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奴隷世界の神々

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 付き合って好きになるのか、好きになったから付き合いのか、どっちにしても、先に結婚という言葉が控えているから、付き合うことも、相手を好きになることも、嬉しくワクワクするものなのだ。
 それなのに、その感情が、
「世の中の現実:
 に阻まれてしまう。
「結婚したって、いずれは別れることになるかも知れない。さらに、子供ができれば、子供を養うために、仕事をして、子供を預けるところもなく、共稼ぎでなければやっていけない世の中で、どうやって、生活をしていけばいいというのか?
 そんな状況にした、国家のために、なぜはたらいてやらないといけないのか? そんなことを考えていると、結婚するということ自体が、無謀なことに感じられる。
 そうなると、女性を好きななってしまうという感情が恨めしく感じられる。好きになりさえしなければ、こんなに悶々とすることもないのに、これが人間の本性だとするならば、こんな皮肉なことはない。
 そう思ってしまうと、
「性欲」
 などという無駄なものを与えた神に恨みを持つようになるだろう。
 日本人はそんなことを考えていたが、この国の奴隷たちは、少なくとも、子供をたくさん作らないと、自分たちの仕事がこなせないのだ。
 とにかく、奴隷は人海戦術しかないのだ。
「労力を増やすには、労棒人口を増やすしかない」
 という単純な考えがあればいいだけだった。
 日本人のように、余計なことを考えないで言い分だけ、彼らは、性欲を当然のこととして受け入れ、それが、支配国との、お互いのwinwinになるということであろう。
 だから、そのために、
「性欲の神」
 は存在するのだ。
「人間をたくさん増やす」
 この考えは、少し怖い気がする。そのことは、団長も少し気にかけていた。一番気になっているのは、やはり日本という国の、
「大日本帝国時代」
 であったのだ。
 当時の日本は、元々の、封建制度の時代である徳川幕府から二百年続いた、
「鎖国制度」
 というものがあり、その末期に、アメリカからの黒船による、
「砲艦外交」
 によって、強引に開国させられてしまった。
 最初こそ、
「尊王攘夷」
 という思想で、外国のうち払いを考えていたが、それが適わないとなると、今度は国の体制を変えるしかないということで、倒幕に動いた。
 そして、目指すは、
「天皇中心の中央集権国家」
 であった。
 そしてその後、憲法や議会の制定によって、できあがった、
「立憲君主国」
 となったのだった。
 諸外国に対抗するために、
「富国強兵」
「殖産興業」
 をスローガンに打ち立て、まずは、軍備強化と、産業省令により、
「強い国」
 にして、安全保障の観点から、日清、日露の戦争を経て、日本は、大国へと進んでいった。
 だが、中国大陸における進出の遅れを取り戻すために、行った強引な中国政策のために、日本は孤立し、最後には、あの大東亜専横に突入してしまった。
 その頃には、大国である、米、英、蘭と戦わなくてはいけなくなり、結局、泥沼の戦争に突き進んでしまったのだ。
 世は世界大戦の真っ最中、日本軍も日本政府も、
「初戦で、インパクトのある勝利を重ね、半年間をめどに、戦争を有利に進め、ちょうどいいタイミングを見計らって、英、米、蘭に対して、和平交渉に入る」
 というのが、最初の青写真だったはずだ。
 しかし、実際には、戦術的な勝利が続き、あまりにも計画のいい方にばかり結果が出てしまったことで、日本軍は当初の目的を忘れた。
 中には、
「ちょうど今がいいタイミングなので、外交的な和平交渉に入るべき」
 という人もいたであろうが、ほとんどの政府、軍部首脳は、
「何を言っとるか。ここまで来て戦争をやめるなど、諸外国に舐められる」
 という意見が多く、
「勝利に奢ってしまって、相手を深追いしてしまった形になった」
 のであった。
 そうこうしているうちに、
「やめ時」
 を見失ってしまい、ここから先は、敗北か民族滅亡しかないという道に踏み込んでしまった。
 元々は、戦争に勝ち続けたことによる民衆の歓喜と、それを扇動するマスゴミによる報道によって、政府も後押しされる形になって、戦争終結を考えられなくなってしまったということも背後にはあった。
 ただ、
「戦争に勝っているのに、生活は一向に楽にならないどころか、生活必需品まで配給になってしまった」
 ということに、国民は次第に疑問をいだくようにはなっただろう。
 しかし、その時には、すでに戦時体制を脅かすことは、非国民と言われ、政府に従わないものは、特高警察に逮捕、拷問を受けるという、恐怖政治になっていったのだ。
 そんな戦時中の思想として、
「日本人は、陛下の臣民であり、陛下のために、命を捧げる覚悟が必要だ」
 という教育を受けてきていた。
 戦場で、たくさんの兵士が亡くなっていく中で、
「産めや、育てよ」
 とばかりに、男の子が生まれれば、その子は、
「国家のために、立派に戦う兵士となる」
 ということを、生まれ持って約束されたようなものだった。
「兵はいくらいても、足りないということはない」
 ということなのであろうか。
 制海権のない太平洋上を、いくら日本軍が、増軍のために輸送船団を送り込もうとしても、護衛船団もまともにない状態で、ただ攻撃されるだけで、せっかく育てた兵隊を、戦わずして、海の藻屑としてしまうのが、当時の日本だったのだ。
 兵役招集も、
「赤紙」
 と言われる紙が一通送られてくることで、強制的に、軍に入れられる。
 まともな訓練も受けずに、最前線に送られていく兵士は、どこまでを、
「捨て駒だ」
 と思って、政府や軍首脳は考えていたのだろう?
 ここまで戦争が泥沼化してしまって、戦争で亡くなる人が増えると、上層部も、次第に人間としての感覚がマヒしてくるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「生まれてきた命は、国家のため、天皇のためと言って、無駄な消費に使われたと考えると、やはり、戦争というものの虚しさを感じずにはいられない」
 ということになるのであろう。
 日露戦争から後の、日本の中国政策、その行き過ぎから、諸外国や、中国との間に起こった様々な事件が、日本を、世界大戦に巻き込むことに繋がっていったのだ。
 中国政策の行き詰まりである、
「満蒙問題」
 の解決を、武力占領という形で成し遂げようとして起こった、
「満州事変」
 という、クーデター。
 そして、そこからの満州帝国建国後の、世界経済の大恐慌などが相まって、国際連盟だったに始まり、孤立を深めたことで、ドイツ、イタリアと組む、枢軸国の一員になってしまったことは、致命的だったのかも知れない。
 その瞬間、日本は、
「孤立から、世界を敵に回してしまう」
 という暴挙に出てしまったのだ。
 それを考えると、日本という国は、すでにそのあたりから、着地点を見いだせない国なってしまったのか、日露戦争で、あれだけの綱渡り的な戦争を、相当な犠牲を出しながらでも、勝利という形で収められたのは、すべての戦術、戦略において、曲がりなりにも成功したからに他ならない。戦闘だけではなく、
「外交におけるホームラン」
 とでもいえる、
作品名:奴隷世界の神々 作家名:森本晃次