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奴隷世界の神々

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「国土が大きい方が、安全保障の意味でもいい」
 ということで、合併することになった。
 最初は対等合併だったのだが、実際には、それぞれの国では、国内に複雑な問題を抱えていた。
 政治的な問題もあり、合併で国を新しくしていく状態であることに乗じて、軍事政権を打ち立てようと、隣国の大国と結んで、軍事クーデターに走ったのだ。
 だが、クーデターを起こされた方の区には、反対の大国に援助を頼んだが、
「内政干渉になることは、できない」
 という理由で、援軍を断った。
 そうなると、一気に国家は統一されて、独立国家としての体裁は取っているが、援軍を出した方の大国の、属国となってしまったのだ。
「しまった」
 ともう一方の大国が思ったとしても、後の祭りである。
 何とか、講和条約をむずび、不可侵条約を締結するところまで行ったのだが、その条件として、
「我が国への内政干渉は許さない」
 というもので、この条件は、世界的にも承認された。
 だから、この国では大々的な政治改革が行われ、それまで廃止されていた奴隷制度も復活した。
 ただ、
「奴隷はあくまでも、自国民の中でのことであり、他の国や地域から、奴隷として国に入れることは許さない」
 という法律が形成されたのだった。
 奴隷は、当然、占領された方の民族から出されることになった。
 彼らが元々持っていた土地は、一度国に没収され、天領地となった。天領地とは、国家が管理する土地であり、その土地は、国家のために尽くした人のための賞品として与えられることになったのだ。
 その土地に、元々の住民が暮らしているのだから、彼らは奴隷として、土地主になった人に尽くさなければいけない。
 これは封建制度における、
「小作人」
 よりも、立場の弱いものであり、本来の意味の奴隷とまではいかない、一種の中途半端な立場の人たちだったのだ。
 純粋な古代から続いてきた奴隷とは違うということを、国連には報告し、これが、
「我が国の体制の一つ」
 として、承認を得ようとしたが、各国が相談し、それなりの条件をつけて、
「条件付きの承認」
 を与えることになった。
 奴隷制度が復活した唯一の国となった。
 その時の一つの条件として、
「奴隷の神を創造し、それを、奴隷たちの信仰にさせること」
 だったのだ。
 内政干渉ギリギリと言えるところであったが、さすがにそこまでしないと、
「昔の悪しき時代に戻ろうとする」
 という大きな社会秩序に逆行するようなことは認められなかったからである。
 さすがに他の国から、
「我が国も、奴隷制度の復活を考えたい」
 というところはなかった。
 しかし、もし、この国が奴隷制度の運営に成功すれば、自分の国も、試すに値すると考えているところもあったに違いない。
「今は様子を見る時だ」
 という考えであった。
 この国の奴隷というのは、基本的に、その土地を預かって、土地を運営する土地所有者の配下に入るということだ。
 制限というと、前述のような、婚姻の自由や、職業選択の自由はない。
 その土地に縛られるというわけではなく、奴隷同士の、売買はできるのだった。
 一種のトレードのようなもので、
「物々交換」
 のように、奴隷同士を交換したり、金や物で、奴隷を買うこともできた。
 奴隷は、その土地での産物をお金になるように作り上げるという義務が存在するので、そのための教育は、土地主が受けさせる義務があるのだった。
 ここまでは厳しい法律になっているが、奴隷と言っても、差別的なことはしてはいけないようになっている。
 仕事をすれば、それなりに給料も支払われる。ただし、通貨や紙幣も、奴隷用と、一般用では別のものになっている。
 なぜなら、憲法も、一般法も違うからだ。
 なぜ別れているのかというと、それは、
「奴隷には奴隷の人権がある」
 ということからであった。
 かつての奴隷制度では、奴隷には人権はなく。支配階級のしたい放題であったが、それでは秩序が保たれないし、そもそも、国連が容認もしてくれない。
 そういう意味で、
「法律を分けること」
 というのは、国連からの条件であり、奴隷たちの法律の草案は、国連で決められたものだった。
 そういう意味では、一つの国家の中に、奴隷という一つの国家があり、それは、その国土を収める支配国との結びつきよりも、国連からの結びつきの方が大きい。
 円の就寝が奴隷たちであるとすれば、この国は、ドーナツ化していて、そのドーナツと結びつきが一番深いのは、国連だということになるのだ。
 そもそも、この国を形成した元々の国は、他民族の存在を許さないという考えの人が大きかった。
 国は、鎖国していた。
 他の国との交渉であったり、問題が発生した場合は、その仲裁に国連が出ていくということになっていた。
 だから、この国の中心部にできた奴隷の国家は、
「国連あずかり」
 になるというのが、当然の考え方であろう。
 だから、同じ国土の中の同じ国であっても、別々の国家が存在する。まるで、イタリア国内にある、バチカン市国のようなものではないか。
 ただし、奴隷国家には、政府は存在せず、立法、行政、司法などは存在しないことになるのだ。
 そもそも、三権分立でなくとも、立法、司法、行政は存在する。それがすべて一人に委ねることになると、独裁国家ということになるのだ。
 この奴隷国家の司法、立法、行政は、すべて国連に任されている。
 国連では、この奴隷国家のための立法、行政、司法は、それぞれの機関を国連内に作り、国連加盟国の中の、先進国が、数年で持ち回りで管轄しようということになっていた。
 もちろん、奴隷国家と国を一つにしている国は、その中に入ることはできないというのが前提であった。
 そんな中で、ある国が行政を受け持っていた時のことである。
「奴隷たちの間で、奴隷の神なるものを信仰しているようなんだが、誰もそのことに気づいていなかったのかな?」
 と会議の中で聞いたことがあった。
 すると、他の国の代表たちは顔を見合わせるようにして、
「それは気づいていましたが、わが国としては、それを問題にすることは、内政干渉になるという思いと、彼らの信じているものを、まわりが余計なことを言って、せっかくおとなしくしている連中を怒らせるようなことはしたくなかった」
 と、代表して、一つの国の委員がいうのだった。
「他の皆さんも、同じかな? 分かってはいたが、言ってはいけないという認識だったと思っていいのでしょうか?」
 というと、皆、頭を下げて、賛同したのだった。
 少し、そのことについて議論の時間がもたれたが、議長が、
「彼らのモチベーションという意味で、彼らは宗教として活動できないかということを言っていなかったかな?」
 と聞くと、
作品名:奴隷世界の神々 作家名:森本晃次