔と同じではないか」
 ということで、原因を探ってみると、どうやら、タバコに火をつけて、吸った瞬間に、暴れ出したのだった。
 ちなみに、当時は今の時代と違い、会社の事務所であっても、会議室などでも、普通にタバコが吸えた時代だったのだ。
 そして、そのタバコが防衛軍の科学班で調べられると、
「タバコの中に、宇宙けしの実が入っていて、それは摂取すると、まわりが皆敵に見えてくるという凶暴性のあるものだ」
 ということであった。
「けしの実」
 ということは、麻薬である。麻薬の効果で、まわりのものが皆敵であると思わせることで恐怖を煽り、お互いが殺しあうかのように仕向けたというのだ。
作品名:早朝と孤独 作家名:森本晃次